SUNRISE研究会

SUpporting youNg caRdiologISts projEct

from Overseas

黒田俊介(Shunsuke KURODA, Cleveland, US)

黒田俊介(Shunsuke KURODA, Cleveland, US)

Cleveland Clinic Foundation
Research fellow

2019年08月17日

【テーマ】2019-2020

CCFの業績

渡米して、1か月半が経過し、こちらの生活にも慣れてきたところです。

今回は、クリーブランドクリニック(The Cleveland Clinic Foundation: CCF)のこれまでの業績と、最近の結果をもとに今後のトレンドについてレポートいたします。

 

1. クリーブランドクリニックの不整脈グループの業績

2005年に当院からJAMAに掲載された多施設ランダム化比較試験では、発作性心房細動と診断された70例の患者を対象に、カテーテルアブレーション群と薬物治療群に1:1割り付けを行い、1年後の後のQOLがカテーテル治療群で優位に改善したことを示したものです(1) 。比較的少数例で行われた本研究ですが、今日の心房細動ガイドラインの治療適応の根拠となっており、その後のRAAFT-2などに引き継がれています。

当院は、2000年-2015年までの間に、10,000人以上の心房細動患者のカテーテルアブレーションを行ってきたhigh volume centerです。また、世界でも有数の心臓外科手術の施設である当院では、心移植やLVADの待機状態となる極めて低左心機能の症例や、心臓外科手術後の症例に不整脈が合併した症例も多く、最近ではそうした患者の不整脈診療のデータベースから多くの論文が出ています(2-5)。

心室性不整脈の領域に関しての論文は少なく、一方で、植込み型デバイスに関しては、植込み患者の増加に伴い、循環器の診療で重要性が増しているデバイス感染やリード抜去に関する論文も散見されます。今年は、当院からデバイス植込み時に用いられるantibacterial envelopeの感染予防効果を検証した多施設ランダム化比較試験の結果が、New England Journal of Medicineに発表されています(6)。

これらの多くのテーマは、心内心電図や3Dマッピングシステムなどの心臓電気生理を極めるための研究ではなく、(不整脈というより)循環器診療の中でのクリニカルクエスチョンに対する後ろ向き研究となっています。これは、一般循環器のフェローの持つクリニカルクエスチョンを不整脈のスタッフがサポートするという体制になっていることも大きな理由の一つだと思います。

近年は、iPhoneやApple watchでの心房細動の診断精度を12誘導心電図と比較した研究や(7,8)、アブレーション後の症状のフォローを対面ではなく自動化した質問表を用いてQoL測定行うなど、情報通信技術を活用した研究にも取り組んでいます(9)。

今年出された論文がオフィスの前に張り出されている

今年出された論文がオフィスの前に張り出されている

2. 最近の結果から

日本は言わずもがなですが、主要先進国では軒並み高齢化が進んでおり、それに伴って心房細動患者数も増大しています。アメリカでも、その数は増え続けており、2050年までには患者数は600万人に迫るとも推定されています。この膨大な数の患者をどのように層別化するのかは今後の大きな課題です。

CASTLE-AFでは、左室機能の低下した心房患者に対するアブレーションの有効性が示されました(10)。かつては、リズムコントロール=レートコントロールという関係でしたが、心房細動に対してリズムコントロールを行うことで、死亡や脳卒中などの転帰を改善しうる患者がいることは間違いありません。一方で、それほど重症な併存疾患のない「心房細動」をどのくらい治療すべきかには結論がでていません。多くの不整脈医が結果を待ち望んだCABANA trial※は蓋を開けてみれば、多くのクロスオーバーが発生しており、ITT解析では有意差がないもののper protocolでは差が見られたとする「グレーゾーン」となりました(11)。研究開始当初に予想しないほどカテーテル治療が普及したこともクロスオーバーの増加に影響していると考えられます。この研究結果は、侵襲的な治療の効果を大規模なランダム化比較試験で証明することの難しさを表しているといえます。

※未読という方は、川上先生のreviewも御参照下さい

今後、上記に紹介したスマートフォンをはじめとした様々なヘルスケアデバイスの登場で、不整脈の検出力は向上し、より多くの心房細動が検出されることが予想されます。推定されている心房細動患者はさらに増えるかもしれません。しかしながら、20年前の検出能で見つかった心房細動と、10年後の検出能で確認された心房細動は、「心房細動患者」として同じとは言えません。CHADS2などの既存のスコアすら当てはまらないかもしれません。2018年のCirculationには、AF burdenに関する総説が掲載されています(12)。心房細動の有り無しという2値変数ではなく、ある患者に対して任意の期間内で心房細動の占める割合を示すのが「AF burden」ですが、この重要性について記載されています。

概念自体は決して新しいものではありませんが、植込み型デバイスの小型化などの技術の進歩により研究の進む分野のように思われます。持続時間のカットオフ値の設定など、いまだ未解決の問題が多くあり、議論は続きそうです。

屋上から見えるダウンタウン

屋上から見えるダウンタウン

 

1.         Wazni OM, Marrouche NF, Martin DO, et al. Radiofrequency ablation vs antiarrhythmic drugs as first-line treatment of symptomatic atrial fibrillation: a randomized trial. JAMA. 2005;293(21):2634-2640. doi:10.1001/jama.293.21.2634

2.         Raeisi-Giglou P, Wazni OM, Saliba WI, et al. Outcomes and Management of Patients With Severe Pulmonary Vein Stenosis From Prior Atrial Fibrillation Ablation. Circ Arrhythmia Electrophysiol. 2018;11(5):e006001. doi:10.1161/CIRCEP.117.006001

3.         Abdur Rehman K, Wazni OM, Barakat AF, et al. Life-Threatening Complications of Atrial Fibrillation Ablation. JACC Clin Electrophysiol. 2019;5(3):284-291. doi:10.1016/j.jacep.2018.11.013

4.         Hussein AA, Panchabhai TS, Budev MM, et al. Atrial Fibrillation and Pulmonary Venous Electrical Conduction Recovery After Full Surgical Resection and Anastomosis of the Pulmonary Veins: Insights From Follow-Up and Ablation Procedures in Lung Transplant Recipients. JACC Clin Electrophysiol. 2017;3(6):559-567. doi:10.1016/j.jacep.2016.09.009

5.         Noll AE, Adewumi J, Amuthan R, et al. Atrial Tachyarrhythmias Among Patients With Left Ventricular Assist Devices. JACC Clin Electrophysiol. 2019;5(4):459-466. doi:10.1016/j.jacep.2018.11.016

6.         Tarakji KG, Mittal S, Kennergren C, et al. Antibacterial Envelope to Prevent Cardiac Implantable Device Infection. N Engl J Med. 2019;380(20):1895-1905. doi:10.1056/NEJMoa1901111

7.         William AD, Kanbour M, Callahan T, et al. Assessing the accuracy of an automated atrial fibrillation detection algorithm using smartphone technology: The iREAD Study. Hear Rhythm. 2018;15(10):1561-1565. doi:10.1016/j.hrthm.2018.06.037

8.         Bumgarner JM, Lambert CT, Hussein AA, et al. Smartwatch Algorithm for Automated Detection of Atrial Fibrillation. J Am Coll Cardiol. 2018;71(21):2381-2388. doi:10.1016/j.jacc.2018.03.003

9.         Hussein AA, Lindsay B, Madden R, et al. New Model of Automated Patient-Reported Outcomes Applied in Atrial Fibrillation. Circ Arrhythm Electrophysiol. 2019;12(3):e006986. doi:10.1161/CIRCEP.118.006986

10.       Marrouche NF, Brachmann J, Andresen D, et al. Catheter Ablation for Atrial Fibrillation with Heart Failure. N Engl J Med. 2018;378(5):417-427. doi:10.1056/NEJMoa1707855

11.       Packer DL, Mark DB, Robb RA, et al. Effect of Catheter Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy on Mortality, Stroke, Bleeding, and Cardiac Arrest Among Patients With Atrial Fibrillation: The CABANA Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321(13):1261. doi:10.1001/jama.2019.0693

12.       Chen LY, Chung MK, Allen LA, et al. Atrial Fibrillation Burden: Moving Beyond Atrial Fibrillation as a Binary Entity: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2018;137(20):e623-e644. doi:10.1161/CIR.0000000000000568