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茂木聡 (Paris, France)

茂木聡 (Paris, France)

Clinical fellow

2018年02月03日

【テーマ】Mogi’s

Bare Metal Stent はもう要らない?

Drug-eluting stents in elderly patients with coronary artery disease (SENIOR): a randomised single-blind trial.

Varenne O. et al.  Lancet. 2018 Jan 6;391 41-50.

 

こんにちは。SUNRISE YIA the 2ndに参加した茂木聡です。

2017年1月より渡仏し現在、Institut Cardiovasculaire Paris Sud (ICPS)のClinical fellowとHôpitaux Universitaires Paris Centre site CochinでResearch fellowをしています。今回論文レビューの機会を頂戴しました。皆様の日常臨床に少しでも参考になれば幸いです。

2016年アメリカで施行されたPCIの1/4以上の患者が75歳以上でした。(1)しかし多くのRCTで高齢者は除外されており、高齢者に対する至適なPCI戦略は明らかではありません。そのため出血しやすい高齢者に対しては抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間が短くて済むBare Metal Stent(BMS)が使われることがあると思います。

今回紹介する論文は、「高齢者に対してBMSなのか、最新のDESなのか」を結論付けるひとつのエビデンスになると思います。

 

対象
75歳以上のCAD (StableとACS両方)患者。 臨床背景によってDESかBMSかをランダム化する前にあらかじめDAPT期間(Stable: 1ヶ月, ACS: 6ヶ月)を設定
S1-1
方法: 単盲検、多施設、ITT解析
DESはBoston社のSYNERGYを使用。BMSはSYNERGYと同様に薄いストラットのOMEGA あるいはRebel が使用された。

結果:
患者背景
S1-2

DAPT継続率はDES群とBMS群で同等であった。
S1-3

Primary endpoint (All-cause mortality, MI, stroke, ischemia-driven TLR)
S1-4
Safety endpoint
S1-5
結論
75歳以上のPCIが施行された患者において,短期DAPT下でDES使用はBMSの使用よりMACCEが有意に低かった。これは主にTLRの低下(DES 1.7% vs. BMS 5.9%)によった。なお内訳は、全死亡 (6% vs. 8%),MI (4% vs. 4%),Stroke (2% vs. 1%)。
安全性評価として出血合併症,ステント血栓症(ST)は同等で、MACCEに加えてBARC 2-5までの出血合併症の発生率も加味したNet clinical benefitではDES 14.4% vs. BMS 19.2%でDES治療が有意(RR 0.75, p=0.03)に優れていた。

私見
「高齢者であっても、BMSを使う理由はない。Stable CADでもACSでも最新のDESを!」というのが著者の考えでした。DESとBMSの比較ですから当然TLRの低下によりMACCEはDESが優れていることは想像に固くありません。ただ、ACSも含んだAll comerで短期DAPTであっても安全性が同等であったことは注目に値すると思っています。

DESを使用して短期間でDAPTを中止することの恐怖はSTとMIの発生だと思います。
STに関してはSubacuteもlateも有意差はありませんでした。ただ発生率が日本のそれとは異なり高い印象を受けます。2015年に発表されたLEADERS FREE(2)では出血high riskの患者に対してDrug Coated Stent (DCS)とBMSの比較を1ヶ月間のDAPTで行い、DCSの使用が27%のMACCE軽減につながるとされました。LEADERS FREEでのST発生率はDCS 2.0% vs. BMS 2.2%と高めで、半数がDAPT期間中に起きています。今回のSENIOR試験ではST発生率はLEADRES FREEと比べて少ない(DES 0.5% vs. BMS 1.4%)のですが(これはstrutの厚みによるものと考えられています(BioMatrix 120 μm, SYNERGY 74 μm))、やはり1ヶ月以内に多く発生しています(DES 3例中2例 vs. BMS 8例中7例)。1ヶ月以内に起こるSTの原因としては手技的なものもあると思います。SENIORで行われたPCIは日本のようにImaging deviceを使用していません。ステントの良好な開大や圧着、edge dissectionは正確に評価されていない中でのST発生率です。従って日本で施行されているようなimagingを駆使したPCIではより良い結果が得られるかもしれません。

MIに関してですが、短期DAPTではDAPT study(3)にあるようにPCI後の自然発生MIが上昇するリスクも懸念されますが、本試験ではDESとBMSの間で差はありませんでした。
今回紹介した論文はDESとBMSの比較ですが、DAPT期間も検討が必要で「早く切っても大丈夫という知見」が出れば多くの患者さんに役に立つことと思います。ICPSではDAPTに関する大規模RCTのPCIを施行することもあります。さらに私はSENIORのPIであるProf. VARENNEの研究室で働いています。Lancetに載るような研究や将来のガイドラインに影響を及ぼす(かもしれない)大規模RCTに関与できることも留学の醍醐味ではないかと思っています。

文献
1. Masoudi FA, et al. JACC 2017;69:1424-6.
2. Urban P, et al. N Engl J Med. 2015;373:2038-47.
3. Mauri L, et al. N Engl J Med. 2014; 371: 2155-66.