今取り組んでいる研究とその思い
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ESC2020 抄録検討会
2020年1月22日

弁膜症診療における3D modalityとエコーの融合

12月に入りオランダはかなり寒くなってきました。東京に住んでいた私からすると-5℃くらいの感覚ですが、天気が変わりやすく雨が降ったり止んだりして地味に面倒くさいのがオランダの気候の特徴です。
図1
自宅からみた夕焼け。まだ17時前ですが、冬は日が落ちるのが早いです。
さて今回は私がLUMCで取り組んでいるテーマに関してです。
 
1) 与えられている環境
私の立場(International fellow)の人々にはDesk top PCが一人一台与えられ、それぞれEchoPAC (GE社)というエコーのワークステーションが使用できるようになっています。ここからLUMCで行なった全てのエコーデータの閲覧、解析ができます。過去に遡れば2000年くらいから全てのデータが使用可能です。普通は一病院に1,2台くらいのものなので、これだけでも良い環境だなと思うのですが、それに加えてそれぞれの研究に必要なソフトをインストールしてくれます。私のPCには現在、Philips社製の別のワークステーションであるQ-LabとCT解析用のソフトウェアがインストールされています。データに関しても使用可能な臨床データは基本的にいくらでも使用可能であり、さらにそれぞれ疾患別にデータベースがあるので何かアイディアが思いつけばいくらでも研究を始めることが可能です。日本にいた頃とは考えられないくらい恵まれた環境であり、ここから毎日データを解析しているという生活を送っています。
2) 現在行なっている研究テーマ
これまでのレビューやレポートでもちょくちょく触れてきましたが、私のメインテーマは弁膜症におけるエコーの限界を他のmodalityと融合させることで乗り越えるというものです。LUMCではMRIについてはそれほどデータの蓄積がないため、現時点ではMDCTを用いた解析を行なっています。
まず一つ目に与えられたテーマは、右心機能のエコーによるストレイン解析とCTで計測した右室駆出率(RVEF: right ventricular ejection fraction)の比較に関しての論文です。最近はだんだん右室機能に注目が集まるようになってきたものの、やはりその構造やエコーでの評価の難しさから右室機能の正確な評価については研究の余地がある分野です。LUMCからは以前に三尖弁逆流を有する患者におけるRVストレインの予後予測に関する有用性についての報告がなされており[1]、本研究はそれを3次元modalityでの評価と比較することを目的としています。データ自体はかなり前に計測し終わっているのですが、論文はやっと全体が書き上がり、どこに投稿しようか検討中です。
二つ目の論文はMitraClipと僧帽弁構造に関する3Dエコーを用いた研究です。こちらはmultimodalityではないのですが、以前にも用いたことのあるソフトウェアでの解析だったため比較的画像の解析はスムーズで、論文もほぼ作成し、現在はボスのチェック待ちになっています。
その他のテーマについてはまだ検討段階であったり、アイディアを相談している段階であったりします。小さいプロジェクトまで入れると5-6個くらい同時並行で進めることができればいいなあと思っています。
3) 今後の注目しているトピック
i) 性差について
私が注目しているというよりも全世界的に注目を集めているトピックの一つが、性差についてではないでしょうか。弁膜症分野にもそのような流れが押し寄せているため、自身の研究テーマを考える際にどこかでこの概念を組み入れられればいいなと思っています。
ii) 右室リモデリング
右室機能の経時的な変化に関してはまだ不明な点が多く、LUMCの長期的なデータの蓄積を生かした検討をできたらいいなと考えています。
iii) 新しいソフトウェア
LUMCではまだ一般に使用されていない様々なソフトウェアが使用可能であり、それらを用いた研究を行えるのも一つの強みです。二つほど今現在我々が使用しているソフトウェアを紹介させていただきます。
一つ目はMyocardial work evaluation用ソフトウェア(GE社)です。まだあまり臨床応用されている施設は少ないのではないでしょうか。このソフトウェアは血圧と左心室のストレイン値から、圧容量曲線を推定し心筋の仕事量を計算するソフトウェアです。心筋の仕事量に加え、3つの副次的な値(Constructive work, Wasted work, Work efficiency)が推定され計測されます。Constructive workは収縮期に収縮する正の仕事量に等容弛緩期に弛緩する負の仕事量を加えたもの、Wasted workはそれとは逆に収縮期に弛緩する負の仕事量に等容弛緩期に収縮してしまう仕事量、Work efficiencyはConstructive work/(Constructive work + Wasted work)で計算されます。これらの値は心臓全体で計測できるのみならず、各セグメントにおける値を算出することも可能です。これまで、左脚ブロック症例での心室中隔におけるWasted workの増加[2]や、CRT responderにおける心室中隔のWasted workの減少など[3]が報告されています。今後も様々な症例における有用性が検討されるソフトウェアではないかと思います。
Myocardial work (Myocardial work evaluation; 文献4より引用)
二つ目は、MDCTのfeature trackingソフトウェアです。簡単に言えばストレイン解析をCTで行えるソフトウェアです。MRIではすでに臨床応用もされているようですが、MDCTではかなり新しいソフトウェアのようです。同僚のDr. Gegenavaがこのソフトウェアを用いた研究で最近論文を書きました[5]。私も少しだけ解析のお手伝いをしたので共著者になっています。ただしfull-beatのCTデータを用いるため、患者側の被曝などの面から臨床的にそれほど使用するタイミングはないのかもしれません。ただ、研究用としてはかなり心強いソフトウェアですので何かの機会に使用してみようと企んでいます。
Feature tracking on MDCT(MDCTによるfeature tracking; 文献5より引用)
他にもよく知らないソフトウェアが他の人のPCに突然導入されていたりするので、見逃さないようにしようと思います。これらのmodalityをどのように組み合わせて弁膜症の新たな知見を見つけていくか、考えていきたいです。
 
[1] Prihadi E et al. Prognostic Implications of Right Ventricular Free Wall Longitudinal Strain in Patients With Significant Functional Tricuspid Regurgitation. Circ Cardiovasc Imaging. 2019;12:e008666.
[2] Russell K, et al. Assessment of wasted myocardial work: a novel method to quantify energy loss due to uncoordinated left ventricular contractions. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2013;305:H996-1003.
[3] Vecera J, et al. Wasted septal work in left ventricular dyssynchrony: a novel principle to predict response to cardiac resynchronization therapy. Eur Heart J Cardiovasc Imaging. 2016;17:624-32.
[4] El Mahdiui M, et al. Global Left Ventricular Myocardial Work Efficiency in Healthy Individuals and Patients with Cardiovascular Disease. J Am Soc Echocardiogr. 2019;32:1120-1127.
[5] Tea Gegenava, et al. Feature tracking computed tomography-derived left ventricular global longitudinal strain in patients with aortic stenosis: a comparative analysis with echocardiographic measurements. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2019 (in press)

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