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from Overseas

小暮智仁(London, UK)

小暮智仁(London, UK)

St Thomas's Hospital & Evelina London Children’s Hospital

2018年09月01日

【テーマ】2018-2019

先天性心疾患カテーテル治療の新たな可能性に日々触れて

私の留学先施設はヨーロッパ内でも先進的な先天性心疾患カテーテル治療施設ですので、国際学会のライブで見る様な症例にほぼ毎日触れ合う機会に恵まれます。

今回は特に私の留学目的であるファロー四徴症や、類似疾患に対する経カテーテル肺動脈弁置換術最前線に関して概説させていただきます。そもそも循環器内科分野では珍しいであろう先天性心疾患のカテーテル治療の中で、さらに特殊な新たな治療に関してご説明する心苦しさを感じていますが、留学目的がそれなのでお許しいただこうと思います。

ファロー四徴症は代表的なチアノーゼ性心疾患で、大きな心室中隔欠損、肺動脈狭窄、大動脈騎乗、右室肥大を主徴候とします。肺動脈弁狭窄の度合いによりBTシャントなどの姑息手術を経て1歳前後で心室中隔欠損閉鎖、肺動脈弁狭窄解除を行います。手術周術期死亡率は2%程度と良好で、95%以上の症例が成人期に達します。そこで問題となってくるのが肺動脈弁です。肺動脈弁狭窄の解除方法は右室流出路、肺動脈弁輪を切開、拡張して右室前面にGore-Texなどのパッチをあてる手術(transannular patch手術)と人工導管(Gore-Tex、他種グラフト、ホモグラフトなど)置換術(Rastelli手術)があり、日本ではtransannular patch手術が多くされております。

TOF手術

人工血管では人工的に作成した弁様構造物やグラフト弁の劣化、損傷、石灰化が問題となります。またtransannular patch手術では肺動脈弁構造が破壊されたり、そもそも取り除かれてしまうため、高度の肺動脈弁逆流が術後10〜20年の遠隔期に問題となります。治療の第一選択は再開胸による肺動脈弁置換術ですが、再開胸のリスク、また肺動脈弁置換術後の生体弁劣化により繰り返しの再手術の必要性が問題になります。そこで考え出された方法が経カテーテル肺動脈弁置換術です。TAVIの肺動脈版と考えていただければ理解は容易だと思いますが、肺動脈弁周囲の状況が症例により様々であり、症例によっては肺動脈主幹部の高度拡張や高度石灰化を有します。また肺動脈は胸骨と大動脈に挟まれた位置に存在し、人工弁の留置に際し背面の冠動脈の圧排に注意が必要です。

現在同治療に使用できるデバイスは、Medtrinic社のMelody ValveとEdwards社のSapien XT Valve、Medtech社のVinus P-Valveです。Melody valveの使用は基本的に肺動脈の導管置換後の症例に限られ、またSapien XT valveは皆さんがご存知の通り大動脈弁用に開発されたTAVI valveで肺動脈弁にも応用されていますが、肺動脈弁の複雑な構造に対応した専用弁の開発が期待されました。

2015年初の自己拡張型肺動脈弁としてVenus P-Valveが開発され、CEマークを取得しました。

Venus P-Valve

留学先施設のボスProf. Shakeel QureshiがPIとして国際共同研究を開始し、同年にヨーロッパで最初の5例の良好な結果を報告し、その後、国際共同研究結果を、Cardiology in young誌やCirculation intervention誌に報告しています。現在までの手技成功率は98%を超え、肺動脈弁逆流率(PRF 42% → 3%)右室容積の減少(RVEDVI 146 ml/m→ 108 ml/m2)、右室収縮能の改善(RVEF44% → 50%)が得られています。[1-4]RVOT APRVOT L

ProcedureResult

当院には同治療の対象症例が集められていて、執筆している今週も2症例が予定されており、比較的希少な手技であることを忘れて麻痺してくる感覚があります。同治療は今後も他社の新たな構造の人工弁が開発されており、適応症例の拡大、デバイス選択の可能性が広がることが予想され今後さらに期待されます。

当院では、その他にも日本では手術でしか治療の行えない静脈洞(上位)欠損型心房中隔欠損症に対するステントグラフト留置閉鎖[5]や日本では使用できない大動脈縮窄症に対する新たなステント留置[6]など、最先端の手技に多く遭遇することが可能です。成人循環器内科領域でもTAVIを始めとして構造的心疾患カテーテル治療の分野の進歩は凄まじいですが、先天性心疾患の領域でも同様で、これまで手術以外で治療不能であった疾患の多くがカテーテル治療により治療可能となってきています。日々カテーテル治療の新たな可能性を感じられる日常に感謝しつつ今後も修練に励もうと思います。

 

[参考文献]

[1] Husain J, Praichasilchai P, Qureshi SA et al.

Early European experience with the Venus P-valve®: filling the gap in percutaneous pulmonary valve implantation.

EuroIntervention. 2016 Aug 5;12(5):e643-51.

[2] Promphan W, Prachasilchai P, Qureshi SA et al.

Percutaneous pulmonary valve implantation with the Venus P-valve: clinical experience and early results.

Cardiol Young. 2016 Apr;26(4):698-710.

[3] Riahi M, Ang HL, Qureshi SA et al.

Infolding of the Venus P-Valve After Transcatheter Pulmonary Valve Implantation.

Circ Cardiovasc Interv. 2018 Apr;11(4):e005923.

[4] Jones MI, Qureshi SA.

Recent advances in transcatheter management of pulmonary regurgitation after surgical repair of tetralogy of Fallot.

F1000Res. 2018 May 30;7. pii: F1000 Faculty Rev-679.

[5] Riahi M, Velasco Forte MN,Qureshi SA et al.

Early experience of transcatheter correction of superior sinus venosus atrial  septal defect with partial anomalous pulmonary venous drainage.

EuroIntervention. 2018 Jul 18. pii: EIJ-D-18-00304.

[6]  Morgan GJ, Kenny D, Qureshi SA et al.

Initial assessment of a novel delivery system (NuDEL™ ®) for the covered Cheatham-Platinum stent.

Cardiol Young. 2017 Oct;27(8):1465-1469.