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from Overseas

川瀬治哉(Bad Nauheim, Germany)

川瀬治哉(Bad Nauheim, Germany)

Max Planck Institute of Heart and Lung Research

2018年11月11日

【テーマ】from Overseas

より高いレベルの国際化を目指して

日本の医療制度を改めて外から客観的に見ると、ドイツや他の欧米諸国といかにかけ離れているかということを実感します。

病院の集約化、分業の促進(病棟と手術室の別担当医制、診療看護師(NP)の増員など)、国民皆保険の見直し、etc…

日本の医療にはこれらの多くの課題が山積みされている一方で、日本ではどの国よりも「患者さんに優しい医療」、すなわち低コスト・良アクセス・高品質な医療が提供されていることも事実です。改革は同時に犠牲も産むため、限られた医療人材・資源・財政の中で、国民の理解を得られる道筋を探る作業は容易ではありません。

上記の課題については、これまでも多くの議論がなされておりますので、今回私のレポートでは詳細は割愛し、ここでは臨床・研究・教育の全ての場面で今後日本にとってさらに重要性が増す「国際化」についてフォーカスしてみたいと思います。

 

<活発化する国際ネットワークの中で>

私の在籍する研究所には様々な国から人材が集まってきており、単に外国人であるということで異質に見られることはありません。会議やミーティングは全て英語で行われます。多くの関連施設を有するマックスプランク協会ならではの利に加え、様々な国から集まってはまた散らばって行く研究者との親交を活かして、国内外との共同研究も盛んに行われています。

今日では、研究全般において、これまで個人、組織、国、と段階的に拡大してきた研究の単位が、第4の時代、すなわち国際的に共同する時代に入ったと提言されています(文献1)。これは実感としても頷けるものであり、現在では国境を跨いだ施設連携によって、質の高い研究成果が多く生み出されています。しかしながら、日本は主要他国と比べこの国際協力が乏しく、活発化する国際ネットワークの中で置き去りにされつつあることが、様々な文献にて指摘されています(Reviewを参照)。この国際協力は、国同士の「物理的距離」と、言語や文化等を共有する「社会的距離」の近接によって促進されると言われていますが(文献2)、日本の地理的・言語的な独自性を考慮すると、日本にとって国際協力のハードルは元来高いと言わざるを得ません。それでも、今後日本が世界の中で存在感を発揮していくためには、より高いレベルでの国際ネットワークづくりが必要不可欠です。私たちの循環器領域でこれをいかに加速していくべきか、以下に考察してみたいと思います。

 

<対外的アプローチとして>

まず、国際ネットワークづくりの手段を、対外的または対内的なアプローチに大きく分けて考えてみたと思います。対外的なアプローチとしては、やはり第一には海外留学が挙げられるでしょう。留学先で密な接触を通して互いに信頼関係を築くことに成功すれば、帰国後の連携に発展する可能性が高まります。実際私の身近にも、帰国後に留学先との共同研究で成果をあげている先生が複数名いらっしゃいますが、それはその先生が異国の地で信頼を勝ち得た証であり、大変素晴らしいことだと思っています。また、海外経験によって培われる異文化コミュニケーション能力は、将来他の海外施設と連携する際にも有効となるでしょう。助成や情報共有など海外留学をサポートする体制づくりは非常に重要で、このSUNRISE研究会もその一役を担っていると実感しています。

第二に、日本の強みとなる医療を積極的に海外に展開する、ということが挙げられます。例えば私のYIAで審査委員長をしていただいた角辻先生のお仕事のように、日本の医療技術・サービスの質の高さが海外で具体的体験として認知されることは、その分野での日本の地位確立に多大な貢献を産むものと考えます。

その他の対外的アプローチとしては、他国のトップランナーへの積極的な働きかけ(学会会場での情報交換、施設訪問、国内学会への招聘など)、海外施設に在籍する日本人との連携、国際誌・国際学会での発表、などが挙げられるでしょう。中国・韓国の医療技術や研究が急成長している中で、今後は、欧米はもとより、物理的距離の近いアジア諸国との連携を密にしていくことが極めて効果的になってくると考えます。

 

<対内的アプローチとして>

一方、対内的なアプローチとして、内向きの国際流動を増やす、すなわち、外国人医師・研究者・学生の受け入れ体制を整えることが、日本が国際連携を活発化させる上でより重要になってくるでしょう。日本の文化は世界の中でも極めて個性的なものとして受け止められており、故に興味を持っている人が多く存在すること、また日本の医療技術や研究のレベルの高さについても同様に広く是認されていることを、様々な国の人と触れ合う中で実感しています。それでも、多くの外国人は、医療を学ぶ、または研究を行う場所として日本を選択するには至りません。実際、私がこちらで出会った非EU出身の研究者の中にも、「日本でも優れた研究が行われていることは知っているが、言語の障壁が高いため渡航先には選ばなかった」と言っていた人がいるように、言語による社会的距離は外国人にとって非常に大きいものです。大学院レベルでは主に英語を使用するようにしたり、義務教育期間中のいわゆる受験英語教育は、会話・ディスカッション能力の向上を目的としたより実践的な教育にシフトしていく必要性が大いにあると思います。

また、国際協力関係を効率よく構築する足がかりとして、国内のネットワークを盤石化することが重要である点については異論がありません。この点においては例えば、林田先生を中心としたOCEAN-SHD研究会は非常に有効なものと考えられます。

その他、デバイスラグ・ドラッグラグの解消や、国産の医療機器・薬剤の創出など、各国と対等、あるいはより優位に連携を図るための材料を国内で準備することも有用でしょう。

 

上に記述した内容は全て、チャレンジ精神溢れる多くの先生方の並々ならぬご尽力により、着実に実現されつつあることでもあります。国際化へ向けて道を切り開いている先生方への敬意と自分を奮い立たせる意味も込めて、レポートさせていただきました。

 

<参考文献>

1. Adams J. The Fourth Age of Research. Nature. 2013;497(7451):557-60.

2. 村上由紀子. 「国際共同研究に関する研究の成果と日本の政策への示唆」 研究 技術 計画. 2016.