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from Overseas

2018年11月24日

from Overseas

ドキドキしたらまずスプレー?

発作性上室頻拍の治療選択肢が広がるかもしれません。今回は抗不整脈薬の投与方法に関する話題提供です。

Etripamil Nasal Spray for Rapid Conversion of Supraventricular Tachycardia to Sinus Rhythm

Bruce S. Stambler, et al.

J Am Coll Cardiol 2018; 72: 489–97.

【背景】

発作性上室頻拍(SVT)の迅速な停止に使用できる静注薬以外の薬剤は限定されている。

【目的】

本研究の目的は、SVTを迅速に停止させるために開発された短時間作用型カルシウムチャンネルブロッカーであるEtripamil経鼻スプレーの有効性および安全性を評価すること。

【方法】

試験デザインは多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ比較試験であり、Etripamil経鼻スプレーの第二相試験である。

SVTに対するアブレーション目的に電気生理学的検査を予定されている患者を対象とした。一般的な電気生理学的検査でSVTを誘発し、SVTが誘発され5分間持続した患者に薬剤を投与した。

投与薬剤はプラセボ、または4通りの用量(35/70/105/140 mg)に設定されたEtripamilのうちのどれか1種類であり、無作為に1:1:1:1:1に割り付けられた。

主要評価項目は投与15分以内のSVT停止率、副次評価項目は停止までの時間および有害事象であった。

写真

写真:https://www.cardiovascularbusiness.com/topics/electrophysiology-arrhythmia/nasal-spray-potential-quickly-treating-arrhythmiaより引用

【結果】

104人に薬剤が投与された。患者の年齢は中央値55歳(平均52.2歳; 19-85歳)、BMIは中央値28.57 kg/m² (平均 29.35 kg/m²; 19-64.1 kg/m²)。全体の59人(56.7%)が女性であり、人種構成は80.8%が白人であった。

5群に割り付けられたグループは、プラセボ群20人、Etripamil 35 mg群20人、Etripamil 70 mg群23人、Etripamil 105 mg群20人、Etripamil 140 mg群21人であった。ベースラインの患者背景等に有意差は認めなかった。

SVTが薬剤投与後15分以内に停止した割合は下表の通りであり、Etripamil経鼻スプレー群で65%〜95%、プラセボ群で35%であった。プラセボ群と比較して最小容量を除く3つのEtripamil用量群で統計学的に有意に停止率が高かった。

表1

表1. (本論文より引用): Etripamil 70 mg以上で有意に停止率が高かった。

容量反応モデルでEtripamil 70mgまでは容量増加とともに停止率が上昇し、それ以上の容量設定では停止率がプラトーに達することが明らかになった(図1)。

図1

図1. (本論文より引用): Etripamilの容量と停止率から作成された容量反応モデル。

プラセボと比較して優位に停止率が高かった70/105/140 mgの3群において、投与から停止までに要した時間の中央値は3分未満であった。停止までの時間が最も短かったのは140 mg群で中央値1.8分であった(図2)。

図2

図2. (本論文より引用)。各群の停止率と停止までの時間。

薬剤投与15分後に頻拍が持続している場合をCensorにしてCox回帰モデルでプラセボと各Etripamil群の治療効果を比較した場合も70 mg以上の3群で有意差を認めた(表2)。

表2

表2. (本論文より引用): 投与15分の時点で頻拍が持続していることをCensorにしたCox回帰モデルの結果。

安全性評価: 薬剤投与に関連すると考えられた有害事象は、プラセボ群で4/20 (20%)、Etripamil 35 mg群で17/20 (85%)、Etripamil 70 mg群で15/23 (78.3%)、Etripamil 105 mg群で15/20 (75%)、Etripamil 140 mg群で20/21 (95.2%)に観察され、その発症は容量依存性ではなかった。

有害事象の大多数は投与した鼻腔内または局所の刺激であった。3例に重大と考えられる有害事象を認めた。Etripamil 35 mgを投与された1人の患者は、顔面紅潮、息切れ、および胸部不快感を訴えた。Etripamil 105 mgを投与された1人の患者は悪心および嘔吐を呈し、もう1人の患者は重篤な咳を認めた。ただし、試験中止または死に至った有害事象は皆無であった。

Etripamil投与による血圧変動の経過は下図の通りであり、血圧低下は主にEtripamil 140 mg群で生じた。しかし、16分から30分後には元の血圧レベルまで復帰した。

図3

図3. (本論文より引用): 投与後の血圧変動。

【結論】

Etipamil経鼻スプレーは高い確率でSVTを早期に停止させた。本研究の安全性および有効性の結果は、SVT停止を目的としたこの新しい鼻腔内カルシウムチャネルブロッカーの自己投与を含む将来の研究におけるEtipamil用量選択の指針になる。

【私見】

薬はあらゆる疾患治療に無くてはならないものです。もちろん効果が優れていることが最も大切ですが、その投与方法もとても重要な要素です。上室頻拍はいつどこで生じるか分かりません。従来の頓服薬ですと発作が起きた際に都合良くお水がそばにあるかどうか分かりませんし、空腹の状態で薬を飲むことに抵抗を感じる患者さんもいらっしゃいます。また、頓服しても効果発現にはしばらく時間がかかります。このスプレーならばいつでもどこでも使用可能ですし、効果発現も非常に早く、停止率も高いです。とても有効な治療ツールになると思います。問題は有害事象の「鼻腔内の刺激」というものがどのレベルかというところでしょうか?インフルエンザの経鼻テストをものすごく嫌がる方もいらっしゃいますので、鼻からということに最初は躊躇する方もいらっしゃるかもしれません・・・。どちらにしても選択肢が増えることは良いことです。早期の実用化を期待しています。