ハイインパクトだった1年間

ボン大学ハートセンター リサーチフェロー 田中徹

ta.chi.tsu.tetsu@gmail.com

SUNRISEのレポートもついに最終回となりました。3月末までの提出期限で、最後の方はかなり駆け足となってしまいました。最後のテーマは“留学生活:今年を終えて”です。

 

1. この1年間を振り返って

世界中の人々がそうだったとは思いますが、この2020年は僕の人生の中でもインパクトのある1年間だったのではないかと思います。今後の私の人生を語る上で、何度もこの”2020年”の話は出てくると思います。ほぼSelf-citationですが、私の”2020年”のインパクトファクターはNew England Journal of Medicine にも匹敵するかもしれません。

ちょうど去年の今頃に留学を開始する予定でしたが、COVID-19の流行による突然のEUの渡航禁止、そして留学延期になりました。そして、日本での勤務延長を経て、遅れること半年後にドイツに旅立ちました。その後、初めての海外生活、かつ久しぶりの一人暮らしを経て、今に至ります。出発前はCOVID-19が流行しているヨーロッパに行くなんて…と心配されることもありましたが、いざ来てしまえば台風の目にいるかのように特に健康トラブルもなく、やって来れました。また、ドイツでの生活もほとんどロックダウン下ではありましたが、特に大きな問題もなく過ごせています。仕事に関しては、予想通りのこともあれば、予想と違うことも多くありましたが、今の環境でできることを探して進めています。

このCOVID-19の流行の中、海外留学の意味は以前に増して問われる時代だと思います。わざわざリスクを冒して海外へ留学する意味があるのか、日本でも十分勉強できるのではないか、そういう声をしばしば耳にします。私の場合は以前から海外への憧れがあり、また、折角のチャンスでもあったこともあり、そういった声を聞こえないふりをして勢いで飛び出してきた感じになります。そして、今も道半ばであり、まだ大きなことを成し遂げたわけではないので、この海外留学が正解だったと胸を張って言うことは難しいです。一方で、日本にいればしなくてもいいような苦労と同じぐらい、日本では得られないような新しい経験を味わえていると思います。こうした苦労、経験を自分の糧として、活かしていけるように、引き続き頑張っていきます。

 

2.留学前のビジョンが留学してどう変わったか

研究活動などの仕事に対する考え方としては、まだそこまで大きな変化は感じていません。自分にできることや任されたことを確実にクリアしていきながら、自分のできることを増やし、仕事を集めていくというスタンスは日本でやっていたことと同じで、また、海外でも共通することだと思います。一方で、自分の生活や人生に対する考え方に関しては今回の留学は大きな変化をもたらしていると思います。

これまで医師として働き始めてからは初期研修・後期研修を含めた7年間の間、医師としての仕事に力を注ぎこみ、走り続けていた感じでした。夜遅くまで病院で働き、当直や緊急対応などで忙しい毎日を送っていて、それはそれで充実していましたが、目の前のことで精一杯で自分の将来のことなどをゆっくり考える機会も少なかったと思います。今回の留学で、そうした日本での臨床の仕事から一旦離れ、比較的自分の時間を持つことができました。また、海外の文化などにも触れ、改めて自分の生活や人生、将来について考えることも多くなりました。そういう意味でも、留学が貴重な機会になっていると思いますので、今後も自分の視野を広げていけるようにしたいと思います。

 

3.これから留学を考えている方へ

偉そうに言える立場ではないですが、留学をしようと心に決めている人が準備しておいた方がいいこととしては、言語の勉強、論文執筆がなにより大事だと思います。

言語は勉強してもしすぎることはありませんし、留学をしたからといって上手くなることもないので、勉強し続けるしかないと思っています。あとは、上手く聞き取れない・伝えられない場面は必ずあるのでそれに耐えうる強い心をもつことが大事だと思います。

論文に関しては、どういった施設に留学するかにもよりますが、日本で4-5本ぐらいの原著論文を書いておいた方がいいなと思います。テーマ自体はなんでもいいと思いますが、仮説をたてて、データベース作成、統計解析、論文執筆、ジャーナル投稿、リバイス作成、といった一通りの流れをある程度経験しておいた方が留学先での研究活動が楽になると思います。それらを外国語で学ぶのは骨が折れると思いますし、よほど優しい人じゃないとそういった基本的なことまでしっかり教えてくれないと思います。もちろん私もまだまだですが、臨床研究を行う上での過去の失敗が今に活きているなと実感します。試合でホームランを打ちたければ、素振りをして、ヒットを打っていないと大事な場面で打席にも立たせてもらえません。いきなりホームランを打つことはできません。

あとは循環器で海外留学するのであれば、SUNRISE YIAに参加することも欠かせないと思います。金銭的な面もそうですが、同時期に留学する先生方を始めとして多くの人と交流するきっかけになります。

もし留学などに関して迷っていたり、悩んでいることがある人がいらっしゃったら、お気軽にメールをお送りください。是非お手伝いさせていただければと思います。

 

4.来年度以降の抱負

来年度以降も継続してボン大学での生活を続ける予定です。引き続き臨床研究を続けながら、ドイツ語の勉強もしてドイツでの労働許可を取得できるよう精進します。新型コロナウイルスのせいで、まだ十分にドイツやヨーロッパを満喫できていないので、暖かくなったらヨーロッパ生活を存分に楽しみたいと思います。

SUNRISEのレポートとしても、課せられたReviewをまだ残しているので、そちらも早く仕上げようと思っています。引き続きお付き合いいただければと思います。

 

最後になりますが、留学を開始するにあたっても、留学を続けていくにあたっても多くの人に助けていただいていると思います。今後もそうした感謝の気持ちを忘れずに日々頑張っていきたいです。

また、第1回のレポートにも書きましたが、私は留学する前にSUNRISEの先輩方のレポートを読んで、海外留学への想いを募らせていました。COVID-19のため海外への留学がやや遠いものになってしまっている方もいらっしゃると思いますが、私のレポートが海外留学を少しでも身近に感じる助けになって、同じように留学へ踏み出す先生ができれば嬉しいです。

 

ありがとうございました。

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田中 徹(Bonn, Germany)