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from Overseas

川瀬治哉(Bad Nauheim, Germany)

川瀬治哉(Bad Nauheim, Germany)

Max Planck Institute of Heart and Lung Research

2018年07月08日

【テーマ】2018-2019

たとえドイツが敗退してもW杯で盛り上がる国際色豊かな環境

図2

これは先日、当研究所内で行われた、FIFA W杯ドイツvs.韓国の観戦の様子です。いつもセミナーなどで使用する部屋で、ビールを飲みながら、子供達も一緒に、大体の人はドイツを応援しています。もちろん、勤務時間“内”です。お金を賭けている人もいます。こんな光景も海外ならではでしょうか。そしてまさか、この試合で前回優勝国ドイツのグループリーグ敗退が決まりました。。。

 

さて今回は留学先の紹介です。

1. 施設紹介

写真1. 施設外観(ホームページから転載・編集)

写真1. 施設外観(ホームページから転載・編集)

黄緑の矢印の建物が私の留学しているMax-Planck-Institute for Heart and Lung Research、赤の矢印の建物が隣接するKerckhoff Klinikです。ホームページ写真のこのドイツ語は英訳すると「Treat and research – Medicine and science in one campus」となります。

 

・Max-Planck-Institute for Heart and Lung Research (https://www.mpi-hlr.de/)

写真2. 明るく広々としているラボ

当研究所は、ドイツを代表する研究団体であるマックスプランク協会(MPS)によって運営される研究所の一つです。MPSは公的資金のもと国内外で78の研究機関を運営していますが、それぞれが扱う分野は生物学・医学から化学・物理学、そして人文学までと多岐に及び、年間予算は総じて16億ユーロにのぼります。MPSからは、アインシュタインなど超有名人を含め、これまで実に33人ものノーベル賞受賞者が輩出されています。

当研究所は心臓や血管を対象とした研究機関として2006年にリニューアルされ、3つの主要部門(Cardiac Development and Remodeling、Pharmacology、Developmental Genetics)および2つの独立部門から構成されています。研究所全体のアクティビティは年々増しており(図1)、特に最近では2016年に、私の所属するPharmacologyのラボを含めNature誌に3報パブリッシュされています。Kerckhoff Klinik (後述)で得られる臨床サンプルを用いた研究も盛んで、基礎研究と言っても実臨床への応用を見据えた内容に重点が置かれているように感じます。日本からのMD所持者としては、札幌医大脳神経外科の杉野寿哉先生、大阪大学心臓外科の河村拓史先生・愛先生ご夫妻が私の少し前から留学されており、公私共に大変お世話になっています。

図1

図1. 当研究所のアクティビティの推移

・Kerckhoff Klinik (https://www.kerckhoff-klinik.de/startseite/)

研究所に隣接するKerckhoff Klinikは、ここヘッセン州で最も多くの心臓外科手術が行われている心臓センター病院で、年間件数は心臓外科手術が約3,000件(うち心臓移植10-15件)、TAVI約500件、PCI約3,000件です。日本からは北里大学心臓外科の井上信幸先生が留学されており、第一術者として執刀もされています。私は将来的には何らかの形で研究所とKerckhoff Klinikを行き来できるようにしたいと考えています。

 

2. ボスや同僚の紹介

Phamacologyラボのディレクターで私の大ボスのStefan Offermanns教授は、非常に紳士的で、私たち家族をご自宅に招待していただくなど大変親切にしてくれています(写真3)。仕事に対しては厳しい一面もありますが、自身もハードワーカーです。中ボスであるNina Wettschureck教授は女性で、実働的な面ではラボの中心的存在です。大まかな方向性はOffermanns教授に、実験方法など細かな部分はWettschureck教授に指導してもらっている感じです。二人ともMDです。

写真3. Offermanns教授(右)の豪邸にてOffermanns一家とともに

写真3. Offermanns教授(右)の豪邸にてOffermanns一家とともに

ラボにはこの他十数名のスタッフ(研究者・技術者)に加え、私のような博士研究員(Postdoc)と日本で言うところの大学院生(PhD student)が合計で30名程度在籍しています。アジア(中国、韓国、フィリピン、日本)、インド、ロシア、ヨーロッパ(ドイツ、フランス、ポルトガル、ハンガリー)、中南米(メキシコ、アルゼンチン)など出身国は様々で(写真4)、それこそW杯は格好の話のネタになっています。ベルギー戦の翌日は、日本はよくやったね、と皆から言われ嬉しくなりました。皆とても優秀かつフレンドリーで、英語も上手です。

写真4. 掲示板:在籍者の出身国が地図上にピンで示されている

写真4. 掲示板:在籍者の出身国が地図上にピンで示されている

 

3. 日常業務スケジュール

勤務時間は特に決められていませんが、8時半ごろに出勤しています。実験をしたり、調べ物をしたり、セミナーに出たり、ミーティングをしたり、と一日の時間配分はほぼ自由に決められます。アジア人は概してよく働き、夜遅くや土日にもいたりします。ヨーロッパ人は夕方にスパッと帰りますが、皆結果はしっかり出しています。毎日何かしらわからないことが多数出現し、心が折れそうになることもしばしばですが、わからないことが多いほど新しく得るものも多いはずと、何とか前向きに捉えるようにしています。

Offermanns教授は指導にも積極的で、私たち部下一人一人に対して2週間に1回程度の個別ミーティングを設けています。定期的にボスとディスカッションする機会があるのはお互いにとって良いことなのだと思います。この定期的な締め付けは研究を進める上でのモチベーション、言い換えればプレッシャーにもなっています。

また、毎週月曜日夕方には、ラボ全体のカンファレンスがあります。ここでは、自分の研究進捗を発表するProgress reportおよび最新の重要論文を取り上げてプレゼンするJournal clubを各一人が担当して行います。どちらも徹底的な議論がなされます。こちらに留学した初日、ラボ内の掲示板でメンバー全員の誕生日が紹介されているところに自分の名前がすでにあるのを見てとても嬉しくなりましたが、と同時に、このProgress reportとJournal Clubの担当者欄にもすでに割り当てがあり(写真5)、その嬉しさは一気に不安へと変わりました。そしてその不安は今も継続しています。

写真5. Progress reportとJournal clubの担当表

写真5. Progress reportとJournal clubの担当表

 

4. 休日の過ごし方

平日は帰宅後も勉強や翌日の計画に費やすことが多く、そのぶん土日はリフレッシュしています。家族で近所の公園へ出かけたり、車で観光名所を訪れたりしています(写真6)。近隣諸国のガイドブックも日本からたくさん持参しており、楽しみは尽きません。こういったことも留学の大きな醍醐味だと思います。現地の文化についてはまた第4回でご紹介します。

写真6. ノイシュバンシュタイン城にて

写真6. ノイシュバンシュタイン城にて