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2017年08月14日

2016-2017

冠動脈石灰化結節の解剖学的、臨床的特徴について

今回、レポート番外編ということで、冠動脈石灰化結節についての論文を執筆された李 哲民先生(東京医科歯科大学)にお話を伺う機会をいただきました。李先生は同じラボで働く先輩ですが、読影に自信がない画像について相談をすると、いつも膨大な知識に裏づけられた的確なコメントを下さり、毎回勉強させていただいております。先生のお仕事の邪魔をしてはいけないと思いつつ、李先生のコメントが聞きたくてつい質問を重ねてしまいます。今回の論文では冠動脈石灰化結節の特徴についてまとめられており、これまで石灰化結節に関する論文は非常に少なかったことから、大変貴重な報告であるように思います。石灰化結節という少々マニアックな?題材を論文テーマとして選ばれた経緯から、実臨床におけるマネジメントまで、ざっくばらんにお話をうかがうことができましたので、ぜひお楽しみください。

Lee T et al. Prevalence, Predictors, and Clinical Presentation of a Calcified Nodule as Assessed by Optical Coherence Tomography. JACC Cadiovasc Img 2017 Aug;10(8):883-891.

 

Q) はじめに、簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか。

A) 2001年に東京医科歯科大学を卒業し、本学附属病院、日立総合病院で初期研修後、榊原記念病院を経て、2007年より土浦協同病院で虚血性心疾患、Coronary interventionを専門として臨床現場で働いておりました。角田恒和部長をはじめとした皆さまのご尽力により、2015年7月よりCardiovascular Research Foundation (CRF) での留学の機会を得ることができました。

IMG_2958

 

Q) 冠動脈石灰化結節(calcified nodule, CN)を論文のテーマとして選択されたきっかけは、どういったことだったのでしょうか?

A) 元々ACSのplaque morphologyに興味があり、それらを解析しておりました。その過程で少ない頻度ながらも比較的分かり易い形態を示す、「テレビ東京のような」CNの存在に関心を持ちました。臨床の感覚からは、透析患者で石灰化が高度な病変で多いなという印象はあったのですが、CNに焦点を絞って包括的に検討した論文がOCTでは殆ど無いことが分かり、まとめてみようという気持ちになりました。

 

Q) 今回、CNに関して889例ものOCT解析をご自身で行われたということで、大変な仕事だったと思うのですが、特に苦労された点をお聞かせください。

A) OCTで1 mm毎に全例石灰化の角度を測定したのもそうですが、冠動脈造影画像の解析、特に”hinge motion”を見るために収縮期と拡張期の角度の測定するのが大変でした。

 

Q) calcified noduleとnodular calcificationをいつも混同してしまうのですが、両者の使い分けについて、教えてください。

A) 基本的には同じなのですが、病理学の分野では両者の定義は異なります。Nodular calcificationは粒状の石灰化のもので血栓を伴わないものとされ、そこに冠動脈内血栓やフィブリンが見られたものをCalcified noduleと病理では定義します(Sakakura K, et al. Heart Lung Circ 2013;22:399-41)。OCTでの” Calcified nodule”の定義は、“内腔に突出したカルシウムで、多くはsharp angleで突出するもの”とされており、Nodular calcificationについては触れられておりません(Tearney GJ, et al. J Am Coll Cardiol. 2012;59(12):1058-72.)。

 

Q) CNはACSの原因ではあるものの、頻度はそれほど多くないという印象がありました。重度石灰化を伴うACS病変の3分の1がCNを伴っていたという今回の先生の研究結果は、そのイメージを覆すようなデータだと思うのですが、この点についてぜひコメントをお願いいたします。

A) 補足説明をしますと、最大石灰化角度180°以上を高度石灰化病変と定義し、ACS全体の約13%と少数を占めるのみでした。しかしその群ではplaque ruptureとCNが約30%とほぼ同じ頻度でした。高度石灰化病変はそこに至るまでplaque ruptureやerosionによるACSイベントを運よく回避し、Necrotic coreを含む脂質プラークが少ないため、最終的にCNの頻度が相対的に上昇したのだと思っています。逆に言うと高度石灰化を伴うACS病変では、plaque ruptureやerosionによるACSを前提とした治療方針が必ずしも効果的ではないかもしれません。

 

Q) 889例のうち、ACS症例でのCNは17/428例、非ACS症例でのCNは20/461例と、ACS症例と非ACS症例で発症頻度に大きな差はありませんでした。また解剖学的な発症の条件もほぼ同様だったとのことでした。CNというと、ACSの原因というイメージが強いのですが、安定狭心症にも同程度CN症例が存在することにはどんな印象をお持ちですか。将来ACS発症のリスクとなりうるのでしょうか。またACS症例のCNは責任病変に関連することが多かったのでしょうか。

A) 今回責任病変のみの観察ですが、基本的に安定狭心症でもACSでもCNの発生機序は同じで、内腔の閉塞もしくは亜完全閉塞に至るかどうかでACSか否かが決まると思っています。本文Table 4で示しましたがACS CN: 17例とNon-ACS CN: 20例を比べますと、ACS-CNで内腔面積が狭いこと、および血栓の頻度が多かったこと以外は両者で差はありませんでした。つまり元々内腔が狭く血栓ができて症状を伴う閉塞もしくはそれに近い状態になればACSとなり、そこを回避すれば後に安定狭心症で来院するということかと思います。これはplaque ruptureやerosionでも同じで、「同点9回裏満塁の場面では、ホームランでも安打でも押し出し四球でもサヨナラ」という認識でいます。
将来のACS発症リスクとなりうるかについては、未治療CNの経時的なfollowのデータが必要なので現時点ではなんともいえません。ただCNを有する患者は高度石灰化を背景に持つことが殆どなので、患者さん単位でみるとリスク因子となりうるかもしれません。
今回の研究は全て責任病変のみを対象としましたが、一部のACS症例で非責任病変でもCNが見られることから、CNそれだけでACSが起きるわけではないと思います。

 

Q) CNをIVUSでなくOCTで観察することの意義は、どのようなところにありますでしょうか。またCNを血管内イメージングで観察する際のポイントを教えてください。
A) IVUSは石灰化の有無については大変優れていますが、CNに関してはOCTと比べて過大評価する可能性があります。今回我々のCNの定義において、”内腔に突出するnodular calcification” の所見が最も重要なのですが、IVUSでは”nodular calcification” の診断能が不十分のため、“突出した石灰化病変”のみでCNと診断する可能性があります。

Picture3
観察に際しては、①石灰化のシート(calcium sheet)に連続し、②突出する病変で、③小さい粒状のnodular calcificationが表面に見られることがポイントです。

Picture4

 

Q) CNは内腔に突出しているため、ステント留置の際には十分なlesion modificationが行われないとステント拡張不全のリスクがありそうです。今回の研究結果でも、CNの関連因子としてcalcified plaqueの角度(arc)が認められており、CNを認める症例では全体的に石灰化が強い傾向にあると思うのですが、CN症例に対しては、rotational atherectomyなどの積極的な適応がありますでしょうか。

A) 大変興味深いところだと自分も認識しております。しかしながら、Rotational atherectomy施行例でpre-及びpost-PCIのOCTを施行できた症例が数例のみのため、Debulkingの積極的な適応についてこの研究からはまだ言えないと思います。
ただ面白いことに、post-PCI OCTのデータがある685例のpost-PCIの最小ステント断面積を比べたところ、CNとnon-CN群で両者とも6.5-7.0 mm2で差はありませんでした。これは推測ですが、CN病変がCalcium sheetが破砕されて形成されるという仮説が正しいとすると、既にCalciumが割れているのでステント拡張が悪くならないのかもしれません。

 

Q) 冠動脈造影や血管内イメージングを行った際に偶然CNが見つかった場合でも、内腔径が十分に保たれていれば、様子観察をするという方針でよいのでしょうか。またその後のフォローアップはどのように行えばよいでしょうか。

A) 仰るとおりで経過観察が妥当だと思います。石灰化病変のフォローアップについてはまだ分からない点が多く、そもそも石灰化病変に特化した一次もしくは二次予防というものが無いのが現状だと思います。それらをクリアにするためには、未治療のCN病変を含めた石灰化病変の転帰について検討が必要だと思いますし、今回の我々の研究のlimitationだと思います。個人的には脂質性プラークと比べてスタチンはあまり効果が無いのかなあという印象です。

 

李先生、ありがとうございました。

 

論文要旨

〔背景〕
冠動脈石灰化結節(Calcified nodule, CN)は頻度は高くないがACSの原因となりうる。OCTによって観察されるCNに関して、解剖学的、臨床的な特徴を明らかにすることが、本研究の目的である。
〔方法、結果〕
ACSおよび非ACS症例を含む新規責任病変889例(ACS 48%)を対象に、PCI施行前にOCTによる観察をおこなった。CNは結節性石灰化の噴出性集積と定義された。冠動脈造影の定量評価により、拡張期および収縮期の病変角度の変化(Δangle)が計測された。CNは全体の4.2%に認められ、右冠動脈入口部および中央部に頻繁に認められた。多変量解析において、血液透析、病変のΔAngle、OCTにおける最大石灰化角度がCNの存在と関連していた。ACS病変と非ACS病変を比較した場合、ACS病変においてはより最小内腔血管断面積(MSA)が小さく、血栓を伴っているものが多かった。石灰化角度180度以上の病変においては、ACS責任病変の30%にCNを認め、CNの存在は他の不安定プラークの形態とは独立してACSとの関連を認めた。
〔結論〕
CNの存在は重度石灰化と冠動脈のhinge movementと関連していた。ACS責任病変で重度石灰化を伴う場合、そのプラーク形態としておよそ3分の1にCNが認められた。