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2016年04月06日

Reviews

Gray zone FFR: Medical treatment vs. Revascularization

Significance of Intermediate Values of Fractional Flow Reserve in Patients with Coronary Artery Disease

Circulation. 2016; 133: 502-508

侵襲的心筋虚血診断法であるFractional Flow Reserve (FFR)のカットオフ値はFAME試験でFFR<0.80が提唱されて以降、臨床でもガイドラインでも一様にその値が採用されている。しかし当初、FFRのカットオフ値はFFR<0.75とされていた。FAME試験よりも先に実施されたDEFER試験などではFFR <0.75がカットオフ値として採用されている。そこでFFR = 0.75 ~ 0.80は境界領域(gray zone)と考えられており、この範囲のFFRを有する病変に対しては血行再建と薬物療法のどちらが最適な治療であるのかに関してまだ明確なエビデンスがなく本研究はこの部分を明らかにしようとするものである。
本研究はベルギーのCardiovascular Center Aalstで実施された単施設の後ろ向き研究である。1997年2月から2013年7月にこの施設でFFRが実施された17380症例の中から、単一病変でFFRがgray zone周辺(0.70-0.85)を示した1459症例を対象に研究が実施されている。そのうち449人に対して血行再建が実施され、1010人では血行再建が回避され薬物療法が選択された。そして5年間の心血管イベント(MACE: 全死亡、心血管死、心筋梗塞、再血行再建)が評価されている。
結果、gray zoneのFFRを有する患者において、MACEは両群で差が見られなかったが (薬物療法群 vs. 血行再建群:13.9% vs. 11.2%, p=0.3)、薬物療法群では血行再建群よりも死亡+心筋梗塞の発生率が高い傾向が認められている(9.4% vs. 4.8%, p=0.06)(Figure 1)。

Figure 1: Gray zone FFRにおける血行再建と薬物療法のイベントレートの比較

さらにFFRの境界閾値を3群に層別化すると(0.70-0.75, 0.76 – 0.80, 0.81-.85)、血行再建を受けた患者ではFFRの値に関わらずMACEは同等であるのに対して(13.5% vs. 11.2% vs. 14.5%)、薬物療法を受けた患者はFFR値が低いほど心血管イベントが増加する (22.6% vs. 13.9% vs. 8.5%) (Figure 2)。特に近位部病変の場合にこの傾向が強くなることが示された(Figure 3)。

薬物療法群におけるFFR値3群間の心血管イベントレートの比較

Figure 2: 薬物療法群におけるFFR値3群間の心血管イベントレートの比較

薬物療法群における近位部病変と遠位部病変のイベントレートの比較

Figure 3: 薬物療法群における近位部病変と遠位部病変のイベントレートの比較

この結果から筆者たちは現行のガイドライン通り血行再建のカットオフ値をFFR <0.80に設定することが妥当であると結論づけている。本研究によってGray zone のFFRを示す病変に対しても血行再建を実施することの正当性がある程度示されたと考えられる。しかしMACEに大きく差がないことや、何より本研究が単施設の後ろ向き研究なので大きくバイアスがかかったデータであることは無視できないであろう。特にgray zoneのFFRを有する病変の治療方針を決定する場合には、FFR以外に術者の判断が大きく影響してくる。データとしては現れてこないが、より血行再建が望ましいと判断された症例および病変が術者のフィルターで選択されている可能性が高い。それでも結果に大差がつかなかったと解釈すべきである。Gray zoneのFFRに対する最適な治療法をはっきりさせるためには、厳密には適切に設定された前向き試験が必要であろうが現実的にはなかなか難しい。現時点ではFFRがgray zoneを示した場合にはFFRのみでなく、患者背景、病変形態、症状の有無などから総合的に臨床判断するのが理にかなっているように思う。本題からはやや外れるが、この試験データよりFFRの先駆的施設においてもFFR<0.75の病変でも薬物療法が選択されたり、FFR>0.80の病変に対しても血行再建が実施されていることが読み取れる。後ろ向き研究なので日常臨床の状況が色濃く表わされており、この施設でも臨床の場においてはFFRのみでなく総合的な判断がその都度実施されている結果と思われた。