医学教育の問題点は、そもそもの日本の学校教育の問題点と共通点が多いと考えるため、今回は日本の学校教育の問題点をお話しします。 まず、私が受けた小学校からの日本の学校教育を紹介しますので、みんなで問題点を探してみましょう。
① 小学校1年生から、放課後に公文で算数を学ぶ。同時に、母親の勧めで、週1回のバイオリン教室とスイミングスクールに通う。
② 小学校4年生から、放課後に中学受験のため、塾に週3回通う。
③ 私立の中高一貫校へ入学し、放課後の部活動のバスケットボールに熱中する。
④ 高校3年の夏までバスケットボールを続け、高校3年の秋より医学部受験のための勉強を開始。
⑤ 高校3年までの学力の蓄えがなかったこと、かつ、そこまで頭がよくなかったために、2浪したが、なんとか私立の医学部に入学。
⑥ 医学部入学後、バスケットボール部に入り部活に熱中。
⑦ 医学部の期末テストは、直前のテスト勉強だけ頑張って、大学6年まで進級。
⑧ バスケットボール部を大学6年の夏まで続け、国家試験の勉強は、残りの半年で知識を詰め込んで、なんとか医師国家試験を合格。
私の受けた学校教育に対して、問題点を指摘しないほうが難しいと感じませんか? この経歴からわかるように、私の学力・芸術力・スポーツに関して、小学校から大学にいたるまで、日本の学校教育はほとんど影響を与えていません。学力は、公文と塾と試験前の徹夜での自宅学習。芸術は、母親に勧められたバイオリン。スポーツは、放課後の部活動(決して、学校教育の中に含まれる体育の授業ではない)。
ここで、ひとつ質問です。子供の脳や体が一番活性化している時間帯はいつですか? 朝?昼?夜?
私は、脳科学者ではないので詳しくはわかりませんが、おそらく夜ではないと思います。少なくとも、太陽が出ている時間帯ではないでしょうか。子供が1番新しいことを身につけるのに適した貴重な時間帯に私は学校教育を受けましたが、そこから得たものはほとんどありません。そろそろ眠くなるであろう夕方から夜の時間帯に、私は、生きるために、また人生を豊かにするために必要な知識を身につけ・経験をしたといっても過言ではありません。
ここで話を漫画スラムダンクの湘北高校の教育に移します。(漫画スラムダンクとは、湘北高校の不良少年桜木花道が、バスケットボールを始め、個性あふれる仲間たち・ライバルに囲まれ、ついにはバスケットボールの全国大会に出場し、優勝候補の山王高校を2回戦で破るという、物語です。我々の世代で知らない人はいないくらい感動的な漫画です。)
この漫画の学校での授業のシーンですが、スタメンの桜木、流川、三井、宮城は授業中、常に寝ています。効率が悪いと思いませんか? だったら、日中にバスケして、夜しっかり寝とけば、全国制覇できたのではないでしょうか。結局、4人とも期末テストで赤点で、インターハイ前に徹夜で追試のための補講を赤木と小暮にしてもらってるわけで。この場合、湘北高校の授業は、赤木と小暮の補講以下という結論になります。
次に、湘北高校の教育から私の家族の教育に話を移します。私には、2人のstep daughter*がいます(*step daughterとは、my wifeのex-husbandとのdaughterという意味です)。2人とも小学校からヨーロッパで教育を受けており、現在はEnglandの中学校・小学校に通ってます。2人とも放課後の塾や習い事は一切していません。なぜなら、学校の授業にすべてが集約されているからです。学校の授業中に、必要な学力を身につけ、芸術に関しては、本人のやりたい芸術科目を選択し、それに集中した授業が展開されます。中学に通っている長女は、日本語・英語に加え、フランス語も話せます。毎日の学校生活は楽しくて仕方がないみたいです。長女は、将来、医師と作家になりたいみたいですが、そのための学力も十分あるようです。現在の日本の学校教育がどれくらい変化したかはわかりませんが、いまでも放課後にせっせと塾に通う日本の子供たちがいるのを見ると、おそらく、20年前と比較して、大した学校教育の変化はないと私は感じています。
日本の学校教育に必要なことは、授業時間内に、必要なことを、教育のspecialistがしっかり教える。けっして、放課後の塾や習い事にまかせない。
まずはここからだと考えます。授業の形態はどうするかなど、まだまだ議論することは山のようにありますが、学校で教育を完結することが第一歩ではないかと私は考えます。私には、2人のstep daughterに加え、2歳の息子と7カ月の娘がいます。この2人にどのような教育を受けさせるかを決めるのは、親として、最も重要な決断だと考えております。
日本の医学教育を考える以前に、日本の学校教育を変える必要があると私は考えます。