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2017年06月04日

2016-2017

冠動脈CTとIVUSによる、CTO病変の形態学的評価ーAuthor山本先生に学ぶ、イメージング研究のTips

Morphological assessment of chronic total occlusions by combined coronary computed tomographic angiography and intravascular ultrasound imaging.

Yamamoto MH et al. Eur Heart J Cardiovasc Imaging. 2017 Mar 1;18(3):315-322.

最後のReviewは、私と同じCardiovascular Research Foundationに留学中の山本 明和(やまもと みょんふぁ)先生が昨年Eur Heart J Cardiovasc Imagingに発表された論文を紹介させてください。冠動脈CTとIVUSの2つのモダリティを用いて、CTO病変を分類し、発症メカニズムの違いに迫った、興味深い研究です。
こちらでイメージングの勉強を始めてから、たくさんの画像を見て、それらの共通点と相違点を見つけて分類したり、病因を考えたりすることの面白さと難しさを実感しているところです。山本先生のこの論文では、術前CTを用いてCTO病変を3パターンに分類していますが、この分類方法が非常に理にかなっており、勉強させていたただきました。今回、どのような着想をもとにこの研究が始まり、進展し、最終的に論文化に至ったのか、山本先生から詳細にお話を聞かせていただくことができました。

Dr. Yamamoto 2

山本 明和先生

Q 最初に、先生のご経歴を教えていただけますでしょうか。

A 平成18年に昭和大学を卒業、昭和大学横浜市北部病院にて初期臨床研修後、同病院心臓血管カテーテル室に入局。卒後9年目にCardiovascular Research Foundation(CRF)への留学の機会に恵まれました。

 

Q この論文は、現在ご所属の昭和大学横浜市北部病院のデータを用いて留学中に書かれた論文と伺いました。留学前には、留学中にどのような仕事をしたいと思っていらっしゃいましたか。

A もちろん、留学ならではの大規模臨床試験に関わってみたいという思いもありましたが、私たちが普段臨床で得られるデータを研究にどう活かすかを学びたい気持ちもありました。それなら日本でもできるのではという意見もあるかと思いますが、自施設以外の先生と研究を進める事によって、客観性が増しますし、ideaを出し合いdiscussionできる機会が何よりも貴重でした。ありふれているデータを、idea次第で論文化できる過程を体験できた事は今後に役立つと思っています。

 

Q 先生の研究は、CTO病変についてのCT/IVUS所見から、CTOの形態学的な分類を試みるという、ユニークな研究ですが、こういったアイディアは、どのようにして生まれたのか、ぜひ教えてください。

A 施設柄、CTOの症例が多く、それらを見ているうちに、決してCTOの病因は一つではないという事を感じていたのと同時に、なぜCTOになるのかという事にも関心がありました。

 

Q 今回先生はCTとIVUSを用いて、CTOをPositive Remodelingタイプ、Non-Positive Remodelingタイプ、Collapseタイプの3つに分類されています。最初からこういった分類を想定されていらっしゃったのでしょうか。それとも、データ解析の過程で試行錯誤があったのでしょうか。

A CTOの冠動脈CTで、病変の遠位がcollapseしている症例は時折見たことがあり、“これは他とは何かが違う”と思ったことが始まりです。何を指標に論理立てていくか、非常に悩みまして、CTO distalの血管径を見たり、Collapseタイプでは対照血管にプラークが少なかったため、対照血管のPlaque burdenを指標に比較してみましたが、どうもこの方法では結果やそれに対するメッセージがはっきりしませんでした。何が病因と一番関連しているかを考えた時に、最終的に血管リモデリングに行き着きました。血管内画像研究の面白い所は、特にobservational studyの場合、切り口次第で見えるものが変わってくる事だと思います。前例にならう必要はなく、自分の伝えたい事が最大限に伝わる方法を探せばいいのだという事をこちらで学びました。

 

Q CTOの発症機序にせまるという点で、形態学的にも非常に面白い研究だと思うのですが、こういった学問的興味に加えて、これらの分類をどのように実臨床に生かすことができるでしょうか。

A CTOの血管径は、PCI前の情報として、CTを見なければ分からない情報だと思います。CollapseタイプはCTOのdistalが細くなっているため、的が狭く、antegrade approachでは、ワイヤ通過困難で、retrograde approachの良い適応となると思われます。実際、Collapse群ではretrograde approachの頻度が多い結果となっています。また、以前にはCTOのdistal portionのshrinkageが手技不成功の因子の一つと報告されています(Ehara et al. J Invasive Cardiol. 2009;21:575-82.)。

 

Q Discussionでは、CTOの発症機序が異なる可能性について言及されています。Positive Remodelingタイプはunstable plaqueや過去のplaque ruptureに、Non-Positive Remodelingタイプはadvanced plaqueに、Collapseタイプは血栓を伴うplaque erosionにそれぞれ関与するのではないかという、興味深い考察ですが、この3タイプのIVUS所見の違いについて、簡単に解説いただけますでしょうか。

A Positive remodeling タイプは、CTO内のプラーク量は多いものの、対照血管にはプラークが少ない傾向があり、Non-Positive Remodelingタイプは、CTO内に石灰化が多く、対照血管にもプラークが多い結果でした。あくまで推測の範囲内ですが、IVUSの結果から、positive remodelingタイプはPlaque ruptureからの突然の閉塞に近い病態で、Non-positive remodelingタイプは長い狭心症歴があり、高度狭窄から、閉塞に至ったのではないかと解釈しています。一方Collapseタイプでは、対照血管にはほぼプラークがなく、その上、CTO内のプラークも少なく、そう考えるとより近い病態は、erosionからの閉塞なのではないかとの推測に至りました。また、プラークもしくは血栓により閉塞しているCTOは、病変の中でも近位の短い距離のみで、遠位のcollapseしている部分はCTでは閉塞しているように見えるものの、IVUSではプラークがほとんど無いため、血流が途絶えることで血管が潰れている状態と解釈しています。

 

Q 最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

A CRFで血管内画像研究を行う上で学んだことは、とにかく沢山の画像を見て、沢山見続けることで、自分なりのパターン認識をしながら血管内画像の理解を深めていくという事です。その中に日々の疑問点を解決するヒントが隠れているのだと思いますし、自分なりの仮説を作る創造力もそこから養われていくのかなと思っています。

 

山本先生、貴重なお話をありがとうございました。

 

(論文の要旨)
[背景/方法]
冠動脈CT、IVUSは病変の形態学評価に有用であることが知られており、血管のポジティブリモデリングはACSに多く認められ、プラークが脂質コア、マクロファージ、破裂などを多く含むことが報告されている。いっぽう、ネガティブリモデリングは安定狭心症に多く認められ、CTO-PCIの手技不成功と関連があることが報告されている。CTO病変に関して、冠動脈CTとIVUSがリモデリングを含めた形態学的な評価を可能にし、この評価がCTOの成因解明やPCI治療に有用な情報を与えるという仮説のもと、CTO病変のPCI術前冠動脈CTおよび術中IVUS所見に関し検討を行った。
対象:2007年1月から2014年8月の間に、術前冠動脈CTが施行され、かつワイヤー通過後にIVUSが施行された、de novo CTO病変連続137例。
冠動脈CT: MIPおよびMPRによる解析が行われた。リモデリングはcMPRの長軸および短軸像により評価された。プラークはその性状により(i)non-calcified plaque, (ii) mixed plaque, (iii) calcified plaqueに分類された。
IVUS: IVUSはワイヤー通過直後もしくは1.5-2.5 mmバルーンで前拡張を行った後に施行された。Remodeling indexはEEM at the maximum plaque burden site/Proximal reference EEMと定義された。

[結果]
術前冠動脈CTの結果によって、CTO 137病変は以下の3つに分類された。
① Positive Remodeling (閉塞部位における最大血管径 >prox. reference vessel diameter (RVD)) 44症例(33.8%)
② Non-Positive Remodeling (①に該当しない症例のうち、閉塞部位における最小血管径 >prox. RVDの50%) 74症例 (56.9%)
③ Collapse (①に該当しない症例のうち、CTO部位における最小血管径 ≤prox. RVDの50%) 12症例 (9.2%)

CTO morphology

Collapse群に分類された患者は、若く(① 64.5歳 vs ② 67.0歳 vs ③ 55.0歳, p=0.005)、心筋梗塞既往を認めなかった。
術前CTにおいて、Collapse群ではnon-calcified plaqueの割合が高率であったのに対し(34.1% vs. 29.7% vs. 41.7%)、calcified plaqueはNon-Positive Remodeling群に最も多く認められた(9.1% vs. 40.5% vs. 25.0%)。また(CT評価による)CTO閉塞長は、Collapse群では閉塞長がもっとも長かった(10.4 vs. 10.7 vs. 46.4 mm, p<0.001)。
血管造影においては、Collapse群では多枝疾患患者が少なく(68.2% vs 74.3% vs 41.7%, p=0.07)、石灰化も少なかった(13.6% vs. 39.2% vs. 8.3%, p=0.003)。
PCI手技においては、Collapse群ではretrograde approachを用いて治療された患者が多かった(25.0% vs. 36.5% vs. 66.7%, p=0.03)。
IVUS所見においては、Collapse群ではsubintimal wiringの割合が高く(13.6% vs. 24.3% vs. 41.7%, p=0.10)、hematomaの割合も高かった(18.2 % vs. 48.6% vs. 41.7%, p=0.004)。

[結論]
PCI術前の冠動脈CTおよび術中IVUSによって、CTO病変の形態学的多様性が示された。冠動脈CTとIVUSの2つのモダリティを併用することによって、CTO病変のより詳細な評価が可能であった。