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川上大志(Melbourne, Australia)

川上大志(Melbourne, Australia)

Baker Heart and Diabetes Institute

2019年01月14日

【テーマ】2018-2019

システマティックレビューとメタアナリシス

皆さんこんにちは。

今回私は特定の論文ではなく、分野としてシステマティックレビューとメタアナリシスを取り上げたいと思います。なぜなら、私自身が正に今取り組んでいるからです! 一言でメタアナリシスと言っても様々な検討方法がありとても奥深い分野です。

【医療におけるシステマティックレビューおよびメタアナリシスとは?】

システマティックレビュー (Systematic review)とは、特定の臨床上の疑問に答えるために、あらかじめ明確に定義された手法に従って網羅的に知見(論文)を収集し、評価し、統合する方法です。

メタアナリシス (Meta-analysis)とは、特定の臨床上の疑問に答えるために、収集した効果指標の値を統計学的に統合する解析手法です。

つまり、メタアナリシスはシステマティックレビューの一部分と言えます。よって、システマティックレビューの中にはメタアナリシスを含むものもあれば含まないものもあります。例えば最近発表されたBrugada症候群患者に対するカテーテルアブレーションのシステマティックレビューでは数値の統計学的な統合は行われていません。そのため題名はシステマティックレビューだけになっています(Ablation strategies for the management of symptomatic Brugada syndrome: A systematic review. 第5回のKawakami’s Reviewに登場予定)[1]。

【目的と近年の傾向】

最大の目的はエビデンスを強化することです。有名なエビデンスのピラミッドの頂点に君臨するのが無作為化比較試験を集めたメタアナリシスです。ある治療に対する既存の無作為化比較試験の結果がお互いに矛盾している場合や、対象となる疾患の頻度が少なく十分な症例数での検討が難しい場合などで有効です。近年Evidence-based medicineの考え方が普及するに従い爆発的に論文数が増えています。根性と時間があれば費用をかけずに誰でも挑戦できることも急増している理由の1つでしょう。

図1

図1. PubmedでMeta-analysisを検索した結果。急増中です!

【実践する際の注意点】

システマティックレビューおよびメタアナリシスを行うことで強力なエビデンスの構築が可能となりますが、反面、適切な方法で行われなかった場合は誤った結論を導いてしまう恐れを含んでいます。そのため、一定の基準に準じて行われる必要があります。この基準としてPRISMAのチェックリストが有名です[2]。また大変競争が激しく、それぞれの研究者が先を争って行っている状況ですので、最近では臨床試験におけるUMIN事前登録のように、システマティックレビューを行う前にPROSPEROというレジストリーに登録をすることが推奨されています(https://www.crd.york.ac.uk/prospero/)。登録にはそれなりの準備と労力を伴いますが、自分のアイデアがすでに誰かに先を越されていないか確認できますし、登録しておけばこのトピックスは私がやってますよというアピールにもなります。詳しい実践方法はとても書ききれませんので、教科書等をご参照ください。

【システマティックレビューおよびメタアナリシスのいろいろ】

1. 治療効果を検討する

図2をご覧ください。これは心不全を合併した心房細動患者に対するカテーテルアブレーション治療の有効性を検討したメタアナリシスの結果です[3]。無作為化比較試験を収集して総死亡のリスク比を統合しています。結果は心房細動アブレーションが心不全患者に有効であることを示しています(リスク比 0.52、95%信頼区間 0.35-0.76、I²=0%)。このような治療介入の是非を検討したメタアナリシスが最も有名ですが、他にも様々なメタアナリシスが存在します。

図2

図2. メタアナリシスの1例(文献3より)。

2. 検査方法の比較

図3は私のボスが以前に行ったメタアナリシスです[4]。心疾患患者の予後予測のゴールドスタンダードであるLVEFと新規指標である左室ストレイン(GLS)のどちらが有効であるかを検討したものです。結果としてGLSの予測能がLVEFを上回ることが明らかになりました。このように結果の収集と統合は治療効果判定以外にも利用できます。

図3

図3. (文献4より) LVEFおよびGLSが1SD増加する際の全死亡に対するハザード比を統合し比較しています。

3. 基準値等を求める

基準値、いわゆる正常値を求める試みも行われています。例えば左房ストレインの正常値はガイドラインにも記載はありません。なぜなら、健常者を主対象にストレイン値を測定した大規模な研究は存在しないからです。それぞれの研究毎に疾患群との比較対象として少数例の健常者データが記載されているのが一般的です。そこでメタアナリシスの出番です。下記のメタアナリシスは健常者のストレイン値だけを収集、統合して健常者の左房ストレイン値を求めています[5]。まさにメタアナリシスの意義が存分に発揮されています。

図4

図4. (文献5より) 健常者の左房ストレイン値を統合して求めています。

【最後に】

実際に携わってみるとその奥深さや面白さがよく分かります。また膨大な数の論文を、その質まで真剣に吟味しながら読み込む必要がありますので、論文読解能力が飛躍的に向上するという嬉しい副産物もあります。私自身のプロジェクトのゴールも見えてきていますので、できるだけ早く皆様に見て頂けるよう引き続き頑張ります。

【参考文献】

[1] Gilson C. Fernandes, et al. Ablation strategies for the management of symptomatic Brugada syndrome: A systematic review. Heart Rhythm 2018; 15: 1140–1147.

[2] Moher D, et al. Preferred reporting items for systematic reviews and meta-analyses: the PRISMA statement. PloS Med 2009; 6: e1000097.

[3] Yingxu Ma, et al. Catheter ablation for treatment of patients with atrial fibrillation and heart failure: a meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Cardiovascular Disorders. 2018; 18: 165-172.

[4] Kalam K, et al. Prognostic implications of global LV dysfunction: a systematic review and meta-analysis of global longitudinal strain and ejection fraction. Heart 2014; 100: 1673–1680.

[5] Faraz Pathan, et al. Normal Ranges of Left Atrial Strain by Speckle-Tracking Echocardiography: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Am Soc Echocardiogr 2017; 30: 59-70.

 

番外編: 夫もしくは父のわがままに振り回された家族の留学奮闘記

第5話「英語に対する不安」

留学半年前 (長男4歳3ヶ月)

長男 「・・・ぼく、英語できないけど、大丈夫かな?」

父 「・・・大丈夫! すぐにしゃべれるようになるよ・・・(無責任な励まし)」

その2週間後

長男 「お父さん、ぼく、公文で英語したい!」

父 「!!!!!いいよ、いいよ!!!!!」

※子供ながらに不安を感じていたのでしょう。国語の勉強のために通っていた公文に英語クラスがあると知って自主的に英語の勉強がしたいと言ってきました。この自主性には本当に感動しました!!

図5

写真: 彼の努力の結晶(人生初の試験合格証)。しかし、彼にはこの時には想像もつかない過酷な試練が待ち受けているのでした・・・

つづく