”Baker Institute”って、パン屋さん研究所?

皆さんこんにちは。今回は留学先のご紹介です。
【施設について】
私の留学先はBaker Heart and Diabetes Instituteです。メルボルンNo.1と評判のAlfred病院に隣接する1926年設立(もうすぐ100周年!)の由緒正しき循環器病研究所です。基礎研究はもちろん、Alfred病院をはじめとする多くの病院と共同で臨床研究を行っています。写真の建物、通称Baker Towerは基礎研究のラボが集まっており、臨床研究のラボは隣接するAlfred Centreの4階にあります。職場環境はとても快適です。
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Baker Tower近景。Bakerの文字が輝いていて格好良いです。初めは「パン屋と何か関係が?」と思っていました(笑)。
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左: 遠景。手前の建物がAlfred Hospital。矢印はヘリポート。
右: 患者を搬送してきたドクターヘリ。何の前触れもなく、突然ヘリが着陸してきます。その下は普通に人や車が通っています! 恐ろしい・・・。
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左: 左端の建物がAlfred Centre。
右: Alfred Centreには様々な機関の研究施設が入っています。Centreの綴りに注目!
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私のデスク。SPSSをはじめとする統計ソフトやEndNote等が自由に利用できます。エコーの解析もここでできちゃいます。とっても快適!
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左: 休憩室。食洗機やコーヒーメーカー完備。冷蔵庫にはおいしい牛乳がたくさん(飲み放題)。さすがオーストラリア!
右: 休憩室からの眺め。遠くにメルボルンの中心地が見えます。
【上司】
私のボスはProfessor Tom Marwickです。現在Baker InstituteのDirectorをされています。心エコーをはじめとするイメージングの大家でありながら、MPH (Master of Public Health)を取得している臨床統計のスペシャリストでもあります。「統計」と聞くと堅苦しい印象を抱かれるかもしれませんが、Marwick先生と研究の話をしていると自然に統計の話が出てきます。「データから得られた知見を、より分かりやすく有益な形で臨床にフィードバックさせるために、統計というツールを使いこなしている」、そんな感覚です。いつも分かり易く指導してくれます。YIAでも触れましたが、私はこの先生の指導を受けたくてBakerを選びました。これまで研究面、特に統計に関してはしっかり勉強をしたことがなく完全な自己流でした。そのため、「アイデアはあっても適切な検討方法が分からない、だからいつも分かる範囲の検討で済ませてしまう」という情けない状況に陥っていました。そんな時にMarwick先生の元に留学されていた先輩が帰国されました。研究方法や統計に関する私の疑問をいとも簡単に解決してくださる先輩の姿に感動したのが留学先選定の決め手でした。留学実現のために大勢の方々にご支援いただきましたが、その中で最大の恩人がこの先輩です。この場をお借りして心より感謝申し上げます。
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ボスのオフィスにて。ボスのオフィスはBaker Towerの最上階にあります。見晴らしが最高!
【日常業務について】
現在の私の立場はVisiting Researcherです。決まった就業時間があるのかどうかは良く分かりません。何となく皆さん9時5時のような雰囲気ですが、結構適当です(笑)。非常勤研究者やPhDの学生も多く、雇用形態が個人個人で異なるためだと思います。例えば私のデスクのお隣さんはリサーチナースですが週3勤務です。本人はもっと働きたいようですが予算の関係だそうです。人件費は完全に研究資金に依存しており、資金を獲得できなければ誰かが職を失うシビアな世界です。私は無給ですがボスの厚意で家族全員の医療保険料をカバーしてもらっており大変感謝しております。
私の研究テーマはイメージング(主に心エコー)の臨床応用です。私が不整脈医ということで心房細動関連の研究に従事させてもらっています。画像解析を行い、データをまとめ、毎週木曜日のボスとのミーティングに望みます。このミーティングは私の最優先事項であり、毎回入念な準備を要します。また、ここで全てが決定されますので、一言たりとも聞き逃す訳にはいきません。英語力の乏しい私は許可を得てICレコーダーを持参してます(これお勧めです)。ちなみに、ボスは普段とても優しく温和な方ですが、研究の話になると雰囲気が一変し、一瞬で戦闘モードになります。よく「スイッチが入る」と言いますが、私には本当にボスのスイッチが見えています(笑)。
【休日】
土日祝日は完全オフです。私もよほどのことが無い限り職場に行きません。論文やレポート執筆など、家で出来ることは家でするようにしています。オンコールや当直はもちろんありません。臨床から完全に離れる不安が皆無ではありませんが、今はこの開放感とストレスフリーな生活を満喫しています。休日は終日家族と一緒に過ごします。こちらに来てから本当に家族の絆が強くなったと感じます。メルボルンでは頼れる親類は1人もいません。息子の幼稚園の申請書に「緊急時における両親以外の連絡先」という項目がありました。日本でしたら祖父母や親戚にお願いできますが、こちらではそうはいきません。事情を説明して白紙で受け取ってもらいました。改めて家族の大切さを考えさせられました。日本に帰っても家族の時間は大切にしようと思います。
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日曜日の午後、公園で息子と一緒にのんびりひなたぼっこ。最高に贅沢な時間です。
 
番外編:夫もしくは父のわがままに振り回された家族の留学奮闘記
第2話「海外に行くことを実感したのはいつ?」
妻の場合:
妻 「警察署に行った時かな?犯罪歴が無いことの証明をもらいに行って指紋を採られた時。何も悪いことしてないのに何で指紋採られなきゃいけないの?と思ったよ。この時に普通じゃないことが始まるんだーと思ったかな。」
※オーストラリアの長期滞在ビザを取得するためには犯罪経歴証明書の提出が必要でした。取得の際に愛媛県警本部で入念な指紋採取が行われました。私も何だか取り調べを受けている様な気分になりました。妻の指紋採取の際、母親から引き離された次男が警察署内で大暴れして大変でした・・・。
子供達の場合:
長男 「おもちゃが無くなっていったとき・・・」
次男 「あーーーー(お兄ちゃんに同調している?)」
※子供達のおもちゃは出国前に船便で送りました。輸送準備のために大好きなおもちゃが日に日に減っていくのは相当辛かったようです。無事メルボルンにおもちゃが届いた時の喜び様はすごかったです。
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大好きなプ○レールで遊ぶ子供達。おもちゃの他に日本語の図鑑なども船便で送りました。輸送費は高くつきましたが送ってよかったです。
つづく

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川上 大志(Melbourne, Australia)