“とにかく海外で何か新しい治療を習得したい”というようなことは考えていた

①なぜ留学しようと思ったのか
2013年10月より、パリ郊外にあるInstitut Cardiovasculaire Paris Sud (ICPS)という施設のカテ室にfellowという立場で留学をしています。もともとこの施設は林田健太郎先生(現慶応大学)が日本人として初めて留学され、多くの功績を残されました。その後渡邉雄介先生(現帝京大学)が2人目として留学され、私が3人目の日本人として留学することとなりました。 もともと漠然と海外へ留学してみたいという希望はありましたが、具体的にどこに何をしにいくというビジョンは持ち合わせていませんでした。とにかく海外で何か新しい治療を習得したいというようなことは考えていたように思います。そんな中、一緒に慶応のカテ室で勤務していた私の先輩である林田先生がフランスに留学されることになりました。そして留学後もメール等でICPSの状況を教えて下さり、多くのcoronary interventionが経験できること、今後日本でも広がるであろうTranscatheter aortic valve implantation (TAVI)の症例も経験できることなどを知り、明確に自分もこの施設に行きたいと考えるようになりました。
②なぜ現在の留学先を選んだのか
ICPS(写真1)という施設はパリ郊外のMassyという所にあるcardiology、特にinterventionがメインの病院で、年間1万件ほどのCAGおよび2000件前後のPCIを施行しているhigh volume centerです。またcoronary interventionだけでなく、TAVI、MitraClip、LAA閉鎖術(写真2)といったstructural heart disease (SHD)に対するinterventionもさかんに行われております。特にaortic stenosis (AS) に対するTAVIに関しては、週5〜6件、年間200件以上の症例を施行しており、Edwards SapienXTやCoreValveといった第1世代でバイスだけでなく、Edwards Sapien3(写真3)やLotus valveといった第2世代デバイスも積極的に使用している施設です。
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写真1

私が留学する前、在籍していた慶応大学でも、重症ASに対するBalloon aortic valvuloplastyや心房中隔欠損症に対するAmplatzer septal occluderを用いた治療など、SHDに対するカテーテル治療が徐々に増えつつある時期でした。そしてこういったSHDに対する治療の有用性を実感することができ、今後日本においてもSHDに対するカテーテル治療を更に普及させて行く必要があると考えるようになりました。ICPSは前述のようにSHDに対するカテーテル治療を多く施行しており、私が考える理想的な施設と感じたため、この施設に留学しようと思いました。
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写真2

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写真3

③留学するにあたって困難であった点、どのように解決したか
留学するにあたって困難であった点としては、大きく2つあったように思います。まず一つは留学資金の問題だと思います。私の場合妻と息子、合わせて家族3人で渡仏する予定でしたので、それなりの資金が必要な状況でした。また留学先の施設からは給与がでないという契約でしたので、自分で資金を調達する必要がありました。これに関しては幸運にも日本循環器学会から奨学金を得ることができました。ただ、それだけでは生活していけませんので、留学を考え始めたときから地道に節約をし、当直パートなど研修医の頃にしていたようなパートをしたりして、地道に貯金を増やしました。
もう一つはビザの問題がありました。フランスの場合3ヶ月以上の滞在には長期滞在ビザが必要となりますが、近年フランスは外国人(特にEU圏外の外国人)に対するビザ発給が大変厳しくなっていました。更に私の場合病院から学生ビザを取得するようにとの指示があり、これが状況をさらに困難にしました。私の場合、病院との契約が訓練生という立場であったため学生ビザが必要とのことでした。しかし私の留学先の病院はいわゆるprivate hospitalであり大学病院などではないため、通常ですと学生ビザは発給されません。そのため私の場合にはパリの語学学校に入学するという形で学生ビザを取得しました。

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荒井 隆秀(Paris, France)