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from Overseas

植島大輔(Padova, Italy)

植島大輔(Padova, Italy)

Padova University Hospital, Padova, Italy

2016年12月20日

【テーマ】2016-2017

デバイス開発が劇的に医療を変えている

本稿とは関係ないのだけれど、昨日ようやく滞在許可書が下りた。Questuraという移民警察署へ行き、たくさんの外国人(私も外国人だけど)でごった返す中、無事に受け取ることが出来た。Questuraはネット上でしらべても本当に評判が悪く、はじめに申請したときにはただただ辛かったが、受け取る場所を片言ながらイタリア語で質問、解釈できるぐらいにはなったことと日本人だからか警察官もとても親切で、Sei Giapponese! Perchè sei venuto a Padova?(日本人なんだ!なんでパドヴァに来たの?) Per studiare medico. (医学を勉強しにね)  Labori nel ospidare? (病院で働いてるの?) Beh no, sono il ricercatore. (うーん、ちょっと違って研究者なんだ) Oh, ricercatore!  e bello!(へ~、研究者なんだ! いいね!)ぐらいの会話をはさみながら(最大4語程度)、むしろ楽しい一時だった。たったこれだけのイタリア語で喜んでくれるのでありがたい。

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さて、テーマに戻ることにする。取り上げるテーマはTAVR(経カテーテル大動脈弁置換術)の合併症対策の新たなデバイスについて。

Sapien 3の登場によりTAVRのステージは次の段階に移行したように思う。御存知の通りPARTNER2A試験(1)で中等度リスクの重症大動脈弁狭窄症患者におけるTAVRのsurgical AVR(外科的大動脈弁置換、以下SAVR)に対する非劣性が発表され、第三世代Balloon Expandable TAVRであるSAPIEN 3では優位性が示された(2)。ステントフレームの改良(outer skirtの効果)により弁周囲逆流が減少して後拡張の必要性が減ったことが脳梗塞発症頻度を減らしたことがsurgical AVRに対して優越性を示せた要因だと考えられており、14-16Frまで小さくなったdelivery systemが経大腿アプローチを容易にし、血管合併症を減らしている。となると興味は適応拡大になってきており、イタリアで2010-2012に行われたOBSERVANT resistry(3)ではpropensity score を用いてlow-intermediate risk群(mean logistic EuroSCORE 1: 10.2 ± 9.2% vs. 9.5 ± 7.1%, SAVR vs. transfemoral TAVR; p = 0.104)を作成しSAVRとtransfemoral TAVRを比較。1年後の全死亡13.6%対13.8%(p = 0.936)、MACCE, 17.6%対18.2%(p = 0.831)と非劣性を示しJACC上でlow risk患者へのTAVR患者の適応拡大を巡ってのletterが掲載される事態(4, 5)になっている。

当施設で使用しているvalveの多くはSapien 3で時にCoreValveやLotusといったself expanding valveが登場する。Sapien 3でも殆どのケースで後拡張を要するほどの弁周囲逆流はないが、self expanding valveの方がさらに少ない印象だ。弁の種類によらず手技時間も非常に短く、手技も確立していて半日で大体2,3件は終わってしまう(経済的な理由で年間症例数が制限されているらしいが)。合併症をよく見てくるように勧められたがTAVI術中合併症は少ない。もちろん脳梗塞、血管損傷、大動脈弁輪破裂、冠動脈閉塞、房室伝導障害などの問題は残っている。

長い前置きになってしまったが、最近JAMAに掲載されたCLEAN-TAVI trialを紹介したい。このstudyは脳梗塞予防にフィルターを用いた単施設研究(Leipzig Heart Center)でcontrol群と比較して優越性を示した。

まずはどんなデバイスかを動画でどうぞ

https://www.youtube.com/watch?v=Mm190GpzR0M

2013年4月から2014年6月に行われた無作為割付試験でTAVRを受ける100名をfilter使用群50名(平均80.0歳、logistic EuroScore 16.4%)とcontrol群(平均79.1歳、logistic Euro Score 14.5%)で比較した。Primary endpointは手技2日後の時点でのDWMRIで観察される新しい脳梗塞、secondary outcomeは保護領域における新規脳梗塞領域とした。

新規病変はfilter群で4.00 [IQR, 3.00-7.25] 、control群で10.00 [IQR, 6.75-17.00] (difference, 5.00 [IQR, 2.00-8.00]; P < 0.001)。容積で 242 mm3 [95% CI, 159-353]対527 mm3 [95% CI, 364-830]) (difference, 234 mm3 [95% CI, 91-406]; P = 0.001)といずれも有意差を示した。

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Adverse eventsはcontrol群で30日死亡1名、大出血(Life-threatening)1名ずつ、Major vascular complicationsがfilter群で5 名、control群で 6 名、急性腎障害はfilter群1名、control群5名、 filter群で3名が開胸手術を受けた。100名の単施設RCTでもちろんevidenceは十分ではないが、いままでTriguardやEmbrella Embolic Deflectorが優越性を証明できなかったことを考えると、ついに優越性を証明できたデバイスが出てきたという印象だ。

手技時間は18分ほど長くなっているがこれは習熟とともに減少していくと思われるし、ますますTAVRの安全性が確保されていくのではないかと思っている。

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どなたの発言だったか忘れてしまって申し訳ないのだが、ある外科の先生が「カテーテル治療分野はデバイスの開発でめざましく進歩している。業者が利益を上げるために開発するデバイスの進歩と医学の進歩が合わさって進歩しているところがすばらしい」とおっしゃっていた。そのうちvalveそのものに電極でも入れて房室伝導を補助したりできるんじゃない?なんてことも想像してしまう。医師の側もデバイスの進歩についていけるように経験と知識をupdateしていかなくてはと思っている。特に海外にいるとデバイスの進歩についていけなくて辟易することもあるけれど頑張ろう。

 

参考文献

1. Leon MB, Smith CR, Mack MJ, et al. Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement in Intermediate-Risk Patients. N Engl J Med. 2016 Apr 28;374(17):1609-20

2. Thourani VH, Kodali S, Makkar RR, et al. Transcatheter aortic valve replacement versus surgical valve replacement in intermediate-risk patients: a propensity score analysis. Lancet. 2016 May 28;387(10034):2218-25.

3. C. Tamburino, M. Barbanti, P. D’Errigo, et al. 1-year outcomes after transfemoral transcatheter or surgical aortic valve replacement: results from the Italian OBSERVANT Study. J Am Coll Cardiol, 66 (2015), pp. 804–12

4. Spadaccio C, Fraldi M, Sablayrolles JL, Nappi F. TAVI in Lower Risk Patients: Revolution or Nonsense? Keep Calm and Select Patients. J Am Coll Cardiol. 2016 Mar 22;67(11):1380-1.

5. Barbanti M, Tamburino C, D’Errigo P, et al. Reply: TAVI in Lower Risk Patients: Revolution or Nonsense? Keep Calm and Select Patients. J Am Coll Cardiol. 2016 Mar 22;67(11):1381-2.

6. Haussig S, Mangner N, Dwyer MG, et al. Effect of a Cerebral Protection Device on Brain Lesions Following Transcatheter Aortic Valve Implantation in Patients With Severe Aortic Stenosis: The CLEAN-TAVI Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016 Aug 9;316(6)