SUNRISE研究会

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from Overseas

塩野泰紹(UK)

塩野泰紹(UK)

Imperial College London (London, UK)
Clinical fellow

2016年01月18日

【テーマ】第7回:世界に出てから見つめ直す日本の医療、どこへ向かっていくべきか

海外から日本の医療をみて、見えてきたこと

海外の医療に触れて自分なりに日本の医療について考えさせられたことを述べさせていただきたいと思う。限られた領域しか見ていないので医療全体を論じることはできないし、考えにバイアスがかかっていることはご容赦いただきたい。
日本は「世界有数の長寿国」である。言い換えれば臨床において最も重要なエンドポイントである生命予後改善が達成された国である。もちろんこの結果は純粋に医療水準の高さのみを示すわけではないが、医療が果たした貢献は大きいはずである。この点はまず世界に誇るべきであろう。それにも関わらず海外の臨床医や研究者は日本ではなく欧米の医療に注目し、日本からも欧米に数多く留学するのは何故であろうか。
まず臨床面であるが世界的に見て日本の医療水準が高いのは間違いない。イギリスに来て初めて他国の医療を実際に見たが、ここで行われている医療は日本のそれと大きく変わりはない。例えば急性心筋梗塞に対するPrimary PCIでは手技から使用しているデバイスまでほぼ同じである。CTOなどコンプレックスPCIでは日本の方がレベルが高いと思うこともしばしばである。しかしここでは日本ではまだ認可されていないデバイスもよく目にする(最近ではstructural heart disease interventionの領域でそれが多い)。いわゆるデバイスラグである。それにより現在日本では不可能な手技も実施されている。日本の医療水準は高いが決して先頭に立っているわけでは無いのも事実である。
研究面を見ても欧米が先行していることは認めざるを得ない。Evidence based medicineが推奨されるが、我々が参照するエビデンスの多くは欧米のデータである。そもそも研究者が目指すTop Journalはすべて欧米のものである。現在の留学先は心筋虚血診断における新しい診断概念であるiFR (instantaneous wave free ratio)を世界に初めて提唱した施設であるし、現在もそれを用いた臨床研究が進行中である。その他にも日本では到底実施が困難と思われるような臨床研究も(倫理的問題はなくても心情的に日本人には受け入れられ無いと言う意味で)臨床的に重要で科学的に未検証だからと言う理由で果敢に実施されている。今後も世界の先頭を行く大きな研究報告が欧米を主体に報告されていくのが予想される。
歯がゆく思われるのは、日本では使用できないデバイスも決して日本のインターベンション医が扱えない代物ではないことや、欧米から一流誌に報告されるような臨床研究の多くも日本でも十分実施可能なものであるということである。未承認という制約や、単に実施しなかったというような解決可能な理由によって欧米に先んじられていることも多いように思う。日本の医療が世界から注目されるにはこの差を早く埋めて先頭争いするようにならなければならない。日本人はオリジナリティの高いものを新しく生み出すのは苦手であると言われるが、医療の分野においてもその傾向が強くなかなか先頭に立ちきれていないように思う。デバイスラグがあっても数年後には海外でその安全性が確認されて使用可能になることが多いし、研究においてもいつかは海外で研究され論文として情報が入ってくる。それら欧米の成果物を享受し、上手に日本に適応させれば自ら先頭を走らなくても一定の医療水準を保つことは可能であろう。しかし2番手争いで満足する考え方では世界から注目される医療に発展するのは難しいと思う。
今後、日本から世界に向かって臨床価値の高い情報発信をする必要があると切に思う。日本の医療水準の高さを客観的に示すことができるし、それが結果として自身の患者へ質の高い医療を提供することにつながるためである。とは言っても、歴史的、文化的背景にかなりのギャップがあるのでいきなり欧米のようにはいかないであろう。そこで今、我々の世代の日本の臨床医が実際に何ができるか考えてみた。現実的に起こせる行動としては①国際学会への参加、②国際雑誌への論文報告、③海外の医師との積極的なコミュニケーション、④海外留学などかと思う。これらを通してまずは国際交流を図り国際的な視点を持つことだと思う。そしてこの際に英語のコミュニケーション能力は不可欠である。自ら海外に出て行く際にも、海外から人を受け入れる際にも必須となる。イギリスは多くの移民を受け入れてきたためスタッフも患者もイギリス人でないことが多い。しかしみなが英語を第二言語として使いこなす。3ヶ国語以上のMultilingualも普通である。高い英語のコミュニケーション能力とヨーロッパと言う国が隣接するという地理的条件も働いてここには自ずと活発に国際交流する土壌がある。一方同じ島国でも日本は積極的にアクションを起こさなければその機会を得ることは難しい。高い目標を持って自ら行動を起こし、国際的な視点から危機意識を持つ臨床医が増えることで日本の医療が活性化するのであろう。自分も日本の医療の発展に貢献できる一人になれるようにできる限りのチャレンジをしたいと思う。