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茂木聡 (Paris, France)

茂木聡 (Paris, France)

Clinical fellow

2018年05月20日

【テーマ】Mogi’s

LFLG ASに対するTAVI前評価としてのドブタミン負荷心エコーは有用ではない?

Transcatheter Aortic Valve Replacement in Patients With Low-Flow Low-Gradient Aortic Stenosis -The TOPAS-TAVI Registry-

J Am Coll Cardiol. 2018;71:1297–308

 

LFLG ASに対するTAVI前評価としてのドブタミン負荷心エコーは有用ではない?

 

大動脈弁口面積(AVA)が1.0 cm2未満であっても平均圧較差(mPG)が40 mmHg未満であるASはしばしば見受けられます。Low-EF (LVEF<50%)かつlow-flow (stroke volume index <35 mL/m2)の重症AS (弁口面積<1.0 cm2)は古典的Low-Flow Low-Gradient AS (LFLG AS)とされています。AS全体の5~10%に認められるとされます。

今回多施設でのLFLG ASに対するTAVIの成績が報告されましたので紹介したいと思います。

 

目的:LFLG ASに対するTAVIの成績を評価する

方法:2013年1月より2017年1月まで欧米の14施設でTAVIを受けた287名を前向きにフォローした。

LFLG ASの定義:AVA<1.0 cm2かつmean PG<35 mmHgかつLVEF<40%

TAVIの適応やデバイスの種類は各施設に委ねられた。

患者背景: 平均年齢 80±7歳, 男性 72%, NYHA3-4 84%, Euroscore2 10.5, STS-PROM- 7.7%

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82%の患者に対してTAVI前にドブタミン負荷心エコー (DSE)が施行された。ドブタミン負荷による心拍出量(SV)の20%以上の増加を“Contractile reserve”とし、DSEを施行した45%にcontractile reserveが確認された。

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結果:30日死亡率 3.8%。平均21ヶ月フォローし、計112名がフォロー中に死亡(うち54名が心血管死)した。また71名(24.7%)が心不全による再入院があった。DSEによるContractile reserveの有無で短期・長期ともに予後に差はなかった。

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EFはTAVI後に有意に増加し、これもContractile reserveの有無で差はなかった。

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考察:外科的AVRと比較しTAVIはLFLG ASに対して安全な代替治療として考えることが出来る。以前の報告ではLFLG ASに対する外科的AVRの30日死亡率は5-30%とされていたが、今回の検討では3.8%と良好なものであった。TAVIでは体外循環を使用しないことや心筋へのダメージが少ないことが良い結果につながった可能性がある。一方、中期予後に関しては2年で約1/3の患者が死亡している。貧血、COPD、中等度以上の弁周囲逆流は死亡に対する寄与因子であった。

1年後の時点でLVEFは半数以上の患者で改善した。外科的AVRよりも早期にEFが改善することはLFLG ASに対しては特に重要と思われる。外科的AVRではcontractile reserveが無い場合、周術期死亡が22-33%と高値でありさらにAVR後の予後も悪いことが知られていた。本研究ではContractile reserveが無い症例の30日死亡率は5.6%で、ある症例は1.2%であったが有意差はなかった。臨床的にTAVIの適応がある場合、DSEでのcontractile reserveが無いことが理由でTAVIをしないことがあってはならない。

 

私見:この論文はTOPAS (True or Pseudo Severe Aortic Stenosis)レジストリーの一部になります。初期の少数例での報告(JACC Cardiovasc Imaging. 2015 Mar;8(3):380-2.; Sapienが全ての症例で使用され、心尖部アプローチが40%)では従来のSAVRと同様にDSEでSVが増加しないケースの予後は不良とされていました。

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しかし今回の報告ではcontractile reserveの有無で長期予後に差がありませんでした。心尖部アプローチが20%、Sapien, Sapien XTの使用が71%と少し低侵襲化が進んでいます。著者も今までの結果と異なることが得られた理由にはTAVIの低侵襲化も一つであると考察しています。

LFLG ASには大動脈弁の高度狭窄による後負荷が原因で収縮障害が生じるtrue severe AS と,心筋症や虚血性心疾患など他の原因で生じた左室壁運動低下により大動脈弁の開放が制限されるため見かけ上の弁口面積は小さくなるpseudo severe AS が存在します。この両者を鑑別するには,ESC/AHAのガイドラインではDSEが有用な検査であることが記載されています。DSEで最大負荷時でのAVA≦1.0 cm2 かつmean PG≧40 mmHgに増大するものをtrue severe AS、増大しないものでCT上石灰化スコア(Agatston calcium score)が基準以下であった場合はpseudo severe AS と診断します。過去の報告ではpseudo severe ASに対しては保存的加療が推奨されていました。

今回のTAVIの適応は純粋なtrue severe ASとは記載されておらず、“LFLG ASで各施設のheart teamがTAVIの適応と判断したもの”となっています。Limitationにも記載されていますが、エコー計測結果はコアラボを使用しておらず、大動脈弁のAgatston calcium scoreも計測していません。従って中にはpseudo severe ASに対してもTAVIが施行されているかもしれません。

いずれにせよ今まで”DSEの反応性が予後を評価する”とされていたエビデンスに一石を投じる論文かと思いました。

また別の論文(JACC 2018;71:475-85)になりますが、同じくTOPASレジストリーよりDSEで得られる指標について報告がされています。今までは負荷時のmean PG (MGpeak)とAVA (AVApeak)に注目されることが多かったと思いますが、AVA proj≦1.0 cm2もしくはindexed AVA proj≦0.55 cm2/m2がAVR/TAVIを受けなかった際の予後規定因子として重要であることが報告されています。

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LFLG ASに対してmedical treatmentを選択した場合、AVA proj≦1.0 cm2は予後が不良のようです。