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from Overseas

2017年05月14日

from Overseas

幹細胞だけではない再生医療

今から5年前、京都大学の山中伸弥先生がiPS細胞の発表によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。2006年にCell誌に掲載されたこのiPS細胞の報告は医学界において大きなシフトチェンジを行ったことは誰も疑うものではないでしょう[1]。山中因子と呼ばれる4つの転写因子であるOCT3/4、Sox2、Klf4、c-Mycを導入することによって成熟細胞を初期化します。今回は心筋細胞に特化した「ダイレクトリプログラミング」という手法で心筋再生医療の研究を行っているレビューを紹介します。

Cell Mol Life Sci. 2017 Feb 14. doi: 10.1007/s00018-017-2466-4.

Discovery and progress of direct cardiac reprogramming.

Kojima H, Ieda M.

これまで再生医療といえば幹細胞を生成し、その幹細胞を心筋内や冠動脈内に注入するというのが一般的だと思います。今回紹介するレビューはこの心筋におけるダイレクトリプログラミングと呼ばれるGATA4、Mef2c、Tbx5という3因子を導入する手法によりin vitroの筋線維芽細胞を心筋様の細胞に変えるという報告から始まります[2]。

Paper Review3-1

このアプローチでは線維芽細胞がiPS細胞を経由せずにまさに“直接的に”心筋様細胞に変化することです。報告された当初は機能的に十分な心筋様細胞の誘導効率は低く、in vivoでの誘導が困難な結果でした。その結果の一方で、このアプローチを応用した報告の数々によりリプログラミングの効率は改善を続けています。特にヒトの心筋線維芽細胞については上記の3因子に加え(もしくは一部変更し)、他の転写因子(Myocd、Mesp1等)、マイクロRNA(miR-1/133)を付与することで誘導効率を上げています。

Paper Review3-2

今回紹介したレビューではこのダイレクトリプログラミング技術を臨床に導入するにはまだ解決、改善するべき問題があると述べています。しかし、幹細胞そのものを使う再生医療とは違うアプローチで心筋を再生するこの概念は将来的に臨床につながるものであると私も期待しております。

  1. Takahashi, K. and S. Yamanaka, Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell, 2006. 126(4): p. 663-76.
  2. Ieda, M., et al., Direct reprogramming of fibroblasts into functional cardiomyocytes by defined factors. Cell, 2010. 142(3): p. 375-86.