SUNRISE研究会

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from Overseas

中島孝(Takashi NAKASHIMA, Bordeaux, France)

中島孝(Takashi NAKASHIMA, Bordeaux, France)

Bordeaux University
Clinical fellow

2019年09月15日

【テーマ】2019-2020

À Rome, fais comme les Romains. ローマではローマ人のごとくせよ (郷に入っては郷に従え)

つい先日VISAを取得し再渡仏したので、ボルドーでの家族との生活は始まったばかりです。4歳の娘は、夏休み中はサマースクールに通っています。フランスの幼稚園は7月と8月が丸々2か月夏休みで、9月開始だからです。”習うより慣れろ”方式で、渡仏4日目から通わせました。時差ボケもあり、さっそくサマースクールで寝ていたそうです。まだ2週間足らずで、慣れない環境がストレスのようです。でも、少しずつフランス語も覚えてきて、友達もできているようなので、私自身は楽観しています。移民が多い社会的背景もあるのか、フランス語に疎い私たちに対しても、サマースクールの先生方はとても親切です。娘のために、日本語を調べてくれていたことには、感極まりました。
妻もボルドーの生活が性に合っているようです。のどかな風景と、ゴシック調の中世を彷彿とさせる伝統と由緒ある建物が作る街並み、共和の精神に基づく親切な人々がとても気に入っているようです。今は、朝娘をサマースクールに送り、夕方迎えに行っています。それまでは、家のことをしたり、街の散策をしたり、自分のこと?をしているそうです。夏休みが終わったら、フランス語の講習等に通いたいそうです。ただ渡仏間もなく、コミュニティーがまだないので、人恋しくなっているようです。妻のコミュニティー形成も私の目標です。「留学を成功させるためには、家族のケアを怠らないこと」という某先輩の教訓があるからではないですよ(笑)。

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ボルドーの中心地のブルス広場です。ボルドーの町全体が、”月の都ボルドー”として、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。

フランスのトイレ事情は、最悪で時々ネタにされますが、これは真です。町なかにトイレがない、あったと思ったら汚すぎて使えない。妻も、外出先の汚すぎるトイレで用を足すのは耐えられないようです。娘もおむつは卒業していますが、外出時は常に常備しています。外出先でトイレが見つかるという日本の常識が、フランスでは通用しません。

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町なかのトイレ。トイレの中も撮影したのですが、さすがに掲載ははばかれましたので外観のみです。
我が家の掟1: 外出前にトイレを済ませること
我が家の掟2: 外出先でまずトイレの場所を把握すること

ボルドーはとても治安が良いです。一説によると、日本のように席確保のために、カバンを椅子に置いても盗まれることはないそうです。これも私の経験上、真と判断しています(でもやったことはないです)。また先週、銀行のキャッシュカードを落としてしまったのですが、持ち主の私に銀行から電話がかかってきました。こんなことは日本以外では起こりえないと思っていたましたし、どことなく日本を彷彿とさせるデジャブ体験でした。

食事は、パンが主食で、ジャムやハム、パテなど塗るものを変えるという食文化です。肉やチーズなど、日本では見たことない種類がたくさんあり、楽しめます。もっとも私は、料理はできません。単身の3か月間は、食を楽しむ余裕もありませんでした。家族と再渡仏してからは、妻が現地の食材で、工夫を凝らして作ってくれるので、食の違いによる体調不良や、日本食を渇望することもなく過ごせています。

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とある日の我が家の朝食です。

気候に関しては、今は夏ですが、とても過ごしやすいです。日なたは陽射しが強く暑いのですが、木陰はとても涼しいです。ですので、日なたが30度を超えていても、屋内は涼しくて、エアコンは夏でも不要です。この夏、世界的ニュースにもなった熱波が、ボルドーを襲いました。この熱波の時はさすがに室内も熱気むんむんで、我が家では慌てて扇風機を買いにいきました。生まれて初めて経験する摂氏43度です。ニュースで報じられた”生命に危険を及ぼすレベルの熱さ”を経験できたので、これも”留学中の武勇伝”リスト入りです。余談ですが、ヨーロッパのエアコン普及率は5%未満だそうです。ボルドーも然り、我が家も然りで、エアコンなどありません。そして驚いたのですが、病室も然りです。なんと43度の猛暑で室内も35度越えなのに、病室にエアコンがないのです。フランス人の同僚に聞いたら、集中治療室等はエアコンが完備されているそうですが、一般病棟には完備されていないそうです。フランスではごく一般的だそうです。「それじゃあ、患者さんの病態は、さらに悪化するんじゃない?」と質したら、「for sure (間違いない)」という答えが返ってきました。

フランス人は、時間にルーズと言うこともできますし、マイペースということもできます。アブレーションに関して言うと、患者さんがカテーテル室に入室後に、心電図装着や消毒が終わったら術者が呼ばれる、というシステムのようです。しかし、清潔シーツがかけられてから穿刺まで、術者が来るのに1時間以上待つこともあります。しかしながら、患者さんは文句ひとつ言いません。時間に対して寛大なのかもしれません。

またVISA申請の必要書類取得の際に、フランスの価値観や社会構造たるものの縮図を垣間見たような気がします。第1回のレポートにも書きましたが、フランスの研究者ビザは、ホスト機関発行の受入れ協定書(Convention d’accueil)が必要です。この書類の取得がとても(x 100)大変でした。私と秘書さんが1年近くにわたり催促をしたのに一向に進まない書類手続きが、ボスに泣きついて頼んで、ボスが陣頭を執る(?)と、ほぼ一瞬で(2週間足らずで)取得できました。まさに”神風”がふいた感じです。フランスには、一つの書類手続きに、膨大な段階があるそうです。教授たるボスの、すなわち権力者の一声で事が進んだというところに、フランスの中央集権的な社会構造の一端を垣間見たような気がします。

私は、サピア=ウォーフ仮説の信者です。某ネット辞書によりますと、「言語そのものが、価値観形成に影響を与えうる」という仮説だそうです。「言語の違いが、価値観の違いを生む。価値観形成は、言語の影響を受ける」というのが、無知な私の勝手な解釈です。飛躍しすぎかもしれませんが、「かの国の文化、価値観を知ろうとするか?ならば言語を知れ」というのが持論です(誰かの言葉だったかもしれません)。英語圏への留学であれば、英語を勉強するのですが、私の留学先はフランスです。フランスでも上手な英語で話すことは、正確な情報伝達として有効でしょう。しかし、たとえ下手でもフランス語でコミュニケーションを図る努力をする方がコミュニケーションたり得る、というのが持論です。もちろんフランス語をマスターすることなどできるとも思っていません。ほんのわずかでもフランス語を学ぶことで、現地の人々の価値観、文化を知ることができる、しいては留学生活に影響しうる、というのが私のhypothesisです。非英語圏において、現地の言語習得を目指すことが、医師の留学生活と研究にどのように影響を与えるか。これは私の専門分野とは無関係の一種のprospectiveな実験です。留学後にconclusionを出すつもりです。