SUNRISE研究会

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from Overseas

黒田俊介(Shunsuke KURODA, Cleveland, US)

黒田俊介(Shunsuke KURODA, Cleveland, US)

Cleveland Clinic Foundation
Research fellow

2019年12月15日

【テーマ】2019-2020

想定内のことと、それ以上のこと

今回のレポートでは、異文化のハードルというテーマでレポートします。渡米前に多くのハードルを想定してきましたが、実際に5か月ほど経過した時点での、私たちの挑戦を阻む可能性のある諸々のハードルについてお伝えしたいと思います。今のところ、想像していたものとそこまで大きくは変わってはいませんが、より実感を伴っている分、以前と今では多少違うかもしれません。
私たちの挑戦に影響するのは、お金、家族の将来(私だけの人生じゃない)、上司・同僚との関係性(語学の問題を含む)になるのかなと思っています。
<給与に関して>
金銭事情は多くの留学者を悩ませる問題ですが、実際に留学をしてみると予想以上にシビアな問題であることがよく分かりました。純粋に、貯金の減り具合が半端ではありません。心の準備はしていたつもりですが、やはり焦ります。また、研究留学する際、アメリカ合衆国の入国は、最低限の経済的補償を必要とするようになってきているようです。所得がない場合にはビザが下りなかったりするらしいので、初年度は無給+日本からの奨学金 or 日本からの給与などで、次年度から給与交渉をしたり米国でのグラントに応募したりするということも聞きました(制度を確認していないので、多少間違っているかもしれません)。研究者の最低限の賃金を補償する流れは米国人の雇用を守る上でも重要なので、今後も続くのではないかと思います。逆に言えば、留学者にとっては、本人が無給でも良いと思っても、そこがネックになってくるかもしれません。
私の働くクリーブランドクリニック(CCF)では、例外があるものの、給与をもらっている場合が多いようです。ある程度は施設としてリサーチフェローへの給与金額が決まっているのかもしれません。今のところ給与交渉できるかは未知数ですが、先立つものがなければ途中で帰国せざるを得ないこともあるわけで、交渉で上がるならばと考えてはいます。
<家族に関して>
異文化のハードルを感じるのは、自分よりも家族であるかもしれません。
私の場合、家族は妻と子供がいますが、当初は単身での留学を考えていました。非常に悩んだ末、最終的に数か月後に家族もこちらに連れてくるという選択をしています。以前のSUNRISEの鳥居先生のレポートにもありましたが、留学をした場合に、家族が新しい環境になれるのは容易ではなく、通常は勤務しない配偶者や家族はなおさらです。実際に、CCFに赴任した日本人留学者の中にも家族が上手く適応できずに、短期間での帰国を余儀なくされた先生もおられます。私は留学前に何人かの先輩から留学経験について意見を伺い、聞く範囲では「家族を連れて行って良かった」派が過半数を占めていましたが、個人的には必ずしも連れてくることが万人にとって正解とは限らないと思っています。
とは言え、私も最終的に家族を連れて渡米する決断をしたわけですが、もし留学を考えている読者がいるならば、そんな私の単身渡米だった時期の状況をお伝えできれば少しは参考になるんじゃないかと思います。
・家族とのコミュニケーション。渡米前は、テレビ電話で通話可能なので、コミュニケーションは取れるだろうと思っていましたが、クリーブランドと日本の時差が13時間(サマータイムが終了すると14時間)、この時差は、特に子供が起きている時間や業務等を考慮すると連絡を取れる時間帯が意外と限られていました。
・所得。私の場合は、妻も働いていたので、仕事を辞めてくるのは、金銭面や彼女自身のキャリアにとってはデメリットでした。単身の時期は、経済面での心配は最小限ですが、一方で、家族のことを考えると単身で長くはいられないと思いました。家族連れでは、当然生活費も変わりますし、海外生活を続ける・帰国後のことも考えると、不安がないとは言えません。
・時間。自分の仕事に費やす時間は明らかに変わります。もし短期間限定で来るのなら、中途半端になるよりも、仕事のみにフォーカスするというのも一つの考え方だとは思っていました。そもそも、家族と過ごしつつ、仕事をこなし、語学やその他の勉強もできるほど、自分が器用な人間ではないと思っていたのもありました。
<評価・コミュニケーション>
 ボスから評価されているかは、極めて重要なのですが、私の仕事場は周りがほとんどイメージングの研究者ということもあり、比較が難しいところです。はたして自分がボスにどのくらい評価されているのかよく分かりません。ただ、現在取り組んでいる研究は、カテーテルアブレーション治療経験を必要とするものですが、そこに関して言えば、自分のelectrophysiologistとしての経験を(ある程度は)買ってくれているのかなと感じます。それでも、何か反論された場合に、語学の問題が故にニュアンスを伝えられない・くみ取れないというのは大きなストレスになっています。幸いなことに、今のところはボスから「(語学で苦労するのは)目標を達成する過程の一つだから」と言ってもらっていますが、この失効猶予期間がいつまでも続くわけではありません。相手に自分を理解してもらったり、自分の能力を発揮するためにも、語学力というのはあるに越したことはないので、留学後も普段の仕事や生活とは別に語学学習は継続しています。
 また、研究者としては、与えられた仕事を早く正確になるなどの積み重ねを地道に行っていくしかありません。多くの先生方が過去にレポートされていた通り、与えられた仕事を確実に遂行して、できるだけ+αを加えるようにすることが、評価を得るための近道といえるのでしょう。これは結局、日本でも留学先でも変わらない不偏的なものですね。
 またコミュニケーションでいえば、上記の通り、私のデスクの周囲には心エコーやその他のイメージングの研究者はいるものの、不整脈を専門にする研究者はいません。それもあって、何かちょっとしたことを質問したり、協力しあったりするような関係を築くのは難しいのかなと感じています。こうした環境になるだろうということは、ある程度予想してここに来ましたが、仕事上の意見や悩みを共有できる仲間がいるというのは、自分のモチベーションにもなるのでしょうから、近くの心エコーラボのメンバーを見て羨ましく思うことはあります。
<私の挑戦の今後の展望>
 CCFは、循環器・心臓外科の領域では全米で1,2を争う施設であり、臨床・研究いずれにおいても世界でも有数のセンターです(ちなみに、CCFは一般企業を含めてもオハイオ州で最大規模の企業だそうです)。多施設共同研究の主幹病院となっていることも稀ではなく、そうした環境で研究を長く続けることができるのならば確かに魅力的なのですが、常勤スタッフになるなど、よほどのことがない限り、誰かに下駄をはかせてもらって研究している状況からは抜け出せないとも思います(常勤スタッフにならない限りPIとして、研究を行うことができません)。
あくまで自分の目標は、ここで学んだことを日本に帰ってからも継続的に実行できるようにする事ですので、今のところは「2年間で行けるところまで行く」という当初の予定は変わっていません。

とりとめのない文章になりましたが、誰かの役に立てば幸いです。

11月半ばの様子ですが、すっかり寒々しい風景になりました。

11月半ばの様子ですが、すっかり寒々しい風景になりました。