SUNRISE研究会

SUpporting youNg caRdiologISts projEct

from Overseas

鳥居翔(D.C., USA)

鳥居翔(D.C., USA)

CV Path, Washington D.C., USA

2016年12月20日

【テーマ】2016-2017

CVPath 新たな試み

12月に入りDCも本格的な寒さが到来しました。

本日(12月10日)の気温は最高3℃、最低-2℃。

1-2月には最高気温が-10℃になる事もあるらしいです。

鹿児島出身という事もあり寒いのは苦手なので、かなり心配です…

 

最近注目の論文ですが、お陰様で最近は沢山のテーマに携わらせて頂いていて、

 

冠動脈系 (ステントの動物実験、rupture, calcified noduleについて)

弁系 (TAVIのvalveの動物実験、大動脈弁の動脈硬化性変化について)

末梢血管系 (DESの動物実験から、BTKも含めた下肢の病理)

 

など、”CVPathらしい”仕事も山ほど抱えているのですが、

その中で最近注目の論文を挙げるとすると、

 

N Engl J Med. 2016 Aug 18;375(7):655-65. doi: 10.1056/NEJMsa1507092.

Genetic Misdiagnoses and the Potential for Health Disparities.

Manrai AK

 

になります。

そう、DNAです。

 

循環器内科医として日常臨床を過ごしていると、DNA、遺伝子について触れる機会は少ないですよね。

 

実際私も、HCM、Fabry病の症例は外来で担当していたので少しは知識がありますが、その他はLQT等の不整脈系くらいでほぼ素人です。

クロピドグレルのCYP2C19遺伝子多型も、ステント血栓症の症例に出会うと調べるレベルでしたし。

 

更に基礎的な事に関してはますます分からないという状況ですが、来年のACCには病理とDNAを絡めた演題を3題出したこともあり、私の中では未知な分野であった分、一番のホットトピックです。

 

肝心の論文のkey messageはsimpleです。

 

家族性が疑われる肥大型心筋症の場合は遺伝子を調べて、病的偏位の原因遺伝子が発見された場合は、家族のスクリーニングをする事がガイドラインで推奨されています。

数ある遺伝子異常の中でも頻度が圧倒的に高い心筋βミオシン重鎖遺伝子(MYH7)、心筋ミオシン結合蛋白C遺伝子(MYBPC3)の2つは、まず最初にcheckすべき非常に大事な遺伝子で、病原性(pathogenic)と言われていた遺伝子偏位がスクリーニングで見つかった場合は運動制限をかける事になります。

 

しかし、なんとこれまでpathogenicだと報告されていたMYBPC3の遺伝子多型は、正常の黒人の3.1%が保有しているという内容です。

(白人の保有率は0%、今までは白人のデータを使って解析していたのがそもそも問題だったのですが)

 

つまり、全く正常で元気に外で遊んでいた黒人の子供が、遺伝子検査で陽性と判断され、運動制限されてしまっていた。

という話です。

 

これまで正常なDNAは、基本的に白人のDNAが基準だったので、それが原因と考えられています。

白人、黒人の差だけでなく、アジアを含めて遺伝子には人種差があるので、それぞれの人種でのデータが重要ですね。

 

と、いうような内容です。

なんと、この論文は著者のPhD取得の為のthesisの一部です。

どんな大学院生やねんって話ですよね。

 

アメリカに来て気づいたのですが、人種差ってアメリカではかなりホットなトピックなようです。

CVPathでもインド人のボスを始め、アフリカ、アジア、中東と人種は多種多様ですし、人種の違いを意識する機会は多いです。

 

日本でもこういう研究は必須ですよね。

恐らく日本人だけのデータだとhigh impactにはならないとは思いますけど、でも近い将来必ずテイラーメイド医療の時代になるでしょうし、その為には遺伝子の知識はある程度持っておく必要があるなと感じています。

 

僕が現在取り組んでいる事もCVPathにとっては今までにない分野ですので、ものになるかは不明ですが、何とか頑張ります。