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茂木聡 (Paris, France)

茂木聡 (Paris, France)

Clinical fellow

2018年07月22日

【テーマ】Mogi’s

AMPLATZER Amuletによる左心耳閉鎖術の1年予後評価

Left atrial appendage occlusion with the AMPLATZER Amulet device: one-year follow-up from the prospective global Amulet observational registry

EuroIntervention 2018;14 published online

 

AMPLATZER Amuletによる左心耳閉鎖術の1年予後評価

 

ICPSでは経皮的左心耳閉鎖術も行っています。Watchmanはほとんど使用せず、AMPLATZER Amuletを用いています。ヨーロッパの多施設前向きレジストリーの結果が先のEuroPCR 2018のLate breaking trialで発表されたので紹介致します。

 

背景・目的

経皮的左心耳閉鎖術は主にWatchmanとAMPLATZER amuletにより行われている。これらのデバイスは高い手技成功率を示している。最近の報告ではWatchmanはCHA2DS2-VAScで予測される脳卒中の発生率を84%, HASBLED scoreで予測される出血性イベントの発生率を48%減らしている。旧モデルのAMPLATZER Cardiac Plugでは同様に脳卒中を59%と出血性イベントを61%減らしている。しかしこれらは経食道心エコーに関してコアラボ解析を行っていない。Real-worldにおけるAmuletの1年成績を評価することが本試験の目的である。

 

方法・結果

2015年6月より2016年9月まで61施設から1,088名がエントリー

デバイス留置成功率 99%

1年後のfollow up rate 96.3%

CHA2DS2-VASc score の平均は4.2±1.6 で予測されるstrokeの年次発生率は6.7%

HAS-BLED score の平均は 3.3±1.1 で予測されるmajor bleeding risk は6.7%.

 

患者背景

図1

 

デバイス留置後の抗血小板薬・抗凝固薬の内服の推移

退院時に抗血小板薬のみ(単剤もしくはDAPT)で80.1%の患者が退院し、11.2%の患者は抗凝固薬(抗血小板薬併用を含む)を退院時に内服していた。

12ヶ月後の時点では18.9%の患者が抗血小板薬、抗凝固薬いずれも内服していなかった。

図2

経食道心エコー

デバイス留置時の779症例と1-3ヶ月後に実施されたフォローアップ目的の763症例がコアラボで解析された。フォローアップの時点で98.4%の症例でleakを認めないか3 mm未満のものであった。

 

Stroke, Bleeding

1年のfollow upで29件のstrokeが確認された(2.9%/year)。そのうち、16件はAspirin単剤、9件はDAPT、4件は抗凝固薬内服中に発生した。

1年のfollow upで103件の出血性イベント(BARC≧3)が確認された(10.3%/year)。大部分のbleedingはfollow up早期に発生しており、29%が7日以内の手技関連のものであった。

図3

デバイス関連血栓症

18件(1.7%)/年に認められた。確認時期は特に差はなく、18件中3件にStrokeが発生した。しかしこれらの症例はフォローの経食道心エコーでleakは確認されていなかった。

 

死亡

Follow up中に8.4%の症例が死亡した。その2/3が心血管死亡であった。内2例がデバイス関連の死亡であった。

 

考察

Amuletの使用により予想された脳卒中発生率(6.7%)を2.9%と大いに減少(57%)させた。しかし本研究の脳卒中発生率は以前報告されているEWOLUTION registry (1.1%/year; Watchman) や ACP study (0.9%/year; Amplatzer cardiac plug)と比べて多い。

理由としてはEWOLUTIONでは退院時の抗凝固薬の内服率が高いことが挙げられる。以前の研究と比較し抗凝固薬に比べて抗血小板薬の内服が多かったにもかかわらず、脳卒中発生率が高くなかったのは早期の内皮化が奏功したと考えられる。

同様に出血発生率(10.3%)がEWOLUTION (2.6%/year)より高かった理由は以前の研究よりも出血リスクの高い患者を対象としていたためと考える(72%の患者に大出血の既往歴、83%の患者に抗凝固薬が適応外)。当然DOACのstroke予防評価のための試験と比較はできない。DOACなどの抗凝固薬が使用できないような腎機能障害の患者にはAmuletは有用と考えられる。大出血に関しては抗凝固薬の中止やDAPTの中止が発生率を低下させることに重要である。デバイス血栓に関しては他の研究と同様の発生率であった。Amulet後の至適抗血小板薬・抗凝固薬の内服レジメンの確立が必要である。

 

私見

Amuletは下図のような構造でできています。ASDの治療などと同じように外筒からデバイスの一部(Lobe)を出して引っかかりを確認後にDISCを展開し閉鎖します。事前に撮影して計測した左心耳の深さ、入り口の短径・長径などデバイスのサイズを決定します。大腿静脈アプローチで12-14 Fr.システムです。止血はProglideを用いています。当院では通常挿管の上、3D経食道心エコーのガイドで留置します。一部施設では心腔内エコー(ICE)ガイドで行い挿管をしないこともあります。さらにCTとAngioのfusionも併用し、位置決めを確実にできるよう工夫しています。

図4 dav

特殊な解剖の左心耳であると留置が困難なこともありますが、3D経食道心エコーがきちんと描出できれば手技自体はさほど難しい印象はありません。

難しいことは治療適応だと思います。

この治療のメリットの一つに「血液サラサラ薬を中止できる」ということがあります。

出血性合併症が起こらないようにするために内服薬をすべて中止できれば良いですが、そもそも適応になるような患者さんではすでに動脈硬化が進行しており、PCIやEVTを施行されているケースも多くありAf以外の理由で中止できないケースも多いです。フォローの経食道心エコーで良好な内皮化が確認されているにもかかわらず、本研究では18.9%の患者さんしか抗血小板薬・抗凝固薬の中止ができていません。さらに出血性合併症は事前予測(6.7%)よりも増えて(10.3%)しまいました。

結局他の理由で内服を中断できない場合は脳梗塞の発生確率は大幅に減らすことできるが、周術期の合併症などにより出血性イベントはむしろ増える可能性がある治療になります。

さらにデバイス由来の血栓も内皮化されていても生じることが有り、しかも留置後の時間に関係なく発生することが他の研究でも報告されています。

日本でこの治療が一般化する際は欧米人よりも出血リスクが高いということを加味しなくてはなりません。術後の内服薬の種類と期間は検討が必要と思います。さらに臨床試験をするにあたっても他のSHD interventionと異なりoutcomeが脳卒中でありイベント発生時に他科に入院するため、循環器科で完結できず、試験を行うことも通常の研究より難しいことが多いと予想されます。個人的にはLAAOは好きで、条件さえ合えば大変有効な治療だと思っています。これからのエビデンスの蓄積が良好な成績につながっていくはずです。