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from Overseas

清家史靖(Fumiyasu SEIKE, New York, US)

清家史靖(Fumiyasu SEIKE, New York, US)

CRF, Columbia University
Research Fellow

2019年11月10日

【テーマ】2019-2020

日本の医療を米国で考える

皆様、こんにちは。CRFの清家です。

米国はちょうどハロウィンで盛り上がったところです。また、紅葉の季節になり、だいぶ寒くなってきました。写真は昨日子どもたちと遊んだ近所の公園です。今は、夏が終わり、それほど寒くもなく、過ごしやすい季節になっています。

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今回は日本の医療に関する話題をいただきましたので、私の感じていることを書かせていただきたいと思います。

 

① 外の世界を見たからこそわかる日本の問題点、もしくは誇るべき点

我々はカテーテル室での業務があるため、幸い定期的にアメリカの医療を病院内で見ています。しかしながら、限られた状況の業務しか見ておらず、さらにコロンビア大学での治療という特殊とも言える状況のみの経験です。また米国で医師として臨床業務を行っているわけではありません。幸い私も家族も大きな病気をしておらず、アメリカでの医療を経験しておりません。米国に居住しても、俯瞰して日本の医療を見つめ直すということは案外難しいのですが、私がこの5ヶ月で感じたこと・考えたことを記載させていただきます。

 

日本の問題点

1. 業務過多

私の知っている範囲で、米国の循環器のカテーテル領域では、PCIオペレーターは基本、外来とカテーテル治療を行い、一般循環器や心不全の治療、病棟管理は行っていません。研究と臨床を行っている医師もいますが、大学病院では、教育、臨床、研究、アルバイト、病棟管理、日中業務の後の当直、そしてその翌日業務まで行っている医師はいないと思います。このような中で、日本の医師はよく働き、研究を行っていると改めて感じました。日本の医師の業務は過多になっていると言わざるを得ないと思いますが、医療制度自体の問題もありますし、医療費が全く米国とは違います。さらに国力や人口動態の問題もあるので、なかなかすぐにこれが改善されることは難しいのかもしれません。

そして、主治医制というのが大きな違いです。よく議論になっていますが、24時間365日患者さんの状況に拘束されている事は、長時間労働+医師のストレスの主要な原因になっていると思われます。主治医制の良さもありますし、議論の尽きない点だと思います。みなさん、主治医制に関してどのように思われますか?

2. 医療の分散化

CRFには中国人のフェローがおりよく話をします。中国の病院が非常に大きいことは、皆様よくご存知だと思います。同じラボの先生の病院は年間7000件のPCIを行っているようです。日本に多い年間150-300件ほどの病院のカテーテル治療であれば、1-2週程度で行われてしまいます。研究を行うという点では、数というのはどうしても必要となっており、海外以上に日本では多施設試験が必須になっているように感じられます。また医療の効率化という点でも、理論的には医療の集約化が望ましいと思われますが、特に地方においてはその解決は難しい問題かもしれません。

 

日本の誇るべき点

逆に良い点としては、カテーテル治療医が一般の循環器治療も普段から行っているため、治療のバランスは日本の方が取れているのではないかと思うこともあります(日本人からみたバランスなので、世界の標準とは限りませんが)。これは、上述した主治医制の良さがあるのだと思われます。また、渡米前は米国の治療は標準化している印象がありましたが、私の見ている限りは日本のカテーテル治療の方が均質で、術者による手技・考え方の違いは米国のほうが大きいように感じられます。

また、単純に手先は日本人のほうが器用に感じます。指の先で重みを感じて、その感触に従って繊細にワイヤーを動かす、という作業は日本人(東アジアの人)の優れた点ではないでしょうか? 日本人は基本的に職人気質であり、自分の感覚を含めた技術を高める事を好む事もあり、手技自体は日本の方が繊細に行われていると思います。

こういった点は、逆にEBMという点がやや育ちにくい背景となったのだと思います。しかし、現在行われている欧米のEBMを取り入れ、日本人の器用さを活かしている現状は、患者さんへの治療としてはbestなのだと思います。ただし、EBMの発信という点では課題となっているのだと思います。

 

② ディベート/プレゼンテーション能力についての比較

まずこれに関しては、英語力が全く追いつかないため、少なくとも私の能力は全く足りないと言わざるを得ません。

また、一般的に日本人はディベートやプレゼンが苦手だと言われていると思います。しかし、言語的な問題を除けば、言われているほどは変わらないのでは~と思っています。我々と同世代以下の先生は、毎月、あるいは毎週のように研究会・学会で発表、議論をしているので、かなりなれているのではないでしょうか? しかし、発表者以外のプレゼンでの姿勢というか、積極性は見習うべきだと思っています。いわゆる身内の研究会では日本人は積極的に発言しますが、オープンな場所では、やや消極的になりがちかもしれません。

特にディベートになると語学力の点からは難しいこともありますが、予め準備ができるプレゼンであれば、メッセージを届けることができると思います。そして、その内容に相手が面白いと思ってくれれば、その後もゆっくりこちらに合わせて話をしてくれると思います。語学力は大事ですが、それ以上に基本的な知識、研究をしている内容が重要だと思います。

 

③ 日本(人)はどう見られているか

NYCにはいろいろな人達がいるので、一概に彼らがどのように思っているのか述べるのは難しいと思います。子供の学校で親同士の会話をすることもありますが、少なくとも私にあわせてゆっくりと話してくれる人に関しては、日本に対しては好意的に話してくれます。

市場としての規模の相対的な低下が、日本の大きな問題になっていると思います。また、その中で極東に位置する日本は、市場の特殊性もあり、その相対的な重要性も同様に低下していっていると言わざるを得ない状況にあると思います。しかしながら我々の職場では、前原先生が礎を築いておられ、IVUS/OCTに関してはいまだに世界のシェアの40-50%が日本であり、世界最大の市場です。この分野においては日本も、日本人も重要だと思われていると考えます。

 

あまりまとまりのない話になってしまいました。今米国に来て、5ヶ月弱になります。米国から見た日本を考える事よりも、米国に適応することに多くの時間を費やして来ました。また、これから少し余裕のできる一年後には違う考えを持っているのかもしれません。日本に帰りましたら、また日本の先生方とお話をさせていただければと思います。

 

Cardiovascular Research Foundation

清家 史靖 拝