米国でResearch Fellowとして働くということ

留学して1年、環境にも慣れ、周囲の人たちも私に慣れてくれたのだと思います。私のいるラボは外国出身者が多く、常に異文化が混在する環境ですが、他人に対する尊敬・思いやりや、日々の努力というのはどの国の人にも共通する姿勢です。「循環器画像診断」という共通事項があることは、一般社会よりもなじみやすく守られた環境であるのかもしれません。
 
1. 給料について
年功序列はありません。米国の研究職における給料計算は非常にはっきりしています。どのプロジェクトに誰が何%貢献(時間的・内容的な貢献)をしているかで、そのプロジェクトから支払われる給料が決まります。新たなプロジェクトのためにBudgetを獲得するのは、自分自身の給料を確保することに繋がります。
2. ボスからの評価
当ラボの仕事はすべてチームワークで動いており、誰が何が得意で何が不得意なのか、上司達はよく把握しています。日本人は概して真面目で仕事が丁寧である、という印象を持っていただいているようですが、これは私以前に当ラボに留学された諸先輩方のおかげであると感謝しています。
仕事に意欲的であることは評価されますが、長時間労働は心配はされても評価はされません。仕事の切りの良いところまで仕上げたいなど、理由があって残業することはありますが、そもそも午後5時で仕事が終わるように皆が動いており、「残業が前提」という働き方はありません。仕事さえ進めば、在宅で働くことも問題なく受け入れられます。
3. ひどい言葉、くじけそうなシチュエーション、ずっといまの施設で働けるか?
先日ラボで面白いコメントを聞きました。そもそも同じ施設で同じように働き続けるということは、何かその人に問題があって転職できないのではないかと(米国では)疑われる可能性すらある、能力があれば転職・昇進を繰り返していくのがこの国の通常のあり方だ、ということです。終身雇用制度や年功序列とは異なるシステムをとる国ならではのコメントだと思います。
ひどい言葉やくじけそうなシチュエーションは、幸いにも致命的なものは経験していませんが、画像解析がうまくいかずにやり直しを決断した時はきつかったです。これは非常にがっかりします。ただしこれは画像の研究を行う上では経験しうるシチュエーションですし、日本であろうと米国であろうと同じことだったと思います。
米国ならでのきついシチュエーションは、英語に伴うものが多いです。言いたい事は山ほどあるのに、英語で言い始めると伝えきれないことは良くあります。留学当初よりは改善してきましたが、それでも不便を感じる事は多く、ラボのメンバーにはいつも助けられています。渡米当初は、3か月もすれば英語の問題は解決するだろうと楽観していたので、この状況は予想外でした。ただし、他の国出身者でも英語に苦労する姿を見ることもあり、「自分だけではないのだな」と思った次第です。英語が未熟であっても、相手が内容に興味を持っており、自分の話す内容が相手に有益であれば、真剣かつ辛抱強く聞いてもらえ、質疑応答が続いていくというのは最近経験した嬉しい体験でした。
ずっと今の施設でResearch Fellowとして働きつづけることは、この国の慣習からしてもないだろうと思いますが、少なくともあと一年はこちらで働くことになりました。大変ありがたいことだと思っています。「ずっと循環器MRI研究に従事するか?」という質問に対しては、「面白そうで理想的であり、現れたチャンス次第」だと思っています。

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加藤 陽子(Baltimore, USA)