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from Overseas

川瀬治哉(Bad Nauheim, Germany)

川瀬治哉(Bad Nauheim, Germany)

Max Planck Institute of Heart and Lung Research

2019年03月30日

【テーマ】2018-2019

あっという間の一年、変化の大きな一年

あっという間に一年が過ぎました。レポートを書くのもこれで最後になる、と思うととても寂しいですが、この一年を振り返ってみたいと思います。

 

<一年間を終えて>

私は、他の選択肢との中で大いに迷い悩み、最終的にはより未知なるものに引き寄せられるように留学を決断しました。渡独から間もなく一年という今、この決断をして本当によかったと振り返っています。もちろん、収入の減少や、日進月歩の臨床現場から離れることに伴う犠牲はいくらか払っています。しかしながら、今までと全く異なる環境に身を置き、新しいことにチャレンジする過程で得られるものは、それらの犠牲に比べ大きく豊かに思え、見える世界は格段に広がっていると実感しています。

 

<留学前後での考え方の変化>

留学前の自分を思い出すと、今では自分の考え方に様々な変化が起きていることを実感します。そのうちいくつかを取り上げてみます。

留学する際には、誰しもが多少なりとも、自分はやっていけるだろうか、と不安を抱くものと思います。私もこちらに来た当初はわからないことばかりで、周りの同僚が全員すごい人に見えたりして、不安感や劣等感をよく感じていました。それでもしばらく経てば、自分にしかできないことがあるという手応えを掴めたり、そもそもわからないことが多い分だけ新たに知ることが増える、とポジティブに捉えられるようになりました。この過程では、同僚と仲良くなったり、上司に信頼してもらえるようになったことも大きいと思います。留学の決断に至る前に抱いていたような、失敗を恐れる気持ちは薄れ、今はより大胆な思考にシフトしているような気がします。これが第一点目です。

第二に、日本を離れ様々な国の人たちと触れ合うことで、客観的でグローバルな考え方が自分の中に育まれていると実感しています。これまで日本にいた時にはあまり考えもしなかったようなこと、例えば日本の文化・言語の独自性、日本の医療・研究の良さや問題点を見つめ直したり、研究分野で世界をリードし続ける米国や急成長を遂げている中国のこと、また活発化する国際ネットワークの中での日本の位置付け、それから移民政策や英語教育のあり方などについて、調べ物をしてはぐるぐると日々思考を巡らせています。

第三に、日本でも物議を醸している働き方に関して。ドイツでは年に6週間もの休暇を取ることが当然とされていて、日本人的感覚からすればそんなに休むのには罪悪感すら覚えてしまうのですが、私もだんだんといい感じにマインドセットされてきています。同様に父親の育児参加もしやすく、例えば幼稚園では父親が送り迎えをしている姿をよく見かけます。趣味を楽しむ時間や家族と過ごす時間は留学前より増えていて、これは豊かなことだと感じています。帰国後に逆向きのマインドセットができるのかどうか、というのは私自身甚だ疑問です。

最後に少し、英語について。留学前には、きっと海外に住めば自然と英語力が向上するだろう、と淡い期待を抱いていましたが、決してそんな容易いものではありませんでした。やはり海外にいても、一定時間を語学の勉強に割く必要があると感じています。

 

<今後の留学生活に向けて>

今振り返ればこの一年は、環境に慣れること、仕事をしやすくするためにボスや同僚の信頼を得ること、実験手法を確立すること、など基盤づくりが主体でした。次の一年は、担当しているプロジェクトをどんどん進めていきたいと思います。その他にも、新たなグラント獲得や、語学力(英語・ドイツ語)の向上にも取り組みます。

 

<留学を目指している、検討している後輩の先生方へ>

もとから「留学したい」という強い希望を持っていて、周囲のサポートも得られている先生は、実現に向けて真っ直ぐに突き進めば良いと思います。準備の段階からたくさんの困難が訪れますが、強い動機と周囲の協力があればきっと乗り越えられると思います。個人的には、この動機はどんなものでも良いと思っています。もちろん、何かを突き詰めたいという明確なビジョンや留学後のキャリア戦略が伴っていれば一番良いのでしょうが、そうでなくても例えば、海外で一度は暮らしてみたい、というものでも良いと思っています。

一方で中には、留学という選択肢が視野にありながらも、どうしようか迷っている先生も多くいらっしゃると思います。金銭的な不安が大きい、家族が前向きでない、国内でのキャリア形成と比しメリットを見出しにくい、など留学を躊躇う色々な要素があると思います。これらの事情や考え方は本当にそれぞれである上に十分にケアを払うべきことですので、私は皆に同じようには留学を勧めることはできないと思っています。その中でも留学を後押しする材料としては、留学で得られるものは何かしら確実にあること、医師は基本的にはいつでも帰国して職に就けるというセーフティネットを持っていること、また逆に留学を選ばない側をサポートする意見としては、留学以外にもチャレンジの機会はたくさんあること、をここでは述べたいと思います。私がそうしたように、先輩の先生方を含め、いろんな人と話をして自分の考えを深めると良いと思います。

 

<終わりに>

最後になりましたが、SUNRISE研究会の幹事の先生方およびサポーター企業の方々には、貴重な機会と温かいご支援をいただいたいこと、心より感謝申し上げます。レポートを書くことを通して、私自身、置かれている状況をよりクリアに見つめることができ、また新たな学びを得ることもできたと思っています。同時期にレポーターを務めていた先生方の記事を読むのも毎回楽しかったです。皆様、一年間ありがとうございました。

 

写真3

ラボメンバーの記念撮影 (後列中央が筆者、右端がOffermanns教授)