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from Overseas

大野洋平 (Catania, Italy)

大野洋平 (Catania, Italy)

Ferrarotto Hospital, University of Catania (Catania, Italy)
Clinical Fellow

2015年02月01日

【テーマ】第7回:世界に出てから見つめ直す日本の医療、どこへ向かっていくべきか

教育、臨床、そして研究

若いドクターにとって幅広い分野で多くの経験を積む事は極めて重要であると考えている。自分の場合も、最初の二年間大学病院の各内科学を四ヶ月間ずつローテートし、世界のスタンダードである治療を学び、その後二年間市中病院で「実践」を学べた事は非常に意義が大きかったと思っている。いわゆる循環器内科医としてスタートしたのは卒後五年目のことである。遠回りではないか?と思われる方も中にはいるかもしれないが、自分はそうは思っていない。実際、循環器内科医が扱う臨床背景の複雑な患者に対しては、これらの経験が非常に役に立っている。また、リサーチ面でもこのような経験を元に、色んないいアイディアが浮かんでくる。

自分がこちらで属しているCatania大学循環器内科の場合を考えてみる。医学部6年間卒後、国家試験を経て、Post-graduate schoolに入り、5年間循環器内科に専念する。この期間のことを”Specializzazione”(アメリカのgraduate schoolにあたる)と呼んでいる。この期間に循環器内科の基礎を学び、自分の適性を見極め、インターベンション医、エコー医、general cardiologistなどへの路に少しずつ分かれていくようになる。また、この間(通常は4-5年目)、国内国外問わず他の施設で研修をしてもそれが単位として認められており、多くのドクターが外に出ていく。第三回レポート「留学先紹介」にも登場したProf. Davide Capodannoもこの期間を利用してFlorida大学(USA)に、Dott. Marco BarbantiもTAVIを学びにProf. John WebbのいるSt. Paul’s Hospital(Canada)にいっている。その他にも、現在、MassyのICPS(France)、Sabaté先生のいるBarcelonaのSant Pau University Hospital(Spain)、さらには豊橋ハートセンター(Japan!!)にも研修にいっている。特にヨーロッパ内での移動は比較的簡単で、EU内の医学部を卒業していれば、特に移動先の国の試験などを受けなくても臨床研修が可能となっている。これは素晴らしいシステムだと個人的には思っている。残念ながら日本は語学のハードルが高いと考えられており、以前に比べれば外国人留学生が増えている印象があるとは言え、多くは基礎研究に従事しているのが現状である。将来的には、ヨーロッパやアメリカから「日本」に「臨床留学」、というコースが可能になるようにしたいと考えている。そのためには、

1-論文、学会などによる日本発の情報発信。日本から海外への留学先を考えるにあたり、Pubmedなどで留学先候補施設のacademic activityをチェックした先生方も少なくないであろう。コンスタントに発信し続けることが重要と考える。一番手っ取り早く、確実なアピール法である。

2-日本発のデバイスの導入。国産であっても外国産であっても、世界に先駆けて日本で導入する体制作りが急務。臨床治験がらみが多くなることが予想されるので、医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協力も不可欠。自分がヨーロッパを留学先に選んだのも、新しいデバイスが世界に先駆けて使用できる環境があったからこそ。

3-英語をベースとした留学コース。外国人留学生を受け入れるにあたり、やはり学びにくる留学生に最善の環境を提供してあげるのが道義であろう。語学の壁を理由に、彼らが100学べるところを60しか学べなかったら、それは悲しいことである。十二分に深い議論ができるように、こちらも常に準備しておかなければならない。またそういったことに対応できる日本のドクターを増やすための人材育成も必須である。

などが非常に重要であると考えられる。

 

日常臨床はどうか。イタリア全体での一般論ではなく、Cataniaに関してだが、カテ室のスタッフインターベンション医は基本カテ室専属であり、病棟業務は担当していない。もちろん、術前のICや術後回診などは行っているが、治療が終わり、患者がICUや一般病棟に戻ると違う循環器内科医の手に渡るのが基本である。おそらくアメリカと似たシステムなのであろう。それに対して、日本では、インターベンション医が病棟も担当していることが多く、術前術中術後、さらには退院後の外来まですべて同じドクターが担当していることも少なくない。自分も長年この日本スタイルでやっていたということもあり、こっちの方が好きだが、このシステムはドクターの大いなる負荷の上に成り立っていることも同時に理解すべきであろう。患者さんのより詳細な把握は日本のシステムの方が優れているように思えるが、患者さんに不利益のない範囲での分業も同時に重要であると考える。技術的なことに関しては、なかなか論じ難い。というのも、PCI一つとってみても考え方、習慣が違うのでどちらがよいとか悪いとかを論じる事自体ナンセンスである。ただ、PCIにしろ、SHDIにしろ、イタリア人は非常に手先が器用で、創造的で、手技時間も早い。High-volume centerのインターベンション医を見ての感想なので多分にバイアスも入っているが。このバイアスを鑑みても、日本人のPCI術者のレベルは高い。今後はそれをSHDIにおいても証明していかないといけないと思っている。

 

臨床研究においては、余程珍しい手技でもやらない限り、single centerでのデータには限界があり、海外の一流雑誌にacceptされるのは非常に難しいのが現状である。今後、日本からさらに発信を続けていくためにも、All Japan体制が望ましい。また、海外留学の経験を活かし、国際的なstudyやregistryにも積極的に参加していければなおさら嬉しい。こういう意味においても、こちらで築いた人的ネットワークは本当に宝だと思っている。