年間症例数よりも、ScientificなOutputについて話題に上らない日はない

アサンメディカルセンターは韓国最大規模の病院で病床数は2,680、循環器内科の病床数は約80と非常に大規模なセンターである。韓国は国策として有力企業のバックアップを図っており、Hyundai、SAMSUNG、LGなどの巨大企業が欧米、アジアをはじめ世界中で大きな収益を上げている。これらの大企業はグループ企業として様々な業種を運営しているが、その一つに医療業界がある。アサン病院はHyundai系列の病院として、1989年にソウル中心病院として設立された。その後、2002年に病床数2,680、面積280,300m2の現在のアサンメディカルセンターとして新たに設立された。外来患者は平均11,809人/日、入院患者は平均922,384人/年(2,537人/日)、救急患者は106,846人/年、外科手術は58,256人/年と病床数だけでなく、稼働率も韓国随一を誇る。循環器内科に目を向ければ、その中にはインターベンション部門、不整脈部門、エコー部門、心不全部門、高血圧部門と別れているが、やはりインターベンション部門が最大である。それでも、スタッフは7人(他の部署が2~3人)と少数精鋭である感は否めない。スタッフの他に、フェローが各学年5,6人、その下に病棟業務をこなすレジデントがおり、3層構造で患者を診ている。ちなみに、フェローは2年目までは各部署をローテートし、インターベンションは1年のうち4か月程度のみ研修する。3年目になると、フェローは専門分野を選択することになるが、フェローが希望した部門に行けるとは限らない。その部門への適性、それまでの貢献度などが総合的に評価され、ある意味セレクションを経たものだけが3年目のフェローに進むことができる、シビアな世界である。
 
症例数については年間1,500件程度であり、過去には年間3,000件以上であったことを考えるとやや減少傾向にあると言わざるを得ない。しかし、ここアサンでは年間症例数が話題に上ることはまずない。数を稼ごうとすれば、Intermediateな病変を治療したり、複数枝病変を分けて治療したりすればよいが、そのような患者の利益を度外視した治療戦略は100%存在しえない。アサンはFFRによる治療適応決定で有名であるが、FFRに限らず、Thalium-SPECTなどのNon-invasive検査も可能な限り行われている。これらのFunctional Modalityに加え、患者のFunctional status, 症状、病変のPCI治療の適性などを総合的に判断して、患者にBestな治療が行われており、その結果として年間症例数が減少しているという事実があるだけであまり気にされていないようだ。年間症例数よりも、ScientificなOutput、要するに論文について話題に上らない日はない。。。
Seung-Jung Park先生がアサンメディカルセンターのHeart Center長であり、僕の直属のボスである。PRECOMBAT Study(NEJM)に代表されるLeft mainにおける世界的な権威であり、近年はFFRを大規模に導入し、この世界においても高名である。20年前からAngioplasty Summitを開催、現在はAsia Pacific地域におけるTCTとしてTCTAPの名を冠した国際学会も主催されており、来年で20周年を迎える。TCTAP以外にも、IPS (Imaging Physiology Summit)、TAVI Summitも開催しており、学会のCoordinatorとしての手腕も発揮されている。日々の業務はカテラボに隣接する居室の巨大モニターでカテラボ業務を監視?しつつ、手技もこなされ、午後は毎日初診20名を含む合計60-70人の外来患者を診療される。Doctorはもちろん、Nurse, Technicianに至るまで、Park先生に対して心からの敬意と畏れを抱いているようである。(通りがかれば思わず直立敬礼!)ただし、会食などでお酒の席となれば、話題のつきない楽しい方で、 非常に魅力的な方である。率直に言って、自分の人生で出会った中で、最大級に性急で、厳しく、強くありながら、好奇心があり、今なおハングリーな方である。そして、真の意味で教育的であり心の底は優しい方である。学会でお見かけした際にはぜひとも話しかけ、何か普段から疑問に感じていることなど、質問してみてください。間違いなく、喜んで対応してくださると思います。

s_yung
s_yung
尹 誠漢(Seoul, Korea)