『Does medical education kill creativity?』

まず初めに、今月も重城聡のページに来てくださりありがとうございます。
せっかくこのページに訪問してくださった方たちの時間を有意義なものにできるように、毎月レポートを書いております。今回は皆様の貴重な時間を20分頂けますでしょうか? 私の今月のレポートの意味を少しでも理解していただくために是非とも参考にしていただきたい20分のyou tubeの動画があるのです。イギリスの教育学者、Ken RobinsonさんのTED talkです。教育関係の世界ではSir Ken Robinsonと呼ばれる、世界の教育の向上において重要な、知る人ぞ知る人物です(英語が少しでも苦手な方は、ぜひyou tubeの設定を使い、日本語の字幕を表示して見てください)。
https://www.youtube.com/watch?v=iG9CE55wbtY
Ken Robinson
 
皆様の貴重な20分間を割いて頂きありがとうございました。それでは、今月のレポートを始めさせてください。
1. 帰国後の目標
かつて、麻酔科ローテートの初期研修医で、以下のような事を言ってい者がいました。
『指導医の教育方針が一貫せず、また各指導医がそれぞれの経験と偏見だけで指導しているので、麻酔を学ぶことが難しかった。指導者は教育学を学んでから指導に当たってほしい。』
なかなか辛辣なコメントだ思います。研修医のくせになんて失礼な奴なんだと、思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私はこの研修医の主張していることは間違ってはいないと考えています。ただし、この研修医からのコメントは間違ってはいないのですが、現状の指導医たちに教育学の知識を要求するのは無理なお願いなのではないかと私は考えています。我々日本人医師は、医学生時代に教育学の授業を受けたことはありませんし、もちろん大学受験にも教育学は含まれていません。それぞれの指導医が、かつて指導されてきたように研修医たちに教える以外に、現状の指導医は選択肢がないのです。よって、指導医を責めるわけにもいきません。
このような状況の中、教育学を要求する研修医たちの無理難題に耐えられる指導者になるために、私はわざわざ日本を離れて医学教育に力を注いでいるハワイ大学にやってきた、と言っても過言ではありません。ハワイに来て半年、医学教育学の初歩に触れたのみでまだまだ道のりは長いです。ただ、2年間医学教育学を学べば、少なくともあの研修医の要求に耐えうる、”教育学を学んだ指導医”として、帰国することが出来ると確信しています。
話は変わりますが、サッカーのナショナルチームの監督は、指導者としての資格がないと就任できないと聞いたことがあります。ワールドカップでMVPを取った選手でも、サッカーの指導者として働くには別の資格が必要だという事です。また日本サッカー協会は、子供たちのサッカー教育を一番に重要視していると聞きます。一方、日本の医学教育にあたる人間は、教育の経験も資格も必要とされません。日本の医学教育は日本サッカー界の足元にも及ばないと私は確信しています。
昨年、サンライズのプレゼンテーションでの質疑応答で、私は審査員からの質問に対して、以下のように答えました。
『大学病院での教育担当は、誰もやりたがらないけど、誰かが指名されてしかたなくやっている。それがいまの大学の教育の現状。だけど、私は、その医学教育にスポットライトを当てたい。』
医学教育の現状を考えて、私が出した答えでした。
私の在籍している亀田総合病院は、日本でも有数の研修医に対する教育が充実している病院です。私はその亀田総合病院にもサポートしてもらい、医学教育の勉強をしています。まずは、亀田総合病院の教育に力を入れている先生方と協力して、今後の日本の医学教育のモデルとなるような教育システムを構築していきたいと考えています。また、それと同時に、地元の小学生、中学生、高校生の教育に関わることを考えています。

未来を生きるのはだれなのか? 未来を変えられる可能性を持っている者はだれなのか? おそらく、それは僕よりも、想像力・柔軟性がまだ殺されていない子供たちではないでしょうか。医学教育で得た教育学の知識を、医学の世界だけではなく、子供たちの教育にも還元していきたい。
このような私の思いを少しでも理解していただくために、Ken RobinsonさんのTED talkを最初に見ていただきました。
『Do schools kill creativity?』
Ken Robinson
アメリカでもイギリスでも、おそらく現在の世界中の学校教育は、子供の創造性を殺している。彼はそう言っています。日本の医学教育も、研修医の創造性を殺しているかもしれません。また、医学教育の問題点の根源は、それ以前の学校教育から始まっているかもしれません。
以上より、僕の帰国後の目標は、亀田総合病院の卒後教育システムの向上+地元の子供たちへの教育です。

2. 帰国後、SUNRISEネットワークを使ってやりたいこと

教育というキーワードが当てはまらない領域はありません。SUNRISE研究会が考える、『政治、マスメディア、倫理、哲学、法律、リーダーシップなどの革新的なテーマ』のすべてに教育は絡んできます。あらゆる分野に当てはまる教育を私がテーマにしているからこそ、麻酔科医の私でもSUNRISEの先生方からサポートを受けることができたのではないかと考えております。今後、SUNRISEの先生方が教育方法や教育効果に関して疑問が生じた際に、教育学という異なった視点から意見ができるように、あと1年半教育を研究します。そして、私の目標が実現した暁には、世界の教育を変えるための次なる私の活動に投資していただきたいです。

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重城 聡(Hawaii, US)