MRIコアラボとは何か?

Johns Hopkins Universityの循環器画像診断ラボの仕事のひとつに、コアラボの仕事があります。コアラボは日本ではまだあまり一般的でない印象がありますが、海外のコアラボの仕事内容とはどんなものなのか、今回まとめてみたいと思います。
 
1. MRIコアラボの仕事
「コアラボ」という仕事があることをご存知でしょうか。多施設共同研究で用いられる各モダリティ(MRI/CT/心エコー/心臓カテーテル/IVUS/OCT/心筋シンチ/CPXなど)に関する一連の仕事を、専門施設が担当するシステムです。これらのデータをスタディグループとは異なるチームで担当し、ブラインド下に解析することで、解析データの客観性が保持されます。解析結果はスタディグループの論文報告時に使用されます。
私のいるJohns Hopkins Universityの画像診断ラボは、いままで様々なスタディでこのコアラボとして仕事をしてきました。例えばCTではCore64やCore320、エコーではCardia、MRIではMESAやCCTRN等でコアラボとして関与しています。私も現在、いくつかのスタディでMRIコアラボの一員として仕事をしています。
 
2. コアラボの仕事に入るもの
スタディによって変化はありますが、MRIコアラボの仕事は概ね以下のようになります(他のモダリティのコアラボも、基本的な部分は同様だと思います)。
1) MRI撮像プロトコール作成
2) 各スタディ参加施設のMRIや技師に関する情報収集、スタディ参加施設に適切かどうかの判定
3) 各MRI施設への指導、テストスキャン、画像の質に関するフィードバック(Quality Control)
4) 画像の安全な移送システムの提供、画像の保存
5) 適切な解析方法を用いた画像解析
6) スタディグループへの解析結果の報告
7) スタディグループの定例会議への参加・進歩状況の報告
コアラボの仕事は幅広く、単に撮像されてきた画像を解析するのみではないのが特徴です。一人で行う仕事ではなく、ラボの複数の人達がチームとして動きます。
MRIコアラボはスタディ参加施設と電話やメールでこまめに連絡を取りますが、施設の医師のみではなく、スタディコーディネーターやMRI撮像技師、MRI physicist (MRIの撮像プロトコール設定担当者)、IT担当者など、様々な役割の人達との連携が要求されます。仕事の進歩状況をオンラインミーティングや定期的なsteering committee meetingで報告することも、仕事の一環となります。送られてきた画像はただ解析するのみではなく、画像の質を確認してフィードバックすることで、スタディ中の画像の質を保つのも仕事のひとつです。
 
3. MRIコアラボの論文 (Method paper)
MRIコアラボは全体のスタディの結果を報告する立場にはありませんが、MRIコアラボならではの論文を作成します。Method paperといいますが、画像解析方法やスキャンシークエンスについてなど、画像分野に特化した論文になります。このような先行論文があるおかげで、自分たちのスタディの画像に最も適した解析方法を選択することができます。また画像解析方法というのは一朝一夕にできたものではなく、多くの試行錯誤の経緯があり、現時点においても、決して統一されたものではないということも実感されます。このMethod paperは比較的狭い領域の話ではありますが、自分の仕事に関連するものを読み込むと、その試行錯誤の過程や苦労が共感でき、大変味わい深い論文であったりもします。
 
4. MRIコアラボとして
Laser Atherectomy for STemi, Pci Analysis with Scintigraphy Study (LAST-PASS) という急性心筋梗塞に対するレーザー治療の効果を評価するための多施設共同研究が現在日本で進行中です。MRIはサブスタディとして行われる予定で、本スタディのコアラボをJHUが担当することになりました。MRI施設として予定されている10施設とともに、仕事をすすめているところです。
(LAST-PASS studyを紹介するJohns Hopkins のウェブサイトです。)
https://www.hopkinsmedicine.org/heart_vascular_institute/research/training_grant/lima_lab/index.html?l#super
 

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加藤 陽子(Baltimore, USA)