COLORレジストリー研究: NIRS-IVUSによるCulprit lesionの検討

みなさんこんにちは、CRFの清家です。
 
前回第3回の論文レビューを投稿した時期には(2月初旬)、日本でCOVID-19が問題になっており、NYから見ると対岸の火事でした。NYでは3月22日にロックダウンが発表されました。
今、自宅での生活が2ヶ月以上続いています。
5月28日のNY 州からの発表では、NYC市民の20%がコロナウイルス抗体陽性だったようです。おおよそ5人に1人がいずれかの時点で感作されているというように理解せざるを得ません。サンライズレポーターの皆様を含め、留学されている先生方は大なり小なり研究が制限されている状況であると思います。幸い5月に入り、多くの人が屋外で活動出来るようになっており、家族はなんとか元気に過ごせています。
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今回は、
(1) Yamamoto MH, et al. 2-Year Outcomes After Stenting of Lipid-Rich and Nonrich Coronary Plaques. J Am Coll Cardiol. 2020;75:1371-1382.
をレビューさせていただきます。CRFの先輩の山本先生のお仕事で、NIRS-IVUSを用いたlipid-richプラークに関する論文です。
NIRSに関する原理に関しては、第1回下記リンクの記事で説明させていただきました。
https://sunrise-lab.net/blog/reviews/2019/4615/
(2) Waksman R, et al. Lancet. 2019;394:1629-1637. Identification of patients and plaques vulnerable to future coronary events with near-infrared spectroscopy intravascular ultrasound imaging: a prospective, cohort study.
この論文では、冠動脈疾患が疑われad-hoc PCIの可能性があるカテーテル検査を受けた1,563症例を対象に、NIRS-IVUSでnon-culprit病変が解析され、maxLCBI 400以上の症例では有意にイベントが多く(adjusted HR 3.39, p<0.001)、連続変数として解析しても、maxLCBIが大きくなるとイベントが多くなると報告されています。
現在までnon-culpritに関する報告は多くされていますが、culprit (ステント留置部位)に対する長期予後の検討はされていません。
今回の研究では、culprit (stenting site)に対する解析がされました。
 
【背景】
剖検研究では、Lipid richプラーク(LRP)にステントを留置することが有害な転帰と関連している可能性が示唆されている。
【目的】
本研究の目的は、NIRSで検出されたLRPと、薬剤溶出ステント(DES)治療を受けた冠動脈疾患患者の臨床転帰との関連を評価することであった。
【方法】
この前向き多施設登録では、CAGを施行されPCIを行う可能性がある患者を対象にNIRS-IVUSを行った。maxLCBI 4 mmは、任意の4 mm長のセグメント内の最大LCBIと定義した。MACEとして、心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症、または進行性狭心症または不安定狭心症のための計画外の再灌流または再入院が含まれた。イベントは、病変関連culprit-related (stenting site)、病変に非関連nonculprit-related (未治療)、または不確定indeterminateとして分類された。
【結果】
table2
Table 2. 平均年齢が63.9歳、糖尿病が39.4%の症例に合併していた。STEMIが1.9%, NSTEMIが10.3%, 不安定狭心症が51.6%、安定狭心症が36.1%であった。
 
table1 LRP1
Table 1, Figure 2
COLOR (Chemometric Observations of Lipid Core Plaques of Interest in Native Coronary Arteries Registry)に登録された1,999例のうち、PCIは1,621例で実施された。そのうちMACEは18.0%に発生した。NIRS-IVUS施行による合併症は9例(0.45%)に発生し、そのうち1例は病変周囲心筋梗塞、1例は緊急冠動脈バイパス術であった。
Culprit relatedではMACEが8.3%, 心臓死もしくは心筋梗塞が2.1%、進行性狭心症または不安定狭心症のための計画外の再灌流が6.9%に施行された。
table3
 
Table 3. 病変はLMが0.8%, LAD 42.3%に存在した。平均の%DSは58.3%であり、Stent留置率は94%, 第二世代ステントが78.9%, bare-metal ステントが6.0%に留置された。
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Table 4. maxLCBI 4 mmは全病変が332±237, Culprit lesion with eventsが366±273, without eventsが329±234であり、2群間に有意差は認めなかった(P=0.18)。さらに一般的なIVUSの指標、最小冠動脈面積、血管面積(vessel area)、プラークバーデンにおいても、2群間に有意な差は認めなかった。
 
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Figure 3. maxLCBI4mmを3群に分けて解析(0-196, 197-420, 421-1000)を行っても、MACEに優位は認めなかった。
 
LRP3
Figure 4. ROC解析においても、ともにAUC 0.5程度であり、culprit lesionにおけるLCBIの値はその後のイベントへの影響は少ないと考えられる。
 
【考察と私見】
結語として、現在のPCIのデバイスと技術があれば、NIRSによるプラークのlipidの評価は周術期、および2年予後に影響は与えないとまとめています。一方、non-culprit lesionにおいては前述のものも含め、4つ大規模研究(2-5)が報告されており、その病変及び患者の予後とmaxLCBI 4 mmにはすべての研究で相関が見られました。
比較的小さな母集団の研究(6-8)においては、culprit lesionでは周術期合併症とmaxLCBI 4 mmとの相関が報告されていますが、今回の研究は長期予後を検討した初めての報告になります。
第2世代のDESが使用されるようになり、culprit lesionでのイベントは減少してきています。シーリングエフェクトというような事も言われたこともありますが、今回の結果からは少なくとも有意狭窄病変におけるculprit lesionにおいて、その病変のlipidはシールされていると考えられます。
新たなデバイスが出れば、新たな知見が生まれます。今後も冠動脈領域においてもデバイスの進歩が期待されます。
 
1. Yamamoto MH, et al. 2-Year Outcomes After Stenting of Lipid-Rich and Nonrich Coronary Plaques. J Am Coll Cardiol. 2020;75:1371-1382
2. Waksman R, et al. Identification of patients and plaques vulnerable to future coronary events with near-infrared spectroscopy intravascular ultrasound imaging: a prospective, cohort study. Lancet 2019;394:1629–37.
3. Madder RD, et al. Large lipid-rich coronary plaques detected by nearinfrared spectroscopy at non-stented sites in the target artery identify patients likely to experience future major adverse cardiovascular events. Eur Heart J Cardiovasc Imaging 2016;17:
393–9.
4. Danek BA, et al. Long-term follow-up after near-infrared spectroscopy coronary imaging: Insights from the lipid cORe plaque association with CLinical events (ORACLE-NIRS) registry. Cardiovasc Revasc Med 2017;18:177–81.
5. Schuurman AS, et al. Near-infrared spectroscopy-derived lipid core burden index predicts adverse cardiovascular outcome in patients with coronary artery disease during long-term follow-up. Eur Heart J 2018;39: 295–302.
6. Stone GW, et al. Plaque characterization to inform the prediction and prevention of periprocedural myocardial infarction during percutaneous coronary intervention: the CANARY trial (Coronary Assessment by Near-infrared of Atherosclerotic Rupture-prone Yellow). J Am Coll Cardiol Intv 2015;8:927–36.
7. Goldstein JA, et al. Detection of lipid-core plaques by intracoronary near-infrared spectroscopy identifies high risk of periprocedural myocardial infarction. Circ Cardiovasc Interv 2011;4:429–37.
8. Brilakis ES, et al. Embolic protection device utilization during stenting of native coronary artery lesions with large lipid core plaques as detected by nearinfrared spectroscopy. Catheter Cardiovasc Interv 2012;80:1157–62.

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清家 史靖(New York, USA)