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from Overseas

梅本朋幸(Italy)

梅本朋幸(Italy)

Ospedale Civile Mirano (Mirano, Italy)
Clinical fellow

2015年10月09日

【テーマ】2015-2016

気さくな仲間がたくさんいます.

1  施設規模 (症例数や特徴など)

私の所属しているOspedale Civile Miranoは,その名の通りMirano市の中心にある.Mirano市は,正式には,イタリア共和国ヴェネト州ヴェネチア県にある基礎自治体(コムーネ)であり,人口約26千人という小さな市である.ヴェネチア本島の北西20km程のところに位置している.近隣にある大きい都市としては,西にロミオとジュリエットで有名なヴェローナ,東にヴェネチア本島の玄関口であるメストレ,南に大学の街としてしられるパドヴァなどがある.イタリアでは大都市をのぞくと,ほとんどが公立病院とのことである.行政区域により,番号がついていて,『ULSS (Unita Locale Socio Sanitaria)13』などの表記になっている.ちなみに,この『13』が私の所属している行政区域の番号である.この行政区域には,『Mirano』の他に,『Dolo』『Noale』という市が含まれており,それぞれに病院がある.

当院は,一般的な総合病院であり,あらゆる科が設けられている.見学に訪れた時,印象的であったのは,土地に余裕が有るためか,ほとんどの科が独立した建物になっていたことである.しかも,それぞれが高層建築ではなく,その多くが3階建て程度である.連絡通路なども無いため,別の科に移動するためには,一度外に出る必要がある.入国当初に健康診断受診を指示されたのだが,検査科・内科・眼科・皮膚科などすべて回るのに,広大な敷地を歩きまわって受診する必要があり,とても疲れた記憶がある.

当科で行っている主な治療は,冠動脈ステント留置術(PCI),下肢動脈を中心とした末梢血管に対するEVT,頸動脈ステント留置術(CAS),腹部大動脈瘤に対するステント治療(EVER),経皮的大動脈弁留置術(TAVI),左心耳閉鎖術(LAA closure),卵円孔閉鎖術(PFO closure)などである.それぞれの年間症例数は,PCI:1000件,EVT:500件,CAS:150件,EVER:50件,TAVI:40件,LAA closure:30件,PFO closure:30件程度である.特徴の一つとしては,緊急カテーテル症例が非常に多いことである.ほぼ毎日,数件の緊急カテーテル症例がある.上記したように近隣に病院があるが,緊急対応体制があまり整っていないようで,他院から多くの患者さんが送られてくる.また,さまざまなカテーテル治療に対応しているため,待機的な患者さんの紹介も多い.当初は,この小さな市にある病院でなぜこれほどの症例数があるのか不思議であったが,かなり遠方からも紹介患者さんがあるようだ.

各症例の特徴としては,まず,冠動脈バイパス術(CABG)に回す症例が予想以上に多かった.左主幹部(LMT)を含む病変や糖尿病合併の多枝病変症例では,手術リスクがそれほど高くない患者の多くは,CABGが施行されていた.TAVIに関しても同様の傾向があり,よほど高リスクではない限り,外科手術に回っている.また,高リスク患者に対しても,バルーン形成術が施行される事もある(重症度や予後および経済的問題もあると思われる).また,TAVIとEVAR施行時の大腿動脈穿刺については,外科的なカットダウンは行わず,常に経皮的に行なっている.PFO/LAA closureとも共通するが,全身麻酔を行うことは無く,基本的に局所麻酔で施行している.CASについては,症候性頸動脈狭窄および無症候性頸動脈狭窄の両者を対象としており,時に急性期症例に対しても治療を行うことがある.症候性患者に対しては,近位保護法(proximal proteciton)を積極的に行なっている.不安定プラークに対しては,メッシュ型ステントも使用している.また,非常に稀ではあるが,急性期脳梗塞に対して頭蓋内インターベンションを施行することもある.EVTについては,手技的には国内とあまり大きな違いはなく,distal punctureやランデブーテクニックなども用いている.特徴としては,豊富なデバルキングデバイスとDCB(Drug Coating Balloon)を積極的に用いている.従来型のステントが留置しづらい病変や浅大腿動脈の長区間閉塞病変などに用いられている.一方で,VIABAHNやSUPERAなど新世代のステントも多く使用している.PCIおよびEVTに関しては,日本国内での症例と比較して,デバイスの違いを鮮明に感じる.CEマーク取得時期の関係もあると思われるが,新しいデバイスが豊富に使用できる.しかしながら,ガイドワイヤーやマイクロカテーテルなどについては,選択肢があまり多くなく,製品の品質もあまり良いものではないと感じた.日本製のものも準備はしてあるようだが,経済的な問題か納入頻度の問題か,ここ一番というような症例以外ではあまり登場しない.ただ,上司や同僚の,日本製ガイドワイヤーやマイクロカテーテル対する信頼は非常に厚い.困難な症例が日本製のデバイスで治療成功すると,日本人である私に『ありがとう,日本』と声をかけてくれる.日本人で良かったと思うと同時に,日本人代表として見られているとプレッシャーを感じる瞬間である.

Interventional cardiology部門の医師はスッタフが5人,私を含めてフェローが3人いる.カテーテル室は全部で3室あるが,ひとつはアブレーション治療専用室となっており,基本的に2室でインターベンション治療を行なっている.1日の平均カテ件数は15件ほどだが,20件を超えることもある.コメディカルの体制は,看護師が10名程度,放射線技師が2名専属となっている.一つの症例に対して,医師1人,看護師2人(場合によっては,1人は放射線技師)で担当する.診断造影だけの場合には医師1人で全ての手技を行なっているが,カテーテル治療となった場合には,看護師が助手として手洗いして治療に参加する.カテーテル治療に関して非常に教育されており,日本で考えると後期研修医以上の知識と経験を有していて,的確に医師の補佐を行なっている.時には治療方針についてもコメントを行う.コメディカルスタッフは2交代制となっており,7:00~14:00,12:00~19:00という勤務時間である.非常に興味深かったのは,19:00を過ぎると予定していた症例を,いとも簡単に翌日に変更してしまうことだった.日本では予定したカテーテルは遅い時間になってもその日のうちに行うことがほとんどであり,このあたりは,なんともイタリアらしいなと感じた.

他に,当院の特徴として挙げられるものに,『TOBI』がある.『TOBI』とは,以前のレポートでも紹介した,当院が主催しているライブデモンストレーションである.『Total Occlusion and Bifurcation Interventions』というのが正式名称で,毎年秋にメストレのホテルを会場として開催されている.左主幹部および分岐部病変に焦点を当てた研究会である.ロシア・トルコ・エジプト・イタリアの4施設からライブ中継を行なっている.日本からもゲストオペレータとして落合医師・山根医師が招聘されており,当院のカテーテル室でCTO症例を施行する.当院の同僚達は毎年心待ちにしている.今年は,記念すべき第10回目となっており,10月1日,2日に開催予定である(http://www.tobionline.org).

写真1:Ospedale Civile Mirano

写真1:Ospedale Civile Mirano

写真2:看護師の仲間たち

写真2:看護師の仲間たち

写真3:TOBI

写真3:TOBI

 

2. ボスや同僚の紹介

1) Bernhard Reimers(大ボス)

インターベンション部門のボスであり,なおかつ当院の循環器内科のボスでもある.学会場で突然声をかけた私に対して,親身になって相談に乗ってくれた恩人である.毎週のように研究会・学会参加や出張カテーテルなどを行なっており,かなり多忙のようである.奥さんはイタリア人でイタリアでの生活のほうが長いようだが,もともとは,ドイツ生まれのドイツ人である.他のイタリア人医師と違い,カテ中にあまり無駄話をせず,冷静沈着で論理的なドイツ人の片鱗を見せる.今年7月,日本の学会へ参加した時には,私も同行し,ボスの家族ともども東京の観光案内を行なった.

写真4:Bernhard Reimers医師

写真4:Bernhard Reimers医師

 

2) Salvatole Saccà(中ボス)

大ボスが循環器内科全体のボスでもあり,また出張が多いため,実質カテーテル室のボスは彼である.頭蓋内インターベンションから,BTAインターベンションまで,まさに頭のテッペンから足の指の先まですべてのインターベンションを手掛けるスペシャリストである.もちろん,PCI・TAVI・EVAR・LAA/PFO closureも行なっており,彼から全てを学ぶことが出来る.『サルバトーレ』と,いかにもイタリア人的な名前であるが,その性格もまさにイタリア人そのものである.非常に大らかでかつ情熱的な性格で,カテ中のおしゃべりは欠かさない.非常に信頼してくれており,彼からの仕事(テキストブックの原稿,学会発表用のスライド作りなど)が最も多い.

写真5:salvatore saccà医師

写真5:salvatore saccà医師

 

3) Andrea Pacchioni(仲間1)

上記ボスたちが50歳代であるのに対して,同僚はだいたいアラフォーである.このアンドレアは,年齢が最も近く,臨床研究などの相談も一緒に行っていて,最も親しくしている.ビザ取得に際しても,事務的な作業をいろいろと手伝ってくれた.冠動脈のCTO治療とCASに興味を持っており,日本のCTO治療に非常に興味を持っている.定期的に自宅でバーベキューを行なっており,頻繁に誘ってくれる.

写真6:andrea pacchioni医師

写真6:andrea pacchioni医師

4) Carlo Penzo(仲間2)

ヴェネツィア本島で生まれ育ったという生粋のヴェネツィア人であるカルロは,上記アンドレアとほぼ同い年で非常に仲が良い.陽気な性格で,いつも歌いながら仕事をしている.普段は,PCIおよびEVTを中心に症例を行っている.現在,SHD interventionを勉強中である.個人的には一番男前だと思っている.新婚旅行は日本へ行ったとのことで,日本通である.

写真7:carlo penzo医師

写真7:carlo penzo医師

5) Reccardo Turri(仲間3)

スタッフの中ではやや若くまだ30歳代前半である.現在は,救急外来やCCUなどでのduty work

が多く,あまりカテ室では顔を合わさないが,事務手続きで困ったことがあると助けてくれる.

写真8:reccald turri医師

写真8:reccaldo turri医師

6) Jayme Ferro(仲間4)

昨年からインターベンションのフェローとして働いている.まだ経験が浅く,様々な症例で質問をしてくる.大ボスからは,彼にPCIの指導をするように指示されており,助手に入りながら,日本式(?)の手技を日々教えている.頑固なところもあるが,理論的に説明すると納得してくれる.

写真9:jayme ferro医師

写真9:jayme ferro医師

7) Alfredo Fede(仲間5)

最近,フェローとして働き始めた.症例のディスカッションをしたりアペリティーボに行ったりと,時間を共有することが多いが,英語があまり得意でなく,コミュニケーションに苦労している.自分自身のイタリア語の練習にはちょうどよい.

写真10:alfred fede医師

写真10:alfred fede医師