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from Overseas

2017年04月14日

from Overseas

近赤外線といえば・・・

循環器内科領域で近赤外線といえばOCT、OFDIでしょう。私も留学前はお世話になったイメージングデバイスは今更説明する必要のないものだと思います。今回紹介するのは、この近赤外線を悪性腫瘍に対する治療法として用いるという研究です。

Sci Transl Med. 2016 Aug 17;8(352):352ra110. doi: 10.1126/scitranslmed. aaf6843.

Spatially selective depletion of tumor-associated regulatory T cells with near-infrared photoimmunotherapy.

Sato K, Sato N, Xu B, Nakamura Y, Nagaya T, Choyke PL, Hasegawa Y, Kobayashi H.

まず前知識として、この研究ではIR700という近赤外線に反応する物質を使います。これをがん細胞に対して特異的に結合する抗体に付与して静脈投与し、抗体が結合したがん細胞に近赤外線を当てるとその抗体に結合している細胞(細胞膜)を変性、破壊するという機序です。これは静脈内投与という点と、近赤外線照射のみに細胞破壊を起こすという点で非常に選択性が高く、また侵襲が低い治療です。NIR-PIT(Near-infrared photoimmunotherapy)と呼ばれています[1]。

Paper Review2-1

今回紹介している研究はこの技術を用いて、がん細胞周囲にある制御性T細胞(regulatory T cell;Treg)の細胞破壊を起こし、その結果Tregによって免疫応答から守られているがん細胞を本来我々に備わっている免疫(細胞障害性T細胞)の活性化によって、がん細胞を破壊するというものです。

Paper Review2-2

この研究ではさらに近赤外線照射部位以外の場所でも腫瘍縮小効果を認めており、活性化した免疫応答により転移性悪性腫瘍などの離れた臓器の腫瘍に対しても効果を発揮することが示されました。

Paper Review2-3

このNIR-PITという治療法は現在臨床試験がPhase Ⅱまで進んでおり、効果が示されれば近い将来日本にも導入されることでしょう。まさにトランスレーショナルリサーチ!

なぜここまでがん治療の話をしてきたかというと、この技術が再生医療にも応用される可能性があるということです。iPS細胞の臨床応用の課題として細胞分化段階でのがん化が挙げられます。この技術を用いることで正常細胞は残したまま、がん化した細胞のみを除去することが可能となるかもしれません。

この治療法の生みの親はアメリカ国立研究所の小林久隆先生です。もちろん私は面識がないのですが、小林先生は臨床医からスタートし、その後基礎研究に進んでいったという経歴は今現在悪戦苦闘している私にとっては非常にモチベーションを上げてくださる存在です。あるインタビューでは「臨床の経験が基礎研究にも必ず役立つ」とコメントされており、私もこのコメントを信じて日々精進していきたいと思います。お時間があればぜひインタビュー記事をご一読くださいませ。

http://www.mugendai-web.jp/archives/6080

  1. Mitsunaga, M., et al., Cancer cell-selective in vivo near infrared photoimmunotherapy targeting specific membrane molecules. Nat Med, 2011. 17(12): p. 1685-91.