立ち止まって考えるのも、悪くない

普段はオフィスで仕事をしていますが、週1-2回、コロンビア大学のカテ室へPCIのサポートをしに出かけます。オフィスでは一日中PCに向かって仕事をしていることがほとんどで、仕事内容によってはあまり会話の機会がなかったりするので、カテ室で過ごす時間は、英語力を磨くチャンスであり、またアメリカの医療、文化を体感する貴重な機会です。また、月に1回IVUS Readingというイメージング中心の症例検討会があり、カテ室で経験した興味深い症例を持ち寄り、ディスカッションします。
 
・研究について
仕事の中心は、自分の研究テーマに沿って画像を解析したり、データをまとめたりすることです。これまでPCIの際にイメージングを使用することはよくありましたが、何か特定の観点を設けて、その観点から大量の画像を一度に見る、という経験はあまりありませんでした。同じ画像でも視点が違うと全く違った画像に見えるのが、イメージングの面白さだと感じています。イメージングから得られる情報量の多さを知るほど、これまで治療にこれらの情報を十分生かせていなかったことを痛感します。画像を集中的に見ることで、これまでわからなかったことが理解できたり、逆に当たり前だと思っていたことに疑問を感じたり、日々新しい発見があり充実した時間を過ごしています。
 
昼になるとオフィス周辺にはたくさんの屋台が。毎日何を食べるか楽しみです。 img_1832
 
 
お気に入りの屋台、チキンオーバーライス。やみつきです。 img_1781
 
 
・カテ室業務について
日本のインターベンショニストはIVUSやOCT等のイメージングをほぼ全例に使用しますが、アメリカにはそのような習慣がありません。このため、オペレータによっては血管内イメージングの知識が十分でない場合もあり、イメージングのフェローが治療のサポートにあたります。ステントのサイズを決めるような単純なディスカッションがほとんどですが、これを英語で行うのはなかなか大変です。幸いにもオペレータがこちらの立場を尊重し意見を聞き入れてくれるような雰囲気があるため、丁寧に読影したり、うまく表現できなかった言い回しを復習したりして、信頼を得られるよう努力しています。コロンビア大学のカテ室での時間は、英語の練習のほかに、アメリカの医療に触れる機会でもあります。スタッフの働き方も、PCIのやり方も、保険制度も、日本とは大きく異なり、いろいろと考えさせられます。アメリカ医療の優れた部分ももちろんありますが、概して日本の医療の方がきめ細かくて丁寧だと感じることが多く、恵まれた環境で臨床医としての基本を学ぶことができたことを、あらためてありがたく感じています。
 
コロンビア大学の付属病院。カテ室は9つあり、症例数も多いです。 img_1783
 
仲良しの同僚と。カテ室では、机に向かって仕事をしないからか、たくさん友達ができます。     img_1773
これまでの臨床医としての仕事とは全く異なる生活で、臨床から離れることに不安を感じないわけではありませんが、循環器内科医としてひととおりのことができるようになった段階で、いったん立ち止まって動脈硬化という病態をじっくり考えたり、サイエンスとしての医学を学び直す機会を得られたことは、不器用な私にとっては非常にありがたいことであったと思っています。医師という職業には本当にいろいろな側面、フィールドがあり、あらためてこの仕事の面白さを実感するとともに、このたくさんの選択肢の中から何を選び取り、職業人としてどのようにして生きてゆきたいのか、自問自答しているところです。

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藤野 明子(New York, USA)