住んでみて実感する、ニューヨーク・サバイバルのリアリティ

渡米し早くも4ヶ月がたち、こちらの生活にも大分慣れてきました。職場の同僚と少し突っ込んだ話をするようになり感じることは、ニューヨークがいかに極端な性格を持った街であるかということです。今回は、ニューヨークという街について、感じていることを書きたいと思います。
職場から徒歩5分のところに、9番街(9th Avenue)があります。通り沿いには多国籍レストランが所狭しと軒を連ねており、観光スポットにもなっています。このあたりはかつて治安が悪かったことから、Hell’s Kitchenと呼ばれていますが、現在は何の不安もなく安全に街を歩くことができます。このエリアは職場から近く、お手ごろなレストランやバーがたくさんあることから、同僚たちとよく遊びに出かけます。
9番街では、本当にたくさんの国の料理を楽しむことができます。伝統的なアメリカ料理はもちろんのこと、イタリア、フランス、スペイン、タイ、インド、中華、韓国料理等の馴染みのある料理から、行ったことのあるレストランだけでもドイツ、ギリシャ、メキシコ、ネパール、バングラディシュ、トルコ、セネガル、キューバ…など、日本ではあまり見かけないようなレストランが密集しています。
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ちょっと古めで低い建物に、小さなレストランがたくさん
 
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手前から、アフガン、インディアン、タイ、アイリッシュパブ…と、いろいろな国のレストランが所狭しと並んでいます
 
面白いのは、職場に目を向けると、ちゃんとこれらの国々出身の同僚がいる、ということです。9番街で新しい料理を体験しては、職場の同僚に「この間○○を食べてきたよ!」と報告して、いろいろな国の話を聞かせてもらうのは、なかなか楽しいものです。ニューヨークで働き始めてわかったことですが、同僚のうち生粋のアメリカ人は、50%程度です。あとの50%は、アメリカ以外の母国があり、それぞれの母国語があるうえで、さまざまな事情でアメリカに移り住み、英語を習得し、競争の激しいこのニューヨークで生き抜いているのです。この事実を知ると、日本で何の苦労もなく学校を出て、貯金でアメリカ生活を”一時体験”している自分の人生がどれだけ平凡で幸福なことか、痛感させられます。
こういった背景がわかってくると、ニューヨークの競争社会という一面がより強く意識されるようになりました。先日用事でワシントンDCに出かけた際、歩行者が赤信号できちんと止まっているのを見て、やはりニューヨークはちょっと異常だな、と感じました。ニューヨークでは、青信号は当然渡る、赤信号は注意して渡る、というのが暗黙のルールになっています。道行く人たちはみな我先にと足早に街を歩き、目的地へと急ぎます。
ニューヨークでは、お金さえ払えば、おいしいものが食べられて、すばらしい芸術に触れ、快適に生活することができます。コロンビア大学には優秀なドクターがたくさんいて、知的好奇心を大いに刺激されます。これらは競争の激しいニューヨークならではの長所だと思います。一方で、物価や家賃はばかばかしいほど高く、マンハッタンのどこを歩いていても、すべてのブロックにホームレスがいる現実には、心が痛みます。私自身はこの”サバイバルゲーム”に本当の意味で参加していないため、そのシビアさを十分にわかっていない可能性は多分にありますが、それでもこの街に暮らしていると、極端な競争社会の長所短所を強く実感します。同時に、日本のよいところとそうでないところも、以前より強く感じるようになりました。留学された先輩方から、外国に住むことで日本のことがよくわかる、とよく言われましたが、その意味を私なりに咀嚼しつつ、この騒々しい街での生活を楽しんでいます。

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藤野 明子(New York, USA)