停滞感からの脱却を

名古屋大学よりイタリアミラノのSan Raffaele Hospitalにこの4月末から留学をしています田中哲人(あきひと)です。今回よりSUNRISEの Reporterを務めさせていただける事となりました。
1) なぜ留学しようと思ったのか
留学を考え始めた理由は、ありきたりではありますが、自分の中での停滞感が大きくなってきた事、自分の狭い視野を若いうちに少しでも変えることができれば、といった事でしょうか。
H16年に名古屋大学卒業後、地域の基幹病院で研修医として勤務を開始、当初は99%小児科志望でしたが、循環器のDynamicさに触れ、気づくと循環器科を選択していました。その心変わりに最も関わる先生(米国に留学)の影響で、循環器科に進んだ早期から、日常臨床の中でデータをまとめ発表をする事の面白さは感じるようになっていました。毎日夜中までの日常業務と並行してデータをまとめ、時に発表をするという生活はそれなりの充実感(自己満足?)を与えてくれました。
その後、名古屋大学附属病院に帰局するまでに複数の施設を経験でき、多くの先生に影響を受けました。新しい環境、出会いは常に自分に新しい感覚をもたらしてくれました。
ただ、いつ頃からでしょうか、いろいろな事が軌道に乗る充実感とともに、自分の中での停滞感にも苛まれるようになりました。
元々の自分の性格を改めて分析してみると、石橋を叩いてそれでもしばしば渡らない、といったところがあり(おそらく物心がついた頃から)何事も常に無意識に安全域を確保しつつ行動している気がします。医師として実臨床において、それはおそらくプラスに働いていると思っていますが、と同時に新しいものや変わったものに対しての自分の柔軟性や、視野を制限し、自己の成長を大きく規定してきたと思います。そういった自分を根幹から揺るがしてくれるもの、と考え始めたのが海外留学でした。
2) なぜ現在の留学先を選んだのか
留学先を考えていた上での条件としては
1. Coronary, Structure含め実際に多くの症例があること
2. 実臨床にLinkしたoutputを多く出していること
3. 自分の中の既成概念を壊してくれるような(?)国であること、でした。
元々名古屋大学は基礎研究で留学されている先生がほとんどだったので、まずは臨床に関わる留学に関しての情報を集めるところから入りました。当時はまだこのSUNRISE研究会のような情報発信の場を見つけることはできませんでしたが、上司、先輩方が強くsupportしてくださり、多くの留学経験の先生方にもお会いし話を聞くことができました。また同時にPublicationや学会発表などのsearchも続け、その結果、現留学先であるミラノのAntonio Colombo先生の施設を希望先として考えるようになりました。
同施設は1,2を兼ねており、かつ3ですが、日本人とはかけ離れた思考回路を持つところで生活し、すべての先入観を捨てて色々な視点に触れてみたいという自己テーマには、イタリアはまさにピッタリかなと感じました。
アプローチとしては、同施設に留学歴のある先生にお願いし、EuroPCR2014にてColombo先生のSession終わりを待って紹介していただき、CVを渡し簡単に自己紹介をしました。アポ無しでしたが非常に優しく聞いて下さり‘いつでも見学に来なさい’という返事をいただくことができました。この後のやり取りの際に一つ驚いたのが、Colombo先生のメールの返答の速さです。とても多忙なはずなのに、秘書さん宛に送った事務的メールもCCで入れてあるColombo先生の方からすぐに返信があり、感銘を受けたのを覚えています。その翌月に1週間の見学にいきましたが、その際同施設だけでなく、街で出会う人々の雰囲気も気に入り、その場でColombo先生に受け入れをお願いしたところ、心よくOKをいただくことができました。
3) 留学するにあたって困難であった点とどのように解決したか
1年半前より留学先探しを始め比較的時間的猶予はあると思っていましたが、留学先の決定や助成金の事など、時間はあっという間に過ぎていきました。最も大変だったのがビザの問題です。これは何度も心が折れそうになる経験でした。結果的に出発が予定より半月遅れたものの何とか取得することができたのは、1年前から新東京病院より同施設に留学中の川本先生を始めとして多くの方々に多大なサポートをいただいたおかげであり、大変感謝しています。(具体的な助成金、ビザの問題はまた次回触れたいと思います。)
写真1
写真1:Columbus Hospital: Private hospitalでSan Raffaele Hospitalとは別に週に何度かこちらで症例があります。元々Alfa Romeoの会長の自宅だったものを改装して作ったとのこと。

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田中 哲人(Italy)