CABG後の糖尿病患者に対する、DAPTとアスピリン単剤投与の比較

Dual Antiplatelet Therapy Versus Aspirin Monotherapy in Diabetics With Multivessel Disease Undergoing CABG: FREEDOM Insights.
van Diepen S et al. J Am Coll Cardiol. 2017;69:119-127.
本研究は2012年に報告されたFREEDOMトライアルのデータを用いて、糖尿病患者のCABG後のDAPT治療の妥当性について後ろ向きに検討したものです。現行のAHA/ACCガイドラインにおいては、ACSに対するCABG後のDAPT継続が推奨されていますが、CABG後の抗血小板療法に関して、RCTによる検証は未だなされておりません。現在進行中のTiCAB Trial (de Wata A et al. A randomized, parallel group, double-blind study of ticagrelor compared with aspirin for prevention of vascular events in patients undergoing coronary artery bypass graft operation: rationale and design of the ticagrelor in CABG trial. Am Heart J 2016;179:69-76.)の結果を待ちたいところです。
〔背景/方法〕
糖尿病はCABG患者の周術期/長期の死亡率を上昇させ、また静脈グラフト閉塞リスク因子であることが知られている。こうした背景から、DAPTはCABG後の糖尿病患者にとって二次予防効果を発揮する可能性があるが、これを裏付けるエビデンスはまだ少ない。本研究では、FREEDOMトライアル(N Engl J Med. 2012; 367: 2375-84.、8割が3枝病変を有する患者)のデータを用いて、多枝病変に対してCABGを施行された糖尿病患者の予後を、DAPT対アスピリン単剤で比較した。
対象と研究デザイン:対象は、2枝以上に≥70%狭窄を有する糖尿病患者のうち、CABGによる血行再建が行われ、術後30日間アスピリンを投与された患者。術後30日の時点でアスピリンとチエノピリジン(クロピドグレルもしくはチクロピジン)を服用していた患者をDAPT群とし、アスピリン単剤群との予後(①5年、②1年)を比較した。ワーファリン服用患者は除外。
エンドポイント:プライマリアウトカムは、5年フォローアップにおける全死亡、心筋梗塞、脳卒中。セカンダリアウトカムは、血管死、心筋梗塞、入院(不安定狭心症、心筋梗塞、心不全、胸痛、不整脈、末梢血管疾患、脳卒中、TIA等によるものと定義)。セイフティアウトカムはmajor bleeding、 輸血、出血による入院。
〔結果〕
① 最終対象患者は795名(FREEDOM TrialでCABG群に割り付けられた患者の83.9%に該当)。術後30日の時点で544名(68.4%)がDAPT、251名(31.6%)がアスピリン単独投与による内服加療が行われており、チエノピリジンによる治療期間の中央値は0.98年であった。→およそ2/3の患者が術後約1年間DAPTによる内服加療を受けていた。
② 5年間の追跡において、プライマリ複合アウトカム(全死亡、心筋梗塞、脳卒中)に関する両群(DAPT対アスピリン単独)比較において、有意差は認めなかった(12.5% vs 16.0%; adjusted HR: 0.83; 95% CI: 0.54 to 1.27; p=0.39)。セカンダリアウトカムおよびセイフティアウトカム(上記)においても同様の結果であった。
③ 周術期ACS、SYNTAX スコア、完全血行再建、DAPT継続期間などのサブグループ解析の結果も、同様であった。
〔結論〕
FREEDOMトライアルの解析において、CABG後の糖尿病患者のDAPT加療はアスピリン単独加療と比較して高率であったが、DAPTと全死亡、心筋梗塞、脳卒中の関連は認めなかった。また出血合併症についてもこれらのエンドポイントとの関連は認めなかった。CABG適応疾患の違い(ACSか非ACSか)、CADのcomplexity(SYNTAX score)、完全血行再建の有無、DAPT継続期間等についてのサブグループ解析においても、関連は認めなかった。

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藤野 明子(New York, USA)