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茂木聡 (Paris, France)

茂木聡 (Paris, France)

Clinical fellow

2018年06月19日

【テーマ】Mogi’s

再注目? Renal denervation

Effect of renal denervation on blood pressure in the presence of antihypertensive drugs: 6-month efficacy and safety results from the SPYRAL HTN-ON MED proof-of-concept randomised trial

Lancet. 2018 May 22 [Epub ahead of print]

 

再注目? Renal denervation

循環器内科医を含め、多くの内科医師にとって高血圧治療は外来診療の多くを占めていると思います。今から数年前には新規の治療方法として治療抵抗性高血圧患者におけるカテーテルベースの腎除神経術(以下renal denervation)は国内外で注目されていたかと思います。しかし、2014年のACCにて発表されたSIMPLICITY HTN3 (同時掲載NEJM 2014; 370: 1393-401.)において“有意な治療法とは言えない”とされ、治験も終了し多くの落胆と共にブームが過ぎ去って行ったと思います。しかし先日のEuroPCR2018にて新しいカテーテルを用いた試験が発表されました。以前の臨床試験の反省をもとに作られた本試験ではrenal denervationの復権を予感させるものでしたので紹介したいと思います。

 

背景

カテーテルによるrenal denervationの過去の研究では様々な効果が報告されている。今回、内服薬に対して治療抵抗性の高血圧患者に対してシャム手技と比較したrenal denervationの安全性と血圧への反応を評価するために試験は行われた。

 

対象・方法

盲検化 (患者、治療者)

多施設(7カ国 25施設)、ランダム化

降圧薬を複数(1-3種)内服しているにもかかわらずコントロール不良の高血圧患者が対象とされた。

 

試験に登録されてから最低6週後に降圧薬の変更がなく基準を満たすことを確認(第一スクリーニング)。続いて尿と血清のクロマトグラフィーと質量分析法により独立した調査機関で服薬コンプライアンスが評価された。その後、外来収縮期血圧が150-180 mmHgで、かつ拡張期血圧 90 mmHg以上、かつ24時間血圧が収縮期140-170 mmHgであることを確認(第二スクリーニング)してから腎動脈造影が施行された。解剖学的に適応がある場合にrenal denervation群とシャム群にランダム化された。

renal denervation (n = 38) vs. sham control (n = 42).

手技、フォローアップ

Symplicity spiral カテーテルを用いて腎動脈とその分枝(径3-8 mmが適応)を焼灼する

シャム群では腎動脈造影後に20分以上カテ台にとどまる

術後1,3,6ヶ月後に外来フォローとし、3ヶ月目と6ヶ月目に24時間血圧と血清、尿による服薬コンプライアンス評価が行われた。その間の降圧薬の変更は禁止された。

また6ヶ月後に腎動脈評価のためにエコーないしMRI, CTが施行された。

 

結果

患者背景に有意差はなく、内服薬の強さ、内容も有意差がなかった。

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6ヶ月後の24時間血圧測定において収縮期血圧の平均がrenal denervation群で-9.0 mmHgに対してシャム群では-1. 6mmHgであった(p = 0.0051)。

6ヶ月後の24時間血圧測定において拡張期血圧の平均がrenal denervation群で-6.0 mmHgに対してシャム群では-1.9 mmHgであった(p = 0.029)。

6ヶ月後の外来血圧において、収縮期血圧はrenal denervation群で-9.4 mmHg、シャム群で-2.6 mmHg (p = 0.0021)、拡張期血圧はrenal denervation群で-5.2 mmHg シャム群で-1.7 mmHg (p = 0.048)であった。

 

フォロー期間中に手技関連の有害事象は認められなかった。

24時間血圧の変化は時間経過とともに大きくなっていた。

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考察

本研究では中等度のコントロール不良の高血圧患者に対してカテーテルによるrenal denervationが安全で有効であることを証明するためにデザインされた。4つの主な結果が得られた。第一に降圧治療を受けている患者では分枝までのrenal denervationにより有意な外来および24時間血圧の降下が確認された。第二に、降圧効果は6ヶ月のフォローの間で徐々に増加した。第三に合併症や有害事象は認められなかった。第四に服薬コンプライアンスは試験期間中問題がなかった。

以前のSYMPLICITY HTN-3では平均5剤の降圧剤を内服し外来収縮期血圧が180 mmHgという患者群を対象としていたが、今回はそれよりも軽症な高血圧患者を対象としている。さらに、焼灼手技を完全なものにするために以前とは異なるデザインのカテーテルを使い、さらに本幹だけでなく、腎動脈の分枝まで焼灼したことがSYMPLICITY HTN-3とは異なっている。

降圧降下が時間経過と共に大きくなっており今後のフォローが必要である。

また服薬コンプライアンスは3ヶ月後、6ヶ月後の時点で約60%であった。

本研究ではナトリウム摂取量や食事内容に関しては評価していない。また喫煙など血圧に影響する生活習慣に関しても評価していない。

本研究は降圧薬を内服していない患者に対するrenal denervationの有効性を評価する

SPYRAL HTN-OFF MED試験(Lancet 2017;390:2160-70)と同様の結果が得られたと考えることができコンセプトは正しいと考えることができる。しかしrenal denervationがどのような患者群に対して有効で、長期の有効性と安全性を評価かするさらなる研究が必要である。

 

私見

デバイスの改善と対象患者を中等度の治療抵抗性高血圧に変更したことが、Negative studyに終わったSYMPLICITY HTN-3と大きく異なる点だと思います。「血圧」という多様な因子に影響を受けるアウトカムでデバイスの効果を証明するために複雑な条件が求められ、試験デザインを作成することはとても大変だったのではないかと思います。本試験はあくまで新規デバイスと以前とは異なる患者群を対象にしたものであり、コンセプト段階です。

気になるのが、服薬コンプライアンスが60%だったことです。それが良いかどうかは小生には判断が付きませんが、個人的にはもう少し高くても良いような気がします。

ICPSでも時々renal denervationを行っています。

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(自験例)

小生も数例経験しましたが、6Fr.対応デバイスで0.014ワイヤー越しにablationカテを腎動脈分枝まで進めた後はワイヤーを引き、複数回通電するだけです。カテはらせん状で焼灼できる部分が4つあります。右下の画像にあるようにジェネレーターに4つの数字とグラフが表示されます。これを目安に通電、焼灼が成功したか確認します。手技自体は難しくありません。疼痛コントロールを行うことと、ワイヤーやガイドによる血管合併症に注意すれば比較的安全に行えると思います。

この研究を受けて、より大きなRCTが進むことになると思います。結果がでるのはさらに数年先ですがこの治療方法が薬物治療抵抗性の高血圧患者さんの福音になる日がくればよいなと思っています。