SUNRISE研究会

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from Overseas

中島孝(Takashi NAKASHIMA, Bordeaux, France)

中島孝(Takashi NAKASHIMA, Bordeaux, France)

Bordeaux University
Clinical fellow

2020年03月22日

【テーマ】2019-2020

前人樹を植えて後人涼を得    ことわざ

みなさんこんにちは。いよいよ最後のレポートとなりました。
今までは留学生活が1か月、6カ月、1年と足し算してカウントアップしてきました。しかしふと気が付くと、最近は自然と留学はあと1年、来月になるとあと11か月と、留学終了までのカウントダウンを始めている自分がいます。何がそうさせるのでしょうか。焦りでしょうか。

これまで読んでくだった方々、ありがとうございます。私の勝手ですが、読んでくださる方々の存在を意識することが、このレポートを綴る際のモチベーションでもありました。私にできることがあればいつでも連絡ください。

今回は、過去1年の総括とこれからの1年への抱負に思いを馳せてみたいと思います。

 

留学前と留学初期の関心事
・VISA取得できるのかなあ?

・・・生活、論文、言語、現地ドクターとのコミュニケーションは二の次・・・

現在の関心事
・論文書けるかなあ?

・・・生活はなんとかなった。言語、現地ドクターとのコミュニケーションは、別の意味で二の次。論文書けるなら言語スキルはどーでもよい。論文執筆が唯一のコミュニケーション手段ではないか?

留学前に予想すらしていなかったこと
・予想をはるかに超えた放置プレイだった。
・朝から晩までデータ収集や論文執筆のための時間かと思っていたが違った。アブレーションに立ち合ったりで、予想以上に体の拘束と時間の制約があった。論文執筆、データ整理の時間は留学前と同様に日常業務の終了後(もしくは開始前)であった。

私はそもそもVISAを取得できずに留学を開始しました。ですので留学初期はVISAを取得できるのか、留学を継続できるのかが唯一最大の関心事でした(第1回および第3回参照ください)。今となっては不眠症にまでなったその頃が懐かしいです。精神科医なら、当時の私の顔を見ただけで、うつ病と診断したことでしょう。

今は一刻も早く論文を仕上げることが目標です。この点に関しては、research論文がようやく1本完成し、何とか日の目を見そうです。ただ正直言いますと、留学半年ほどで初めの1本を書くつもりだったので、当初の予定と比べると大幅に遅れています。「時間、ストレス、コストはすべて見積もり時の2倍かかる」との某経営者の箴言を地で行くことになったようです。

留学当初の目標も今の目標も、”論文を書くこと”で共通しています。ただ明らかな違いがあります。留学初期の目標は”漠然”と”論文を書くぞ”と思っていました。留学初期は”放置プレイ”もあり、どんなテーマでどのように論文執筆を進めていったらいいか、路頭に迷っていました。しかし今は論文のテーマ、形、ストーリーがより具体的に描けているという点で異なります。今は”明確”に”あれについて論文を書くぞ”と思っています。進歩したようです。今後はそれに向かって邁進していけば良いと思い、心理的に少し余裕ができています。留学生活には、この心理的なゆとりが大切のようです。精神的な安定さが、留学中のQOL (Quality Of Life)を改善し、成績(=論部執筆)にも寄与するものと思います。

SUNRISEの先輩先生方も書かれていましたが、留学初めの1年は準備期間だった気がします。種蒔きの時期でしょうか。しかし次の1年は、初めの1年で蒔いた種を刈り取る期間のごとく、より多くを達成します。次の1年はこの1年以上のものになると確信しています。そのための努力も惜しみません。この1年はよくやったと自分を褒めてあげたいです。次の1年は、もっとできるはずです。
From SUNRISE To the WORLD
もし留学を志している先生がいらっしゃれば、SUNRISEホームページのFrom Overseasを見れば、探している情報やロールモデルが見つかるよ、とアドバイスします。その方が私の話を聞くより有益かもしれません(残念ながら事実??)。

1年間レポートを書く機会をいただいて分かったことがあります。それは先述したような留学当初のVISA取得に伴う葛藤やそこから生じた希死念慮(本当ですよ)、それらの感情が事の解決に伴い自然と昇華していく心情変化は、今書こうとしてもと書けない、ということです。喉元過ぎればというやつで、当時の苦しみが薄れつつあるようです。今書こうとしても文章に感情を込められないというか、臨場感に欠ける文章になってしまいそうです。毎月書くというタスクがあったからこそ、留学当初の危機的状況(勝手に自分がそう思っていただけかもしれませんが)や、その時その時の心境と目標を生中継できたのだと思います。この1年を通じて書いてきた同じ10のテーマを今まとめて書こうとすれば、記憶の鮮明な、感情の新鮮な直近に関する記述が多くなってしまうでしょう。ですので手前味噌ですが、留学生の留学生活とそれに伴う生活変化、心情変化が毎月当事者によって書かれているサイトというのは、とても貴重な情報源だと思います。留学生の当時の記載(当初目標とその後の目標の変遷など)がその後どうなるか、Prospectiveな実験のようじゃないですか?そう考えただけでも、わくわくしてしまうのは私だけでしょうか?

そのように考えてみますと、様々な国への留学生が、留学前の意気込み(SUNRISE YIAのプレゼンテーション)に始まり、現地からリアルタイムで、リアルな情報を随時届けている情報源(サイト)が、他にあるでしょうか。留学に伴う書類準備に始まり、留学のハウツーものから、”留学のダークサイド”に至るまで、”生”の情報を網羅したソースが他にあるでしょうか?。
私も自分のレポートを読み直すと当時の日記を読んでいるようで、当時の自分の感情が、嫌な思い出も含め蘇ってきます。このSUNRISEレポート業務は、自分にとっても貴重な財産を残す機会となりました。
また書く際には、これから留学される先生方にとどまらず、家族親族の目に留まる可能性をも意識して書くことができました。読者が複数の職種、年齢層に及ぶことを意識して情報発言、感情発露をする機会でもあり、私にとっては初めての体験をさせていただきました。このレポート執筆経験が論文執筆に好影響を与えていると思っています(笑)。

失礼を承知で記載しますが、私の当初の目的はグラント獲得、すなわち”お金”でした。しかし、この1年のレポート業務を通じて、お金以上のものをどうやら享受していたようです。
思えば、遡ることSUNRISE YIAのプレゼンテーション作りでは、留学する意義、自分の強みが何かを突き詰めて考えさせられました。漠然とした留学目的を明確に定義する機会、普段は目を向けない自分の長所に目を向ける機会をいただきました。また同じ循環器であっても、異なる分野の、異なる留学目的の、異なる留学地の同志と巡り会うことができました。毎月のこのレポートを通じて、時に他の先生のレポートを見て、隣の芝生が青く見え、焦燥感を覚えることもありました。しかし近況報告し、互いに鼓舞し合い、喜怒哀楽、情報を共有できるネットワークでもあります。これらはいずれも、SUNRISE YIAに応募した時点では、想像すらできなかった現在の私がSUNRISEから享受している恩恵です。今後も、現時点では想像もつかない恩恵をSUNRISEから享受することになるのだろうと楽観しています。

「私が木陰で涼しむことができるのは、以前にその木を植えた人がいたから」と、先人の功績と自身の享受した恩恵を述べた人がいましたが、私もSUNRISEという大樹の木陰で涼しんでいる一人です。願わくは、後世のために大樹”SUNRISE”を大きく育てていく一人でありたいと思います。