CRF (Cardiovascular Research Foundation), CUMC (Columbia University Medical Center)からの業績の報告をさせていただきます。
循環器の研究機関としては最大規模の施設ですので、もちろん多くの業績があります。最近話題になったCOAPT (Mitral Crip)もCRFからの報告ですが、今回は冠動脈疾患に関する論文に絞って紹介させていただきます。7月からの留学ですので、やっと投稿が他のReporterの方に追いつけました。
それではよろしくお願いいたします。
1. 留学先の業績
なんと言ってもやはりPROSPECT (1)ではないでしょうか。私もこれに関わる仕事がしたくて、CRFに留学させていただきました。
簡単にPROSPECT Studyを説明させていただきます。急性冠症候群の予後をIVUSにおける予測因子を検討した他施設前向き研究であり、2011年にNEJMに報告されました。私の知る限りIntracoronary imagingを主題にした論文で唯一NEJMにアクセプトされた論文だと思います。下の図を御覧ください。
循環器内科医であれば一度は目にしたであろうFigureです。この論文の中でMACE発症の予測因子はPlaque burden 70%以上、Thin cap fiboroatheroma, Minimum Lumen Area 4.0 mm2以下とされております。カテーテル治療におけるIVUSの役割に対して非常に大きなインパクトを与えました。
さらにILUMIEN II (2), ILUMIEN III (3)を報告し、ILUMIEN IV (4)が現在on-goingで行われています。IVUSのみでなく、OCTの研究でも最先端の研究成果を出し続けています。ILUMIEN IIIは2016年にLANCETに報告されており、OCT guide, IVUS guide, Angio guideにランダマイズされ、IVUS guideに対するOCT guideの非劣勢を示しました。ILUMIEN IV TrialはOCTとAngio Guide PCIを振り分け、OCT Guide PCIの有用性を検討する前向きランダマイズ研究で、目標症例数が3,650例となっています(4)。まだenrollをしている最中ですが、結果が大変楽しみなTrialです。
また、ADAPT-DES (5)、EXCEL試験(6)もCRFからの報告です。ADAPT-DES試験はPlatelet Activityに関する報告ですが、Sub studyでIVUSの有無によるMACEの差も注目されています。下の図のようにIVUSの使用によりHazard ratioが30%低下しています。
EXCEL試験は、XIENCE Stentを用い、SYNTAX score 32点以下のLMT病変をCABGとPCI治療にランダマイズされた研究で、2016年にNEJMに報告されています。1,905例が割付けされ、一時エンドポイントは死亡・心筋梗塞・脳卒中とし、PCIのCABGに対する非劣勢が示されました。SYNTAX scoreが低い症例のみとなっていますが、全世界のCoronary interventionistを勇気づけた研究であると思います。
さらに、世界一大きなカテーテルの学会TCTも主催しており、我々はFACTOIDと言われる会場運営に関る仕事もさせていただけます。
SUNRISE関係者の方々も多く参加されると思いますので、皆様と再開できることを楽しみにしております。
2. 本領域でのトレンド
まず、現在のIVUS/OCTの大きな流れを説明させていただきたいと思います。
日本ではIVUS or OCTがほとんどの症例で使用されておりますが、2016年のデータで米国13%、ヨーロッパ9%程度とされております。保険で認められない地域が多いことが、使用率の上がらない一番の原因かもしれません。同時期の日本ではおよそ93%がIVUS/OCT guideでのPCIになっていると言われております。
京都大学の渡部先生より報告されたSTOPDAPT2 (7)は皆さん御存知の通り、DAPT 1ヶ月の有用性・安全性を示された報告であると思いますが、IVUSの使用率が97-98%と非常に高く、Definite/Probable のステント血栓性が0.3%以下と、IVUS Guide PCIの有効性が再度注目されていると思います。
特に近年では、Fast pullback IVUS、HD-IVUS (60MHz)も使用可能になってきており、CUMCでもFast pullback IVUSが頻用されております。ただし、日本と違いTERUMO-IVUSが使用できませんので、こちらではACISTのIVUSが使用されております。海外の先生に聞くと、IVUSのpullbackを待つことが耐えられないらしく、fast pullbackの普及が待ち望まれます。
OCTの研究に関しては、CRFのGregg Stone先生がStudy Chairを務めるILUMIEN 4が現在進行中であり、その結果が待ち望まれます(4)。和歌山医科大学の久保先生がPIをされているCOCOA (8)もOCTに対する多施設前向きランダム化試験であり、本邦からのデータを見させていただくことも楽しみにしております。
OCTに関しては、もともと血管と内腔のコントラストの差(及びステント)が大きいため、自動トレース・自動評価機能にすぐれており、その強みを生かしたソフトが作成されており、それらを生かした戦略・治療が今後期待されます。ILUMIEN 4に関しても、その強みを生かしたStudy protocolになっていると思います。
Intravasucular imaging-derived FFRも注目されてきていると感じております。私自身が作成したOCT-FFR (9), IVUS-FFR (10)以外にも、報告されているものが6つほどあります。冠動脈狭窄の重症度の定量評価の進歩が期待されてきております。
私の論文を引用していただいている大変、嬉しい論文(Editorial comment)を紹介させていただきます。岐阜ハートセンターの川瀬先生より教えていただきました。Imaging/Physiology界の大御所のMorton J Kern先生からのコメントです。
“In contrast, a recent Japanese study using IVUS morphology to estimate FFR using basic fluid dynamic principles (traditional frictional and separation coefficients) rather than 3D reconstruction, achieved a similar performance to this study (r = 0.78 with IVUS, r = 0.89 with OCT), without the need for super computers or prolonged computing time.”
と我々の方法を、スーパーコンピューターの必要がなく、計算の速い、と取り上げていただいております。
また、Intracoronary imaging-derived FFR全般に関して、”IVUS-FFR has the potential to be a game changer providing both anatomic as well as physiologic lesion significance.”と、これらの方法がゲームチェンジャーになりうる可能性があると評価していただき、”An application that would be an interventionalist’s dream come true.”と、夢を叶える方法になる可能性があると評し論文が締めくくられております。日本の医師が感じているIVUS/OCTのさらなる可能性をこのまま追い求めて行こうと思います。
夢をあきらめないで、お金に執着しないで。やりたいことが順調になれば、お金はついてくるもの。
-Hayati Banastey-
通帳からお金が減っていく日々ですが、妻と自分にこう言い聞かせて、生きています。
清家 史靖
参考文献
(1) N Engl J Med. 2011 20;364(3):226-35.
(2) JACC Cardiovasc Interv. 2015 8(13):1704-14
(3) Lancet. 2016 26;388(10060):2618-2628
(4) https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03507777?term=ILUMIEN&rank=3
(5) Lancet. 2013 17;382(9892):614-23
(6) N Engl J Med. 2016 8;375(23):2223-2235
(7) JAMA. 2019 25;321(24):2414-2427.
(8) https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03176810?cntry=JP&city=wakayama&rank=2
(9) Am J Cardiol. 2017 15;120(10):1772-1779.
(10) Circ J. 2018 23;82(3):815-823.
(11) Catheter Cardiovasc Interv. 2019 1;93(2):275-277