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from Overseas

小暮智仁(London, UK)

小暮智仁(London, UK)

St Thomas's Hospital & Evelina London Children’s Hospital

2018年11月11日

【テーマ】2018-2019

先天心分野のデバイスラグは成人領域より深刻

これまでも多くの先輩方がSHD分野で留学されてきたように、日本と欧米、特にヨーロッパ各国とのデバイスラグは、言うまでもなく大きな問題です。

こちらでは、数多くの日本未承認のデバイスが、何の問題もなく使用されています。手技に関しても特に特殊な技術は必要なく、我々でも十分に使用できるものだと思います。日本でも治療を待っている患者さんがいるのにと、日々もどかしく思います。さらに、私の専攻する先天性心疾患の分野では、小児に使用する可能性があるデバイスであること、アンメットニーズにあたることから、デバイスラグは成人循環器分野と比較してもかなり深刻です。

例えば、肺動脈領域への治療に関しては、日本ではカテーテル肺動脈弁置換術のデバイスは未承認です。デバイス自体はSAPIEN 3 (Edwards Lifesciences社)も選択肢の1つとしてあるように、成人領域ではTAVIで一般的に使用されているものでも、当分野では使用できません。また日本では、肺動脈へのステント留置に関しても十分な選択肢がありません。数世代前の一種類のステントを使用していますし、サイズの大きなものは依然として胆管ステントとして発売されているものを使用しています。日本ではプレマウントされている肺動脈用ステントは無く(手でかしめて使用)、肺動脈瘤や損傷、破裂を想定したカバードステントも存在しません。結果として日本における肺動脈領域へのステント留置は極めて慎重で、限られた症例にしか行われておりません。バルーン拡張術が主な手技の日本と、一定年齢からはステント留置が第一選択のヨーロッパ各国とは治療の適応や積極性が大きく異なります。これまで多くの冠動脈ステント留置を行ってきた循環器内科医としてはもどかしい思いばかりでした。

ヨーロッパではCEマーク取得が非常に早いこと、当施設がCEマーク取得の治験を積極的に行っていることから、数多くの新しいデバイスに触れることが可能です。また新しいデバイスの使用や積極的な治療介入により、企業からの強力なサポートを得られたり、世界に情報発信を行えることも大きなメリットです。企業との関わりは賛否両論あるところだと思いますが、海外学会ではサポート企業の表彰が行われることでもわかるように、サポート企業を前向きに評価し、良好な関係を築いています。企業との不必要な癒着は大きな問題となりますが、企業のサポートは必要不可欠であると思っています。アンメットニーズにあたる当分野では特に必要性を感じます。

やや飛躍した目標となりますが、私の帰国後のテーマとして、デバイスの早期承認に向けた行政や企業への積極的な働きかけもひとつのテーマになるのではと考えており、ヨーロッパの制度の良いところを学んで帰りたいと思っています。

日本では現在、小児インターベンション学会(JPIC)が中心となり、HBD (Harmonization By Doing) for Childrenという、日本、アメリカ共同のデバイス治験プロジェクトが進行しており、今後のデバイスラグの解消が期待されます。

 

一方、現時点での日本の生きる道も少し考えてみます。

当カテーテルラボでは治療を主に行っているため、血行動態に関する詳細な検査はあまり行っておりません。血行動態の評価に関してはもっぱらMRIにその役割を委ねています。低侵襲検査に医療が傾く方向にあるために当然の流れかと思いますが、多くの血行動態評価をカテーテルで行っている日本では、それらのデータがたくさん蓄積されており、ひとつの武器になるのではと思っています。心不全分野やシャントを有する先天性心疾患の分野では、血行動態評価の重要性は依然として存在し、細かくデータ採りをしている日本ではこれらのデータを集積して報告していく意義があると思います。

またデバイスやステントサイズの選択に関しても、日本に比べこちらはやや粗雑な印象があります。日本の手技の特徴である、一症例ごと細かく検証している点を見直すべきであると思われます。これまでは上級医から直伝の手技として頭の中にのみ記載していたものを、構築して体系付けられれば、ガラパゴス化しがちな我々の技術が世界に認められるのではと思っています。

 

最後に、他の先生方も述べてらっしゃいますが、この留学により得た、先端施設との繋がりは非常に重要だと感じています。特に先天性心疾患の分野は狭い世界で、症例数も限られますので、横の繋がりを生かしてデータを産むことが重要かつ、比較的容易ではないかと思います。当施設のボスが電話で国際共同治験をまとめてしまっているのを目の当たりにしていますので、我々も今後、積極的に絡めるよう研鑽を積みたいと思います。