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from Overseas

2017年06月04日

from Overseas

拡張障害に対する挑戦

JACC Basic Transl Sci. 2016 Jan-Feb;1(1-2):14-28.
Cardiosphere-derived cells reverse heart failure with preserved ejection fraction (HFpEF) in rats by decreasing fibrosis and inflammation.
Gallet R, de Couto G, Simsolo E, Valle J, Sun B, Liu W, Tseliou E, Zile MR, Marbán E.

 
今回は私のラボから報告された研究について紹介いたします。心不全に対する再生医療と言えば重症低心機能をいかに改善させるか、というテーマがイメージしやすいでしょう。しかし、この研究は心機能が保持されているいわゆる“HFpEF”に対するCell Therapyという、いい意味で予想の逆をつかれたものです。これを読んでいる皆様には釈迦に説法ですが、“拡張障害”の改善が今回の研究テーマになっているわけです。
研究モデルは高血圧ラットにCardiosphere-derived cells(以下、CDC)を投与して4週間後に評価するというものです。低塩分食を摂取させるコントロール群と、高塩分食を摂取させたCDCs治療群、プラセボ群の3群で比較しています。
Paper Review1-1
結果は心エコー及び病理においても心肥大、そして血圧の変化は認めないものの、CDC治療群でプラセボ群より拡張障害が改善したと報告されています。

Paper Review1-2Paper Review1-3

一度低下したCDC治療群のE/A比がコントロール群とほぼ同じくらいにまで改善しています。この変化に対して左室内の容積に変化がありません。

Paper Review1-5
実験終了時点での観血的評価ではCDCs治療群は心肥大や血圧に変化がないにも関わらずLVEDPがコントロール群と同等の結果を示しています。より詳細な検討ではCDC治療群において左室心筋の線維化、炎症による透過性、そして血中の炎症性サイトカインが低下しているということがわかりました。
Paper Review1-6
今までは心肥大がHFpEFの主因と考えられていた中で、近年の報告では炎症及びコラーゲンの透過性亢進が指摘されており[1, 2]、高血圧下では炎症性サイトカインによる左室心筋の線維化を起こすことがわかってきました。この左室内のコラーゲンの蓄積がHFpEFの拡張障害の主要な原因という報告もあります[2]。この炎症や線維化に対してCDCsが以前紹介したエクソソームを介して効果を発揮します。また、微小循環障害もHFpEFの一因とされており、これに対してもCDCsが有効であると報告されています。血圧や心肥大の程度は変化しないにも関わらず、拡張障害に関わるパラメーターが改善するというのは非常に興味深いと思います。
さて、私の留学の目的はトランスレーショナルリサーチなのですがまさにこの報告から臨床研究が立ち上がっています。
http://academicdepartments.musc.edu/newscenter/2016/hfpef-treatment-tests-heart-stem-cells/
こういった実臨床に直結するような研究をするべく私も日々精進していきたいと思います。・・・余談ですが1,000万ドルのグラントってとんでもない額ですね。

1. Paulus, W.J. and C. Tschope, A novel paradigm for heart failure with preserved ejection fraction: comorbidities drive myocardial dysfunction and remodeling through coronary microvascular endothelial inflammation. J Am Coll Cardiol, 2013. 62(4): p. 263-71.
2. Zile, M.R., et al., Myocardial stiffness in patients with heart failure and a preserved ejection fraction: contributions of collagen and titin. Circulation, 2015. 131(14): p. 1247-59.