初めまして、2019年4月よりオランダのLeiden University Medical Center (LUMC)に留学している平澤憲祐と申します。2019-2020年度SUNRISE lab.のwebレポーター業務をさせていただきます。少しでも皆様のお役に立てるレポートを作成できるよう、精一杯務めさせていただきます。
写真: Leiden University Medical Center
第一回目のレポートのテーマは”留学の動機および留学までの道のり”ということでこれまでの自身の歩みを見直してみるいい機会になりました。
どうして留学 ?
現在私は卒後11年目になりますが留学をはっきりと決意したのは2017年(卒後9年目)の9月頃でした。
私は卒後5年目から東京医科歯科大学で勤務しており、もともと弁膜症に興味がありましたがPCIをやってみたり心不全診療してみたりアブレーションに顔を出してみたりと優柔不断な性格を表したかのような生活をしていました。徐々にできることが増えてくる反面、自分の施設ではできないことが多いことにも気がつくようになります。私の施設では画像診断、SHDの分野が弱く、これからの発展のことを考えそれらの分野に興味を持つようになりました。
7年目から聖マリアンナ医科大学の出雲昌樹先生を紹介いただき、週一回心臓超音波検査とStructure Heart Diseaseについて学び始め、研究もさせていただくようになりました。それまで医局の中でしか学んでこなかった自分にとって、出雲先生との出会いは大きなturning pointであったと思います。
それから4年近く聖マリアンナ医科大学で研究をさせていただくことになりますが、何かしらの結果を出せるように努力しました。海外学会での発表や論文の作成など、多くのことを学ばせていただきました。
写真: 心エコー図学会にて出雲先生と。
しかし何年かを過ごすうちに日本では難しいことは何なのかが分かってくるようになりました。特にSHD分野におけるデバイスラグの問題は大きく、研究を行う上でどうしても海外よりデータは遅れてしまうことになります。
また、エコーの研究をしているとどうしてもエコーの限界を知ることになり、CTやMRIなど、多くのmodalityによる評価が必要であることを実感します。これらを統合したMultimodality imagingに関して興味を持ちましたが、やはり日本の慣習や分野の壁などの困難にぶつかりました。
しかし逆に考えれば日本で誰もできていない分野があるということです。今誰もやってないことで海外留学ができればその分野でのパイオニアになれるのではないかと考え、留学を決意しました。
ロールモデルは?
私の今までの医師人生においてメンターと呼べる方は数多くいらっしゃいます。前述の出雲先生もその一人です。ただ、ロールモデルは作らないように意識しています。モデルを決めてしまうとその枠にとらわれてしまう気がするからです。色々な先生の良いところを吸収した上で新たな自分らしさや特徴を持った医師になりたい、と日々考えています。
どこに留学?
私が施設を選ぶ際に重視したのは以下の2点+αでした。
1. そもそもその国に行けるのかどうか
2. 自身のしたいことができる(できそう)かどうか
+α 英語が通じるところ
1点目に関しては留学のためのビザが取れるのかどうか、実際にそこで生活ができそうかどうかということです。ちょうど留学先を選んでいた時期はISによるテロがあったり、米国がトランプ政権になったりとどことなく世界情勢が不安に満ちた時期であったため、突然ビザがおりなくなったりするのではないかという懸念がありました。また、私費留学となるためアメリカへの留学は難しいのではないかと考えておりました。2点目については色々な施設に留学されていた先生方にひたすら話を聞き、各施設の状況やできることについて調べました。結果としてヨーロッパの方がデバイスの面や研究の面で自由度が大きい印象を受けました。
+αは妻の希望ですが、自分としても英語も満足に話せない上に他の言語を学ぶのはかなり負担であることを考えるとできれば英語が通じる国がいいなあと思いました。
ヨーロッパで英語が通じる→イギリス、スイス、オランダかな?
イギリスはビザを取るのが難しそう、スイスは物価が高すぎて暮らしていけないと考えるとオランダはベストでした。そんな中、LUMCは世界的にもmultimodality imagingで有名な施設であったため同施設に留学したいと思いました。
どうやって留学?
さて留学したい先が見つかったのは良いものの、どうやって留学先にコンタクトを取るのがいいのか?これに関しては10人いれば10通りの方法があると思います。私の場合留学希望先が決まっていたので、直接その施設に連絡を取ってみるという方法もありましたが、やはり誰かに紹介してもらった方がいいかな?と考え知り合いのつてをたどり、結果的に以前LUMCの不整脈部門に留学されていた成瀬 代士久先生よりsupervisorであるV.Delgado先生を紹介してもらいコンタクトを取りました。結果、CVを送っただけでどこの馬の骨ともわからない私の留学希望を快諾していただきました。
これらの流れは非常に早く、最初にコンタクトをとってから5日程度でLUMCに留学することが決定しました。やはり自分から動くことが自分のキャリアを形成する上で大事なのだなということを実感した数日間でした。
オランダは留学しやすい国!
留学における問題の一つはビザの取得などの書類手続きです。しかしオランダは欧州で最も留学しやすい国の一つなのではないかと思います。
理由は以下の通りです。
1. 貯金があればとりあえず大丈夫
オランダは収入がなくても、貯金が基準以上あればビザがおります。単身で行くか家族を伴って行くかによって金額は変わるようですが、私の場合家族3人で€1595/月以上の貯金(もしくは収入など)があればOKと言われました。
2. 英語が通じる
オランダの人はほとんど英語が通じます。むしろアメリカ人よりもゆっくり丁寧に話してくれるのですごくありがたいです。メールでのやりとりなども全て英語でできるので手続きの際にはすごく楽でした。
3. 施設がやってくれる
オランダは移民局への申請は雇用者が行うことになっているようで、施設側に要求された書類(パスポートのコピー、英訳付きの戸籍謄本、日本の大学の卒業証明書/成績証明書、銀行残高証明書、あれば収入証明)を日本で用意してPDFで送信すれば手続きはやってもらえます。現地に行ってから本登録に出向く必要はありますが、他の国に留学された人と比べると手続き面は非常に楽だったと思います。
いちばんの問題はやっぱりお金→SUNRISE YIAがある!
さて、やはり留学においてもっとも重要かつ根本的な問題は資金ではないでしょうか。留学先で給料をもらうのは特にヨーロッパでは難しいことが多く、留学生を悩ませています。
SUNRISE lab. YIAはその点誰にでもチャンスがある!ということで私も申し込むことを決めました。
ただ、発表については今まで自分がしたことがない発表であったため、頭を悩ませました。英語での発表もさることながら、いわゆる研究発表に慣れてしまっている自分にとってはなかなか難しい作業でした。
失敗したとしても何か後に残るものがあればとひとまず全力で努力してみることを決心し、色々な先生方にご意見を伺い、発表を聞いてもらいました。当初は聞くに耐えない内容であったと思いますが、この作業で少しずつ改善されたと思います。人生で初めて英会話にも通いました。そして10分間の発表をスライドなしでもできるくらい、ひたすら発表の練習を繰り返し行いました。結果として賞をいただくことができ、大変光栄に思っています。
最後に
人生には色々な選択が付いて回りますが、その時、その場所において自分のベストを尽くそうと努力することが大切なのだと改めて感じました。もちろん運や自分にどうしようもないことという事柄は数多く存在します。しかし、目の前にある自身で変えられることに関しては全力を尽くすことが(たとえ失敗したとしても) 将来的に自分の力になると思います。偉そうに言えるほど自分でも実践できていませんが。