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2018年07月22日

Kawakami’s

心房細動アブレーションは予後を改善するか?

引き続き心房細動(AF)アブレーション関連です。今回はAFアブレーションの効果に関する話題提供です。

1. QOL改善効果

動悸に代表されるAFに伴う自覚症状を有する患者さんに対するアブレーションの有効性、特にQOL改善効果は完全に確立していると言って良いでしょう。本邦のガイドラインにおいても有症候性の発作性AFに対して、条件付きではありますがクラスⅠ適応となっています1。正直に申しますと、不整脈医になる前の私はAFアブレーションがどれほど効くのか疑問に思っていました。研修医時代はAFアブレーション症例の担当になるのがとても嫌でした(笑)。なぜなら、当時は手技の内容が全く分からず、そのうえで長時間カテ室に拘束されますし、入院中しか患者と接しないのでその効果が実感できないからでした。しかしながら、自分で外来を持ち、実際にAFアブレーションを行うようになって、多くの患者さんに「すごく楽になった」とおっしゃって頂けるようになって初めてその有効性を実感しました。ちなみに、この症状を緩和しQOLを改善するということは、再発の有無でアブレーションの成否を判定する論文上の議論とは別次元の話です。毎日のようにAFが生じて困っていた方が、たとえ再発があっても無投薬で半年に1回程度の頻度に減り、患者さんが満足されているなら臨床的には成功だと思います。もちろん我々アブレーターはがっかりしますし、科学的には再発になってしまうのですが・・・。よって、最近は再発云々ではなく、AFバーデンという指標が重要視されるようになってきています。ただし、これは植込みデバイス等がないと正確に評価できないのが欠点です。

2. 予後改善効果

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。AFアブレーションは予後を改善しうるか? この点に関しては未だ明確な答えは出ておらず、現在も世界中で様々なトライアルが行われている最中です。そこで今回は2つの代表的な論文と、つい最近学会で発表されたばかりの非常に重要な試験をご紹介させていただきます。

2.1 Catheter ablation for atrial fibrillation is associated with lower incidence of stroke and death: data from Swedish health registries.

European Heart Journal 2016; 37: 2478–2487.2

目的:AFアブレーションが予後を改善させるかどうかは明らかではない。本研究の目的はAFアブレーションと脳梗塞および死亡率の関連性を明らかにすること。

方法:2006年から2012年の7年間にスウェーデンでAFと診断された361,913人を調査した。そのうち4,278人がアブレーションを受けていた。アブレーション治療を受けた患者は非アブレーション患者に比べてより若年(58.7 vs. 74.7歳, P < 0.001)であり、より健康的(平均CHA2HD2-VAScスコア 1.5 ± 1.4 vs. 3.6 ± 1.9, P < 0.001)であった。傾向スコアマッチングを行い(51項目)、両群のサイズおよび背景を可能な限り一致させた(N = 2,836)。

図1

図: 比較対象の決定方法

図2

表(一部抜粋): 両群間のベースライン比較。左が傾向スコアマッチング後、右がマッチング前の全患者比較。マッチング前の差は歴然。

結果:平均観察期間 4.4 ± 2.0年(最小1年)の間に、アブレーション群で78例、非アブレーション群で112例に虚血性脳梗塞が生じた(年間発症率 0.70% vs. 1.0%, P = 0.013)。また、アブレーション群で88例、非アブレーション群で184例が死亡した(年間死亡率 0.77% vs. 1.62%, P < 0.001)。多変量補正後、カテーテルアブレーションは脳梗塞発症の低リスク(ハザード比[HR] 0.69、95%信頼区間 [CI] 0.51-0.93)および死亡の低リスク(HR 0.5、95%CI 0.37-0.62)に関連した。脳梗塞の減少はCHA2HD2-VAScスコアが2点以上(HR 0.39、95%CI 0.19-0.78)およびアブレーション後6ヶ月以降に新たに除細動を行わなかった患者(HR 0.68、95%CI 0.48-0.97)で顕著であった。

図3

図: 虚血性脳梗塞発症率。アブレーション群で有意に低い。

図4

図: 死亡率。アブレーション群で有意に低い。

結論:アブレーションは虚血性脳梗塞および死亡リスクを低減させる可能性がある。アブレーションのメリットは血栓塞栓症高リスク患者で大きい。

私見:アブレーションの予後改善効果を論じる際によく引用される代表的な論文だと思います。前向き介入試験ではありませんが、非常に大きな症例数で検討されています。加えて傾向スコアマッチングを用いて可能な限り条件を揃えた2群間での比較であり、学ぶべき知見に富む重要な論文だと思います。マッチング後の平均年齢は約60歳ですので、我々が普段接する患者さんの年齢に近いデータです(愛媛大学のAFアブレーション患者の平均年齢が62歳くらいです)。しかしながら、アブレーション群と非アブレーション群のマッチング前の群間差は非常に大きく、特に年齢やCHA2HD2-VAScスコアの差は歴然です(表参照)。臨床医は治療方針を決める際に、数値化できない直感を働かせます。たとえ国が違っても、「なんとなくヤバそうな人」には侵襲的な治療は避けたいというのが人情でしょうから、どうしても治療方針を決める際のバイアスは避けられません。傾向スコアマッチングを行ったとしてもこのバイアスを完全に除外することは難しいと思います。ゆえに、結論は「may be associated」としているのだと思います。しかし、それを差し置いても素晴しいデータだと思います。

2.2 Catheter Ablation for Atrial Fibrillation with Heart Failure.

New England Journal of Medicine 2018; 378: 417-427.3

背景:AFを合併した心不全患者の予後(死亡率および罹患率)は心不全単独の患者と比べて不良である。AFアブレーションは至適治療を受けている心不全患者の予後を改善させる手段として提唱されている。

方法:薬剤管理ができなかった(薬剤抵抗性、副作用による中断もしくは患者希望による)有症候性の発作性もしくは持続性AF合併心不全患者を、アブレーション治療群(179例)もしくは薬物治療群(レートコントロールもしくはリズムコントロール)(184例)に無作為に割り付けを行い、ガイドラインに準じた心不全治療に追加した。全ての患者はNYHAクラスⅡ以上の心不全を持ち、左室駆出率が35%以下の低心機能であり、ICD植込みが行われていた。主要エンドポイントは全死亡もしくは心不全増悪に伴う入院の複合エンドポイントとした。

図5

図: 患者割り付け。

結果:中央観察期間37.8ヶ月の間に、主要複合エンドポイントの発生は薬物治療群に比較してアブレーション群で有意に少なかった(51例 [28.5%] vs. 82例 [44.6%]; HR 0.62; 95%CI 0.43-0.87, P = 0.007)。アブレーション群では全死亡(24例 [13.4%] vs. 46例 [25.0%]; HR 0.53; 95%CI 0.32-0.86, P = 0.01)、心不全増悪に伴う入院(37例 [20.7%] vs. 66例 [35.9%]; HR 0.56; 95%CI 0.37-0.83, P = 0.004)、もしくは心血管死(20 例 [11.2%] vs. 41例 [22.3%]; HR 0.49; 95%CI 0.29-0.84, P = 0.009)が有意に少なかった。

図6

表: 主要エンドポイントおよび副次エンドポイント

図7

図: カプラン・マイヤー曲線。(A) 主要エンドポイント(全死亡+心不全入院)。(B) 全死亡。(C) 心不全入院。

結論:心不全患者に対する心房細動アブレーションは、薬物治療に比較して全死亡もしくは心不全増悪に伴う入院の複合エンドポイントの有意な低下に関連した。

私見:こちらは今年のNEJMに報告されたCASTLE-AFトライアルです。おそらくAFアブレーションの予後改善効果をしっかりした症例数で報告したRCTはこれが初めてだと思います(もちろん試験の性質上ブラインドにはできません)。主要エンドポイントは心不全増悪を含む複合エンドポイントになっていますが、個別の検討でも死亡率に差が出ています。心不全を合併している患者さんはAFの悪影響が出やすいですので、アブレーションの効果が発揮されやすいのだと思います。ちなみに、脳梗塞の発症に関してはこのトライアルでは差が出ていませんが、発症率的にはアブレーション群で低率であり、観察期間が長くなれば差が開いたかもしれません。至適薬剤が入っているにも関わらず管理が難しいAFを合併した心不全患者さんにとって、アブレーションは有力な治療選択肢であることが示されたと思います。

2.3 CABANA Trial

Presented by Dr. Douglas L. Packer at the Heart Rhythm Society Scientific Session, May 10, 2018, Boston, MA.4

Catheter Ablation versus Antiarrhythmic Drug Therapy for Atrial Fibrillation (CABANA) Trial: Study Rationale and Design.

Am Heart J. 2018; 199: 192-199.5

2018年5月に開催された米国不整脈学会でCABANA Trialの結果が発表されました。CABANA Trialは世界規模で施行されたアブレーションの予後改善効果を検討したAFアブレーション史上最大・最長の無作為化比較試験です。長年アブレーターが待ち望んだ試験結果であり、予後改善効果を語る上でどうしても外せません。よって、まだ論文として公表されていない試験ですが(試験デザインは掲載されています5)、話題提供という意味で記載させていただきます。執筆に際しAmerican College of CardiologyのHPに提示されているデータを参考にさせていただきました。詳細は下記のサイト4を参照ください。

P: 心房細動患者2,204人(65歳以上もしくは65歳未満で何らかの心血管系リスクを持つ人) ※その他複数のクライテリアあり

I: カテーテルアブレーション1,108人

C: 薬物治療1,096人

O: 主要評価項目 = 死亡/脳梗塞/重大な出血/心停止の複合エンドポイント

追跡期間5年

結果:5年の追跡期間に主要エンドポイントを認めた患者は、アブレーション群 8%vs. 薬物治療群 9.2%であり、両群間に有意差を認めなかった(HR 0.86, 95%CI 0.65-1.15, P = 0.3)。

私見:さて、最後の最後にとんでもない情報を載せてしまいました。中途半端な状態で書くべきかどうか迷いましたが、もう発表されていますし、どうしても外せない重要な試験ですので触れました。公表されている結果を、教科書通りに解釈すれば、「アブレーションは薬物治療に比べて予後改善効果を示せなかった」ということになります。しかし、この試験には大きな問題(HPにはcaveatと記載)があります。それはクロスオーバーの患者が非常に多いことです。

Crossover: ablation to drug: 9.2%, drug to ablation: 27.5%

つまり、アブレーション群に割り付けられた患者約1,100人のうち、約100人がアブレーションを受けていません! また、薬物治療群に割り付けられた患者約1,100人のうち、約300人がアブレーションを受けているのです!!本試験の結果解析はIntention-to-treat analysisですので、実際の治療内容に関わらず最初に割り付けられた群間での比較になります。ルールとは言え、これ比較していいんでしょうか??

では、実際にアブレーションをした患者としなかった患者ではどうだったのでしょうか?その場合は、アブレーション群で有意に主要エンドポイントの発症が少なかったようです。でも、この解析はルール違反のような気が・・・。

皆様いかがでしょうか?この試験は臨床試験の難しさを如実に表していると思います。正確に両群を比較するならば割り付けられた通りに治療が実行されなければなりません。しかし、患者からすると「発作が頻回でしんどいのに5年も待てるか! アブレーションを選ばせろ!!」という人もいるでしょう。一方で、アブレーションを受けようと思っていても、「やっぱり怖くてやめた」という人もいるでしょうし、「最近発作が減ったからもういいです」という人もいるでしょう。それがリアルワールドだと思います。

個人的には、5年というフォロー期間が、一般のAF患者の予後を議論するには短すぎたのではないかと思っております。上記のCASTLE試験が中央値3年です。重症心不全患者の予後を議論するのに3年必要だったわけで、それ以外の人の予後を議論するにはもっと年月が必要なのではないかと思いますが・・・言うは易しです。

議論は尽きませんが、科学的な試験である以上、結果の解釈はしなければなりません。試験責任者はこの結果をどのように解釈するのでしょうか?そして、どのような論文になって我々の前に登場するのでしょうか?心待ちにしております。

※CABANA試験に関してはあくまで話題提供ということをご理解ください。

 

参考文献

1. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン2012. カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン(日本循環器学会)

2. Friberg L, Tabrizi F, Englund A. Catheter ablation for atrial fibrillation is associated with lower incidence of stroke and death: data from Swedish health registries. European Heart Journal 2016; 37: 2478–2487.

3. Marrouche NF, Brachmann J, Andresen D, Siebels J, Boersma L, Jordaens L, Merkely B, Pokushalov E, Sanders P, Proff J, Schunkert H, Christ H, Vogt J, Bänsch D; CASTLE-AF Investigators. Catheter Ablation for Atrial Fibrillation with Heart Failure. New England Journal of Medicine 2018; 378: 417-427.

4. http://www.acc.org/latest-in-cardiology/clinical-trials/2018/05/10/15/57/cabana

5. Packer DL, Mark DB, Robb RA, Monahan KH, Bahnson TD, Moretz K, Poole JE, Mascette A, Rosenberg Y, Jeffries N, Al-Khalidi HR, Lee KL; CABANA Investigators. Catheter Ablation versus Antiarrhythmic Drug Therapy for Atrial Fibrillation (CABANA) Trial: Study Rationale and Design. Am Heart J. 2018; 199: 192-199.