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from Overseas

小暮智仁(London, UK)

小暮智仁(London, UK)

St Thomas's Hospital & Evelina London Children’s Hospital

2019年01月14日

【テーマ】from Overseas

今年もTPVR推しです。

皆様、明けましておめでとうございます。人生初の紅白歌合戦も、箱根駅伝も無い、新年を迎えています。ロンドンでは大規模なNew Year’s Eve Fireworksがあり、カウントダウンからの「Happy New Year !!」+ 花火を経験しましたが、「ゆく年くる年」を見ないとなんだか年が明けた気がしない、The 日本人の私です。

New Year's Eve fireworks London

New Year’s Eve Fireworks London

さて、今回、私が現在取り組んでいるテーマについて述べさせていただきますが、これまでのレポートでもご存知の通り、先天性心疾患です。さらに例により経カテーテル肺動脈弁留置術(Transcatheter Pulmonary Valve Replacement: TPVR)に関してと大変マニアックな点をご了承ください。

テーマ: Venus P Valveのステント損傷(stent fracture: SF)発生率と要因に関して

対象とする基礎心疾患はファロー四徴症を中心とした、右室流出路狭窄を有する疾患です。幼少期の右室流出路拡張手術(右室流出路再建術)後の肺動脈弁の欠如や変形、経年変化による劣化等に伴う肺動脈弁逆流(+/-狭窄)を治療対象としています。

治療そのものの詳細は第3回のレポートをご参照いただくとして割愛させて頂きます。

現在まで、数種類デバイスにより経カテーテル肺動脈弁留置術が行われてきており、治療後のSFが25%前後発生することが分かっています(1,2)。また、SFが再インターベンションの最たる事由と報告されています(3,4)。これまでに報告されているSFの危険因子は既往手術の人工導管の径や、右室流出路狭窄、pre-stentingの有無などが挙げられています(5,6,7)。

これまでの報告の多くはホモグラフトやゴアテックス等による人工導管に対する治療結果で、今回、私の研究対象とするデバイスはVenus P Valve (8)という自己拡張型肺動脈弁デバイスで、これまでカテーテルでは治療が困難であった、高度に拡張した自己右室流出路(主に自己肺動脈弁温存術後症例)が対象となり、これまでの研究結果とは異なったデータ蓄積となります。

現在Venus P Valveの国際共同研究が進行中で、全症例に術前、術中、治療後6ヶ月時の透視撮影が行われています。その内の当院の症例からSFの発生率と、その原因について調査しています。研究のなかでは特に、右室流出路の心拍変動による影響に注目しています。PCIの領域でもhinge motion部など心拍による動きの大きい部位はSFが憂慮されますが、右室流出路も同様で収縮期、拡張期の変化や伸展、屈曲が大きい部分です。TAVIのSF率の低さと比較すると、左室流出路(大動脈弁)と右室流出路(肺動脈弁)の構造的な違いは明らかです。

症例の蓄積、フォローアップが進行中ですので、詳細は報告できない現状にありますが、現在までのデータに限定すると、術前の右室流出路計に比較して大きいサイズのデバイス使用と、拍動による短軸方向の収縮が大きい症例にSFが多い傾向があることが示されています。またSFはほぼ全ての症例で右室側にあたるステント下端部に発生しています。今後症例が揃えば、デバイスサイズ選択やSFの予測に有用な情報になるのではと期待しています。

右室流出路の心拍変動

右室流出路の心拍変動

Stent Fracture症例

Stent fracture症例

今後、注目しているトピックは重症心不全に対する心房中隔孔形成術(ASD creation)と、経カテーテル三尖弁治療です。

ASD creationに関しては、まとまったデータは無く、ECMO装着などの超重症患者や、拘束型心筋症患者での前向きな結果が少数あるに過ぎません(9,10)。しかし、ASD閉鎖を行っている術者としては、拡張障害型心不全の治療にASD creationがあるとすれば、高齢者に対する二次孔欠損型ASDに対する閉鎖治療はどこまでが、善で、どこからが悪となるのか(本当に悪があるのか)を見極める必要があると思っています。

三尖弁治療は、当院でも昨年数例経験しましたし、すでに多くの報告がなされ、また昨年末にJACC intervention誌から経カテーテル三尖弁治療に関するまとまった良好な経過報告(11)が出ていますので、注目しています。JACCの報告はCrip(三尖弁に使用)、弁置換(Transcatheter Tricuspid Valve Replacement)や弁輪バンドなど様々なデバイスを全て集めて評価しているため、どの治療が適切かなど未解決な問題はありますが、今後カテーテル治療の拡大がさらに期待されます。また、高齢者を相手にする循環器内科医としては、介入が必要でも踏み切れない三尖弁逆流患者の多さは痛感するところですので、今後の低侵襲治療の発展に注目です。

 

参考文献

  1. Khambadkone S, Coats L, Taylor A, et al. Percutaneous pulmonary valve implantation in humans: results in 59 consecutive patients. Circulation 2005;112:1189–97.
  2. Hill K,Goldstein B,Angtuaco M et al. Post-market surveillance to detect adverse events associated with Melodyvalve implantation. Cardiol Young. 2017 27:1090-1097.
  3. Lurz P, Coats L, Khambadkone S, et al. Percu- taneous pulmonary valve implantation: impact of evolving technology and learning curve on clinical outcome. Circulation 2008;117:1964–72.
  4. McElhinney DB, Hellenbrand WE, Zahn EM, et al. Short- and medium-term outcomes after transcatheter pulmonary valve placement in the expanded multicenter US Melody valve trial. Circulation 2010;122:507–16.
  5. Nordmeyer J, Khambadkone S, Coats L, et al. Risk stratification, systematic classification, and anticipatory management strategies for stent fracture after percutaneous pulmonary valve implantation. Circulation 2007;115:1392–7.
  6. McElhinney DB, Bergersen L, Marshall AC. In situ fracture of stents implanted for relief of pulmonary arterial stenosis in patients with congenitally malformed hearts. Cardiol Young 2008;18: 405–14.
  7. Cabalka, AK,Hellenbrand WE, Eicken A, et al. Relationships Among Conduit Type, Pre-Stenting, and Outcomes in Patients Undergoing Transcatheter Pulmonary Valve Replacement in the Prospective North American and European Melody Valve Trials. JACC Cardiocasc Interv 2017 11;10(17):1746-1759.
  8. Promphan W,Prachasilchai P,Siripornpitak S, et al. Percutaneous pulmonary valve implantation with the Venus P-valve: clinical experience and early results. Cardiol Young 2016; 26, 698–710
  9. Bauer A, Khalil M, Lüdemann M, et al. Creation of a restrictive atrial communication in heart failure with preserved and mid-range ejection fraction: effective palliation of left atrial hypertension and pulmonary congestion. Clin Res Cardiol 2018; 107:845–857
  10. Kaye D, Shah SJ, Borlaug BA, et al. Effects of an interatrial shunt on rest and exercise hemodynamics: results of a computer simulation in heart failure. J Card Fail 2014; 20:212–221
  11. Taramasso M, Alessandrini H, Latib A,et al. Outcomes After Current Transcatheter Tricuspid Valve Intervention: Mid-Term Results From the International TriValve Registry. JACC Cardiocasc Interv 2018; 21. pii: S1936-8798(18)32130-7. doi: 10.1016/j.jcin.2018.10.022. [Epub ahead of print]