ガラス張りの広大な施設を目の前にしてテンションが上がる

<紹介、といえるほど慣れていませんが>
 無事に7月1日からクリーブランドクリニック(CCF)で正式に採用されました黒田です。表題のようにミーハーそのものの感想を抱いたわけですが、予想より長めのオリエンテーション(全部署のクリニカルフェローと一緒にオリエンテーションを受けるため大勢いる中での講義や説明など)、倫理講習のビデオを見たり、webレクチャーを受けて解答する講義まであり、1週間はひたすらセットアップに費やしました。実際には7月10日ごろから本格的に始動し始めており未だに院内で迷うこともあるという、そんな状況です。
半扇形型のJビルディングは循環器メインのおしゃれな建物。

半扇形型のJビルディングは循環器メインのおしゃれな建物。 内部は非常に複雑な構造をしており、今のところよく迷う。

 写真でご覧いただくのは、私の活動拠点となるJビルディングですが、循環器疾患を中心とした部門から成り立っており、写真の通りエントランスに設けられている噴水を取り囲むような半扇型構造をしています。内装も非常に清潔に整えられており、このあたりはブランディングにも力を入れていることを感じさせます。
外科や救急科とは別棟となる循環器のみでも日本でいう中大規模病院程度の建物となっており、さらにクリーブランド内や近郊にはいくつもの関連施設もあることから、医療圏はとてつもなく広大です。ちなみに、電子カルテは離れた関連施設でも共有されているので、情報共有という点やクリーブランド近郊の患者を高確率でフォローできるという点でもメリットが大きいと思います。
広大なCCFの敷地:お隣はケースウエスタン大学。パーキングから歩くと広さを実感する。

広大なCCFの敷地: お隣はケースウエスタン大学。パーキングから歩くと広さを実感する。

なお、グーグルマップに示されているのが敷地の概要です。ケースウェスタン大学の隣に位置しているのがCCFで、メインキャンパスは敷地内中心に位置しており、多くの場合、研究者の駐車場は敷地の端に割り当てられます。駐車場から職場まで、歩いて10分程度を要しますが、建物間はトンネルや橋などでつながれているところが多く、極寒の冬でもほとんど外に出ずに出勤はできるようで、多少ほっとしました。
 さて、循環器の不整脈部門としては、平日は5-9室のカテ室が稼働しています(リード抜去のオペ室含む)。贅沢使いで、それぞれにナースが2-3人ずつついており、さらには麻酔管理用のスタッフもついていますから、術者は処置に集中できます。このあたりは分業制が進んでいて、うらやましいところではありますね。1週間観察していた感じでは、頻脈性不整脈の8割方はやはりAFであり、日本とそれほど変わらない治療風景が広がっています。一方で、比較的毎日に近いレベルでCRTやリード抜去などが行われています。恐るべきリード抜去件数。。手技の内容など日本との違いなども実感できればいいのですが、まだそれほど多くの治療を見ていませんので、このあたりの違いについても追々報告できればと思います。
<国際色豊かなスタッフ>
 スタッフやクリニカルフェローの国際色豊かで、レバノン、シリア、オーストラリア、スウェーデン、インド、日本(私以外のEPクリニカルフェロー)などの混成部隊であり、アメリカという国が、社会で習った「人種のるつぼ」である事を実感させられます。不整脈部門のチーフであるWazni先生が私のボスになりますが、彼はレバノン出身です。その下のスタッフが20人余り(不整脈だけです)で、さらにその下に10人程度のEPクリニカルフェローがいます。さらには、ボスのWazni先生は、CCFの不整脈部門を今後は拡張し、研究もさらに増やしていきたいという思惑があるらしく、そのためのリクルート活動などに積極的に取り組んでおり、実際に近々スタッフが加わることになるという「噂」です。
 こちらでは、臨床・基礎研究に関して、スタッフがPIとなり、EPクリニカルフェローのさらに前段階に当たる一般循環器のクリニカルフェローと共同で行い教育をしていくことが多い一方で、EPクリニカルフェローの多くが臨床のみに力を注いでいます。研究をある程度一般循環器で試して、興味がそそられる分野に対して臨床医として専門性を高めていくというスタイルは、日本とは大きく異なります。
 オフィスが一緒となるクリニカルフェローたちは、研究を一緒にすることこそ多くはなさそうですが皆とても気さくです。彼らは、通常AM7:15からその日の担当症例に関するブリーフィングがあり、AM7:30からはEP講義や症例検討、リサーチカンファなどを行っています。私自身は、7:30からEP講義などに参加していますが、リサーチフェローという立場では、どうしても臨床を肌で感じることはできないため、彼らの意見なども聞きながらやっていきたいと思っています。
 現在、私自身はスタッフの一人であるHussein先生との研究を進めています。スタッフは日中の間、外来やカテーテル検査に入っているので、合間を縫って相談に行きます。なお前回の投稿でも書きましたが、CCFのこの部門でリサーチフェローを雇うのが久しぶりとあって、研究の人手はあまり足りていないようでした。慣れてきたら、他のスタッフとも仕事ができればと思っていますが、まずは与えられた仕事を着実に遂行するように努力しています。
 月に一度リサーチカンファがあり、つい先日がその日でした。現在進行中の当院の研究の総括を聞いたところ、単施設の研究が多く、他施設とのコラボより、CCF内の循環器の他の部門(エコーや集中治療)と共同で進める研究が多いようです。他施設共同研究もありますが、特定の施設と偏っているわけでは無さそうで、PIとなるスタッフの人脈によって左右されています。不整脈と一言にいえど、アブレーション、左心耳閉鎖、デバイスなど、スタッフや基礎など、それぞれの得意分野があり、スタッフによって、「誰」「どの施設」とコラボするかは人によりまちまちのようです。
リサーチカンファ(月1回):現在進行中のリサーチの総ざらいと、新たな研究のプレゼンを行う。

リサーチカンファ(月1回): 現在進行中のリサーチの総ざらいと、新たな研究のプレゼンを行う。

<休日オフィスに向かうのはアジア人だけ?>
クリーブランドでは、6月前後が非常にさわやかな良い季節で、そんな季節の休日は家族でBBQなどをして過ごすことが多いようです。確かに湿度も低く、芝生が多いこともあって、気持ちがいいです。逆に冬は極寒で、外出が困難になるほどのようですので、日が出ている季節は外で過ごすのが文化なんだろうと感じます。ちょっと時間はかかりますが、車を走らせればナイアガラにも行けるようなので、こちらに来た日本人は、ほぼ必ずナイアガラ観光にいくことになります。私は単身で渡米していますが、今度行ってみる予定です。
アメリカでは一般的なのかもしれませんが、クリニカルフェローでも、自分の仕事が終わっていれば17時に帰宅していますし、分業制になっており休日は休日として過ごすようです。私も土日がオフとなり、日本とは全く異なる環境にやや戸惑っていますが、聞いたところによると、やはり日本人のリサーチフェローの中には、休日にオフィスで仕事をする研究者もいるようです。仕事が忙しくなれば、今後そうなるかもしれません。
近くのショッピングモールでは、休日にライブを開催。芝生に自前の椅子を持ち寄って鑑賞するのがスタイルのようだ。

近くのショッピングモールでは、休日にライブを開催。芝生に自前の椅子を持ち寄って鑑賞するのがスタイルのようだ。

<おまけ>
言葉の壁とITの恵み:
予想通り(ではダメなのですが)、自分の英語力では全く通用しませんでした。スピードが速いと聞き取りが難しく、毎日苦労しています。「うざいと思われても根気強く確認する」という戦術は徐々に板についてきましたが、当然聞き返さなくても理解してレスポンスできるようになるのが望ましいですね。こればかりは日々努力するのみです。
先日、そんな私に神様(のようなIT企業)が「Otter」というアプリを与えて下さいました。録音しつつ、AIが自動でtranscriptを作成してくれるという優れものです。どの程度の精度なのかはこれからのお楽しみですが、勉強の補助にはなりそうです。
テクノロジーの進歩に感謝しつつ、今日も米国産ステーキ肉をいただくことにします。
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黒田 俊介(Ohio, USA)