ステント内再狭窄 ②; Drug-eluting balloonによる治療効果について

Usefulness of Drug-Eluting Balloons for Bare-Metal and Drug-Eluting In-Stent Restenosis (from the RIBS IV and V Randomized Trials).
Am J Cardiol. 2017;119:983-990.
前回の続きで、RIBSトライアルシリーズのデータによるステント内狭窄に対する薬剤溶出性バルーン(DEB)の効果について検証した論文です。同バルーンについての治療成績に関してはすでにメタ解析 (Siontis GC et al. Lancet. 2015;386:655-64.) も含めいくつかの報告がなされており、これらの結果と同様、一定の効果は認められたものの、EESによる治療成績には及ばないという結果でした。RIBSトライアルではDEBとしてpaclitaxel-eluting ballonを採用しており、今回の検証においてpaclitaxel-DES-ISRに対する成績が特に不良であったことから、他剤を使用した場合に成績が改善する可能性はゼロではないと思います。が、(病変)BMS-ISR/(治療)EES、BMS-ISR/DEB、DES-ISR/EES、DES-ISR/DEBの4パターンのうち、DES-ISR/DEBは最も成績が不良であった組み合わせであり、二重ステントが問題になりにくい病変(分岐部病変でない、血管径が大きい等)や、再狭窄を起こした場合のリスクが大きい病変であれば、特にDES-ISRに対してはEESによる治療が考慮されるべきかもしれません。
[背景/方法]
Drug-eluting balloon (DEB)は主にステント内再狭窄に対する優れた治療法として知られている。DEBの治療効果はDESの効果と同等とされ、現行のESCガイドラインにおいてISRのDEB/DESによる治療はClass IAとされている。しかしながら、近年の報告では、DES-ISRの治療は特に困難であることが指摘されており、本研究においてはBMS-ISRとDES-ISRに対するDEBの治療効果の違いについて、RIBS-IVおよびRIBS-Vトライアルのデータを用いて検討が行われた。
スタディデザイン/対象: RIBS-V(BMS-ISR/ DEB: n=95, DES: n=94)およびRIBS-IV(DES-ISR/ DEB: n=154, DES: n=155)の2トライアルから、虚血の証明されたISR(%DS 50%以上)に対しDEBによって治療された249症例を対象に解析が行われた。血管径2 mm以下の患者、30 mmを超える長病変、完全閉塞病変は除外。DAPT禁忌、余命1年以内、Angioフォローアップが困難な患者も除外。
治療: 標的病変のステント拡張不良を認める場合には、NCバルーンによる高圧拡張を十分に行ったうえで、B/A比(balloon:artery ratio)が1.1/1となるようなDEB(SeQuent Please)によりNominal pressureにて拡張を行った。術後は、アスピリンの服用に加え、3ヶ月のクロピドグレル服用が推奨された。
フォローアップ: 両トライアルにおいて、術後6-9ヶ月にて造影フォローアップを行った。同時に、死亡(心臓死/非心臓死)、心筋梗塞、臨床的に必要な再血行再建、ステント血栓症等の臨床イベントが評価された。
[結果]
DES-ISR群では糖尿病患者の割合、ACS患者の割合がBMS-ISR群と比較して大きかった。
DES-ISR群では、より狭窄が強く、病変長が小さく、ステントエッジ狭窄が多かった。
造影によるフォローアップは92%で行われた。造影フォローアップの結果はDES-ISR群でより不良であった。DES-ISR群ではin-segment MLDが有意に小さく(BMS-ISR: 2.01 ± 0.6 mm vs. DES-ISR: 1.80 ± 0.6 mm, p=0.001)、またLate lossが大きい傾向にあった(0.14 ± 0.5 mm vs. 0.30 ± 0.6 mm, p=0.11)。多変量解析において、PCI後、フォローアップ時のMLD差の平均値はBMS-ISRで良好であった(adjusted absolute mean difference: 0.17 mm; 95% CI: 0.04 to 0.41; p=0.019)。第一世代、第二世代のISRの比較で有意差は認めなかったが、paclitaxel-DES-ISRとlimus-DES-ISRの比較では、paclitaxel-DES-ISRのMLDが有意に小さかった(1.58 ± 0.7 mm vs. 1.85 ± 0.6 mm, p=0.05)。
1年の臨床フォローアップの結果はすべての患者で得られた。臨床上必要と判断された再血行再建はDES-ISR群で有意に多く(6 cases (6%) vs. 25 cases (16%); p=0.03; HR: 0.37; 95%CI: 0.15 to 0.90)、患者背景調整後の解析においても結果は同様であった(p=0.02; adjusted HR: 0.37; 95%CI: 0.15 to 0.87)。全死亡、心臓死、心筋梗塞の発生率は両群において低く、有意差も認めなかった。
[結論]
ステント内再狭窄に対する薬剤溶出性バルーンの効果が確認された。長期の臨床/造影結果は、BMS-ISRと比べてDES-ISRで不良であった。
 
 

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藤野 明子(New York, USA)