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奥野泰史(Bern, Switzerland)

奥野泰史(Bern, Switzerland)

University of Bern

2019年03月09日

【テーマ】2018-2019

三方良し

遅れてスタートした分、駆け足でアップしていきます。今回のお題は異文化のハードルです。

 

1. お給料について。

今回、私は無給の条件で留学をしております。最初の時点で、self-fundingがあればという条件付きですので、現時点では給料交渉は全く考えていません。スイスの医師免許がないどころか、主要言語すらも覚束ないような状況ですし、日本のレジデントを上がったばかりで、お金を貰って教えられるようなことも何もありませんので、当然のことだと思っています。施設への貢献のためではなく、自己研鑽と、医療の新しいエビデンス、そして将来の日本の医療(そんな大層な人間でもないですが)のために留学しており、現在の施設からお給料をいただくのは、なんとなくお門違いな気がしてしまいます。今後仕事を続ける中で、その仕事が今の施設にも十分feedbackされていると感じられれば、給料交渉をしてみるのかもしれません。

 

2.  ボスはフェローのどこを評価するのか。

正直なところ、まだスイスに来て4ヶ月ですし、今自分がどう評価されているのかもよくわかっていないのが現状です。ただ少なくとも、レスポンスが早いことは評価してくれているようです。multicenter studyの協力や査読等の仕事も回してくれますし、私のResearchにも色んな面で協力をしてくれていますので、こちらで仕事を続けていく上で必要十分な評価は頂けていると感じています。

私が仕事をする上で常に心掛けていることは、以下のことです。

(1) 与えられた仕事に対しては、できるだけ早く、期待された以上の結果を返す。

(2) 与えられた環境の中で、自分に一番期待されている仕事を探して行う。

(3) チーム皆が気持ち良く働けるよう、自分にできる最大限のサポートをする。

 

今の状況に置き換えれば、データベースの作成や、査読などをできるだけ早く仕上げること、リサーチ内容に関するレスポンス等もできるだけ早く、確実でわかりやすい状態にして返すこと、術前のCT解析などのできる範囲の臨床業務を行うことといったところかと思います。

ベースの思想や文化、背景は国や言語を跨がずとも人それぞれに違って当然のものですし、相手の目に映る自分をあまりに意識しすぎると、本末転倒になってしまうのではないかといつも思っています。結局どこで誰と働いていても、自分のすべきことは、チームにも、患者さん(社会)にも貢献でき、結果として自分や自分の家族にも返ってくるような仕事をただ追求していくだけだと思っています。私は滋賀県の生まれですが、近江商人の言葉に「三方よし」という言葉があります。三方とは、売り手と買い手、そして世間のことを指します。要するに「自分も含めて皆が幸せになるのが良い仕事だ」という意味だと解釈していますが、これは日本にいても、海外にいても変わらない私のアイデンティティーになっていると思います。

 

3. ボスに言われたひどい言葉、くじけそうになったシチュエーション。

基本的にボスもフェローも、良い人達ばかりなので、ひどい言葉をかけられるということは今の所ないですし、なんとなく今後もないような気がしています。

ただ、いろんな先生がレポートしてきている通り、言葉の問題はやはり大きなストレスになります。私自身、日本人の中では英語はそれなりに話せる方だと思っていますし、実際の仕事のやりとりにおいてはそこまで大きな支障はありません。しかし、日常のコミュニケーションとなると、十分とは全く言えない状況です。日本語の会話の中にもなんとなく“阿吽の呼吸”のようなものがあると思っているのですが、英語の会話ではどうしてもこれがつかめず、適切な返答や声掛けができないという感覚があります。また、細かいニュアンスが伝えられないし、逆にわからないという感じもあります。これが日常のコミュニケーションをとっていく中で、大きな障壁であると感じています。沢山英語は勉強しましたが、日常会話の経験値と、文化的な背景が圧倒的に欠落しているのだと思います(ゲームの話題一つとってみても、子供の頃にプレイしたゲームも、昔流行っていたゲームも全く違うのです)。これに加えて、ドイツ語も混ざってきますので、今の私の状況とキャパシティーでこれを完全に克服するのは、かなり難しいと感じています。

 

4. 今の施設に残るなら何が必要?

ベルン大学はとても素晴らしい施設ですし、スタッフもとても優秀な方ばかりですが、単純に臨床能力や、研究の能力だけで言えば、自分でも十分研鑽してやっていくことは可能ではないかと思っています。ただ、先にも挙げたとおり、医師免許がないですし、そもそも言葉が話せないので、このままスイスで独立した一人の医師としてやっていくことは現時点では不可能です。世界有数の施設で、世界最先端の臨床と研究に触れることはとても刺激的で、他では得難い経験ですが、私のベースは臨床医なので、現状のままこの施設に残るという選択肢はないと思います。この施設に残るのであれば、スイスの医師免許を取得することや、何よりもドイツ語の習得が必須だと思いますが、限られた時間の中でそれらに手を回す余裕はないと今の時点では思っています。もちろんまだ来て4ヶ月ですし、これから考え方が変わっていく可能性もあるかもしれません。

 

日本で仕事をすることに比べれば、確かに思うようにいきにくいこと、やりづらいことは沢山ありますし、日本で仕事をするのとは性質の違うストレスがあるとも思います。異文化のハードルは確かに存在しています。ただ、これを乗り越えることがあるとすれば、結局それは言語や文化の克服ではなく、自分の仕事によるものではないかなと考えています。