やはり臨床ができないというのは寂しい事

どこで、だれと、なにをするつもりなのか。それとも留学先でポジションを得るべく進むのか。5年後の自分。
 
今後の自身の身の振り方については、大変難しい問題であると思います。もちろん自分自身情報を集め、いろいろ考えてみました。まずは、今の施設、もしくはフランスに残ってポジションを得るべく努力するかということです。これに関してはフランスで臨床医として働くことは困難なのではないかという結論に至りました。フランスの医師の制度は日本と少し異なり、医学部を卒業した後すぐに医師免許を取得できるわけではないようです。通常3年〜5年のいわゆるインターンを経て、医師免許を取得するようです。私はおそらくこのインターン期間の扱いになっているのではないかと推測しています。この辺は不正確な所もあるかもしれませんが、このように考えれば自分がフランスの免許なく臨床ができているということと辻褄が合うように思います。EU圏から来ている同じ立場のfellowの中には、フランスの免許を取っている人もいます。彼らの話によると、EU圏の人間であれば試験を受けるだけで免許が取れるので、フランス語ができればそう難しい事ではないとのことでした。ただ非EU圏の人間がこの試験をパスするのはとても困難だとのことでした。臨床医としてではなく、clinical researchでポジションを探すというのも一つの選択肢であると考えました。しかし、やはり臨床ができないというのは寂しい事であり、その道はないなと思いました。この時点で、フランスに残るという道はないという結論に至りました。
では日本に帰るとして、どこに帰るかということを考えなければなりません。まず考えたのは、こちらで特にTAVIに関してはかなりの症例を経験させて頂いているので、日本でTAVIの立ち上げができる施設に行くかということを考えました。いま日本ではTAVIを始めようとしている施設がいくつもあるのではないかと思います。ただやはり、施設数が多くなるとその分1施設の症例数が少なくなってしまいます。TAVIは本当にチームワークが大事で、症例数が少ないと術者の技術もさることながら、チームとしても成長できないという問題があります。例えば月1件の症例ペースでは、この治療は根付かないと思います。最低でも週1件のペースでチーム全体として症例を経験すべきではないかと思います。既にかなりの数のTAVI認定施設がある中で、これ以上増やす事が日本におけるTAVIの成績を向上させる上で望ましい事ではないのではないかとの考えに至りました。そこで、私としては既にTAVIを開始している施設で、こちらで得た事を還元するよう努力した方がいいのではないかとの結論に至りました。
5年後はまずTAVIに関しては、症例数は徐々に増えている状況であると思います。フランスでもそうですが、適応がどんどん拡大していくはずなので、症例数は増える傾向にあると思います。また、MitraClipは日本におけるclinical trialも終わって保険償還されている頃だと思いますので、MitraClipに関しても症例数が増えてくる時期ではないかと思います。また左心耳閉鎖デバイスについても、clinical trialが進んでいる頃ではないかと思います。日本におけるこの分野の進歩に少しでも貢献できるように働きたいと考えています。

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荒井 隆秀(Paris, France)