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from Overseas

2019年03月16日

from Overseas

遠隔モニタリングを用いた間欠的抗凝固療法の試み

これも一種の「オーダメイド医療」と言えるのかもしれません。遠隔モニタリングとDOACの利点を最大限に活用した間欠的抗凝固療法の試みをご紹介いたします。

Intermittent anticoagulation guided by continuous atrial fibrillation burden monitoring using dual-chamber pacemakers and implantable cardioverter-defibrillators: Results from the Tailored Anticoagulation for Non-Continuous Atrial Fibrillation (TACTIC-AF) pilot study.

Waks JW, et al.

Heart Rhythm 2018; 15: 1601–1607. [1]

【背景】

心房細動(AF)の持続期間や頻度に関係なく、血栓塞栓症の危険因子を有するAF患者には絶え間ない抗凝固療法が推奨されている。ペースメーカ(PM)や植込み型除細動器(ICD)を用いた継続的な調律モニタリングと直接経口抗凝固薬(DOAC)を使用することで、AFが生じた時のみ抗凝固を行うことが可能かもしれず、血栓塞栓症リスクを増加させることなく出血リスクを減らすことができるかもしれない。

【目的】

本研究の目的は、デュアルチャンバーPMもしくはICDを用いた継続的な遠隔AFモニタリングを指標にした間欠的DOAC使用の実現可能性および安全性を評価すること。

方法

対象患者:次の条件を全て満たす患者を対象にした。

1. 18歳以上でSt. Jude Medical社製のデュアルチャンバーPMまたはICD植込みが施行されている。

2. 少なくとも1回以上AFが心電図もしくは心内電位で確認されている。

3. CHADS2スコア≦3。

4. 登録前に少なくとも30日間DOAC内服が可能であった。

5. AF頻度が希である。前述の30日間に6分以上持続したAFイベントを認めず、かつ、1日のAFバーデンが30分未満。

除外基準: 脳梗塞/TIAの既往、永続性AF、抗凝固療法が禁忌、ワルファリンを使用、抗凝固療法の中断が難しい病歴、重度の動脈硬化、妊娠中もしくは妊娠予定がある、余命予測が12ヶ月未満。

登録基準を満たした患者を、モニタリングを指標にした間欠的抗凝固療法群と一般的なDOAC治療(継続して服用)を行う対照群に無作為に割り付けた。

図1

図1. (文献1より引用): 患者割り付け

遠隔モニタリングを指標にした間欠的抗凝固療法:

モニタリング方法:  定期のデータ送信は2週間毎。下記に設定したAFバーデンを超えた場合はアラートが送信される。また、患者自身によってもデータ送信は可能(動悸の自覚など)。

抗凝固療法の方法: 6分以上持続するAFを認めず、かつ、1日の総イベント時間が6時間以下の日が30日間連続した患者はDOACを中止した。この設定を超えるAFイベントを認めた場合はDOACを継続もしくは再開した。

図2

図2. (文献1より引用): 間欠的抗凝固療法。1回の持続時間と合計持続時間の両方を考慮している。6分未満の短いAFでも頻発して6時間/日を超えればDOACは継続、中断していた場合は再開となる。

【結果】

最終的に48人が間欠的抗凝固療法群に、16人が対照群に割り付けられた(表1)。

表1

表1. (文献1より引用): 患者背景

DOAC使用期間:

間欠的抗凝固療法が行われた48人の総モニタリング期間は14,826日(平均309日)であった。そのうち、DOACを使用した期間は3,763日であり、通常通りのDOACを継続した場合と比較して使用日数は74.6%減少した(表2)。

表2

表2. (論文1より引用): DOAC使用日数およびAFイベントの詳細

有害事象:

試験期間中に間欠的抗凝固療法群48人において、6件の有害事象が観察された(表3)。3件の出血イベントが確認され、うち2件は小さな消化管出血(2件ともDOAC使用中)、1件は致命的な脳内出血(DOAC中断中)であった。失神を含む8件の神経学的イベントの可能性が考えられる症状が確認されたが、明らかな塞栓性脳梗塞/TIAは全く確認されなかった。試験期間中に2名が死亡、1例は前述の脳内出血(DOAC中断中)、1例は肺炎(DOAC使用中)が原因であった。

表3

表3. (論文1より引用): 間欠的抗凝固療法群に生じた有害事象の詳細

一方、対照群16人において、3件の有害事象が確認され、うち2件は小さな鼻出血であった。

表4

表4. (論文1より引用): 対照群に生じた有害事象

※本試験は患者数が少なく両群の有害事象を比較検討するだけの検出力を持ち合わせていなかった。

結論

AF頻度が少なく、低~中程度の血栓塞栓症リスクのAF患者において、PM/ICDモニタリングを指標にしたDOAC投与は実行可能であり、それによって抗凝固療法を行う期間が75%減少した。本研究は有害事象を評価できるほどの検出力を持ち合わせていないが、有害事象はほとんど生じなかった。PM/ICDモニタリングを指標にしたDOAC投与は永続的な抗凝固療法に替わる現実的な治療法かもしれない。さらなる検討が必要である。

私見

遠隔モニタリングの進化と中断/再開が容易なDOACの登場が可能にした革新的な試みだと思います。私も常々疑問に思っていました。「半年に1回のAFに対しても同じリスク分類に応じて抗凝固療法を半永久的に内服し続けなければならないのか?少しやり過ぎではないか?」。この論文はその疑問に1つの答えを提示してくれたと言えます。自分の感覚が間違っていなかったと読み終わって嬉しくなったのですが、この論文に対するEditorial Commentaryの題名を見てはっと我に返りました。

“Device-guided anticoagulation in atrial fibrillation: Not yet ready for prime time”

Cheung CC et al.

Heart Rhythm 2018; 15: 1608-1610. [2]

そこには「時期尚早」とはっきりと書かれています。最大の理由は遠隔モニタリングを使用した抗凝固療法を検討した試験が今のところ非常に少ないためです。下表には間欠的抗凝固療法を検討した研究が挙げられています。5つの試験のうち、Zuernらの試験とREACT.COM試験はAFアブレーション後の患者を対象としていますので、純粋な意味で遠隔モニタリングを指標にした間欠的抗凝固療法の試みはわずか3つです(ピンクの四角内)。今回のTACTIC-AF試験とiCARE-AF試験は対象患者数がそれぞれ48人と58人であり、非常に少数例での検討になっています。

表5

表5. (文献2より引用一部改変): 間欠的抗凝固療法を検討した試験

唯一、IMPACT試験[3]が間欠的抗凝固療法を大規模に試みた試験です。この試験は心房リードが留置されたICDもしくはCRT-D植込み患者2,718人を対象にデバイスモニタリングを用いて間欠的抗凝固療法を試みたものです。結果は間欠的抗凝固療法の有益性が確認されず、2年で早期中止になりました。

図3

図3. (文献3より引用):  IMPACT試験における間欠的抗凝固療法。対象患者がTACTIC-AF試験より重症であり、その方法は非常に複雑。

図4

図4. (文献3より引用): IMPACT試験の結果。両群間に差を認めず。主要評価項目は血栓塞栓症もしくは重大出血イベント。

もちろん患者背景から使用している抗凝固薬も全く異なりますので(IMPACT試験ではワルファリン使用も含まれていた)、両者の単純比較はできませんが、Editorial commentaryの筆者はこの試験結果は十分考慮しなければならないと明記しています。

また、そもそも「デバイスで見つかる短時間のAF (Device-detected AF)が血栓塞栓症の直接の原因になりうるのか?」ということすら明確には分かっておりません。図5はIMPACT試験で血栓塞栓症を発症した29例のイベントとDevice-detected AFの時間的な関連性を見ています。ご覧の通り、必ずしもイベントの直前にAFが見つかる訳ではありません。AFが確認されたと言っても、実はイベントの後で見つかったという症例も含まれています。

図5

図5. (文献3より引用): IMPAC試験における血栓塞栓イベントと心内電位の経時記録。中央のオレンジの点線が血栓塞栓症を発症した時期を示す。灰色は心内電位モニタリング期間、その中の黒がAFイベントの記録。

Device-detected AFと血栓塞栓症との関連を調べた有名なTRENDS試験やASSERT試験のサブ解析でも「必ずしも血栓塞栓症イベントの直前にAFが見つかる訳ではない」ことが明らかになっています [4, 5] 。

実は私もDevice-detected AFに興味を持ち、日本人患者を対象に調べたことがあります [6] 。私が調べた範囲(PM患者343人)でもDevice-detected AFは塞栓症イベントに関連したのですが、下表の通り血栓塞栓イベントを認めた19人中、Device-detected AFを認めた患者は14人、直前30日以内にAFが記録された患者は8人だけでした(下表四角内)。

表6

表6. (論文6より引用一部改変): 日本人においても同様の結果であった

AF発症リスクと脳梗塞発症リスクはオーバーラップしていますので、「AFが起こりやすい」ということはAFの有無に関係無く「脳梗塞が起こりやすい」とも言えます。そのため、全てのDevice-detected AFが血栓塞栓症の直接の原因になっている訳では無く、一種のマーカーとしての役割を果たしているだけなのかもしれません。私の検討ではDevice-detected AFは全ての患者で血栓塞栓症と関連するのではなく、高リスクの患者(CHADS₂スコア>2)でのみ関連しました(図6)。デバイスでAFが見つかったから即抗凝固療法という訳にはいかないのが現状だと思います。

図6

図6. (文献6 より引用): Device-detected AF (AHREs)があっても全例で血栓塞栓症に関連する訳ではない

【おわりに】

遠隔モニタリングをAFスクリーニングに利用することに異論はないと思いますが、そのデータを指標に治療を行うためには、まだまだ解明しなければならないことが多いようです。この問題に関しては引き続き興味深くフォローしていきたいと思っていますし、私自身も同問題の解明に貢献していきたいと考えています。

【参考文献】

1. Waks JW, et al. Intermittent anticoagulation guided by continuous atrial fibrillation burden monitoring using dual-chamber pacemakers and implantable cardioverter-defibrillators: Results from the Tailored Anticoagulation for Non-Continuous Atrial Fibrillation (TACTIC-AF) pilot study. Heart Rhythm 2018; 15: 1601–1607.

2. Cheung CC et al. Device-guided anticoagulation in atrial fibrillation: Not yet ready for prime time”  Heart Rhythm 2018; 15: 1608-1610.

3. Martin DT, et al. Randomized trial of atrial arrhythmia monitoring to guide anticoagulation in patients with implanted defibrillator and cardiac resynchronization devices. European Heart Journal 2015; 36: 1660–1668.

4. Daoud EG, et al. Temporal relationship of atrial tachyarrhythmias, cerebrovascular events, and systemic emboli based on stored device data: a subgroup analysis of TRENDS. Heart Rhythm 2011; 8: 1416–23.

5. Brambatti M, et al. Temporal relationship between subclinical atrial fibrillation and embolic events. Circulation 2014; 129: 2094–9.

6. Kawakami H, et al. Clinical significance of atrial high-rate episodes for thromboembolic events in Japanese population. Heart Asia 2017; 9: e010954.